法律Q&A

分類:

会社の倒産と社長の個人責任

弁護士 菊地 健治
2000年10月:掲載
2008年11月:補正

会社が倒産した場合、社長である私は会社の負債についてもすべての責任を負うことになるのですか。

 いわゆるバブル経済の崩壊のあおりを受けて倒産の憂き目にあいました。しかし、私はまだ若いので必ず再起しようと思っています。そのために、破産という裁判上の手続をとらず、裁判外の任意整理をとって、私財を全部投げ出して負債を整理してもらおうと思っています。
 ところで私は、会社が倒産することが確実になった後も、積極的に取引を行っており、その取引先から個人的な責任を追求されています。この場合、私は、どの範囲まで責任を負わなければならないのですか。

会社法上の責任を負う場合があります。

1.
 会社の取引先のような会社の債権者が、会社との取引などで損害を被ったため、損害賠償を請求する場合には、これらの債権者が請求できるのはあくまで取引相手である会社であって、その代表者が個人的に責任を負うことはないのが原則です。
 つまり、会社という「法人」と代表者という「個人」はあくまで別の存在であって、代表者にとっては「他人」である会社の債務について責任を負ういわれはないからです。
2.
 しかし、日本における会社は、会社といっても代表者個人の経営するいわゆるワンマン企業であることがほとんどです。このようなワンマン企業では、会社の負債が生じたのは、正に代表者の放漫経営から生じたものといってよい場合が多いかと思います。そのような場合まで、代表者が会社とは別であるといって責任を逃れるのは妥当ではない、といえます。
3.
 会社法429条は、取締役がその職務を行うにつき悪意または重大な過失あったときには損害を賠償する責任を負うという、取締役が第三者に損害を与えた場合の損害賠償責任を規定しています。
 この取締役の責任については、旧商法下(266条の3)でも争いがありましたが、判例は、同条の責任はおよそ取締役の任務懈怠行為と損害との間に相当因果関係が認められる損害について取締役の責任を認めて、不法行為とは別個に債権者の保護のために認められる取締役の責任であると判示しています(最判昭和44年11月26日民集23巻11号2150頁)。
4.
 判例では、会社の倒産が避けられず履行の見込みがないのにもかかわらず取引を締結した事例(東京高判昭43.11.8.判時547.77)、経営難のために工事完成の見込みがないのに請負契約を結んで前渡し金を受け、工事を完成させなかった事例(大阪地判昭57.3.29.判タ469.251)、会社の資産状態からみて、満期日に支払える見込みのない約束手形を振り出した事例(最判昭34.7.24.民集13.8.1156、最判昭51.6.3.金融法務801.29)等で取締役に責任を認め、相手方の被った損害賠償を命じたものがあります。
5.
この取締役の第三者に対する責任の時効について通常の不法行為責任は3年で時効にかかるのですが、判例は先に述べたように不法行為責任に取締役としての特別の責任を加重したものということから、通常の民事の債権と同様の10年と解しています(最判昭和49年12月17日民集28巻10号2059頁)。

対応策

1.
 会社の取引先などの会社債権者は、会社法429条にいう「第三者」にあたりますので、取締役であるあなたに損害賠償請求を起こすことが出来ます。

2.
 そこで、あなたに対する会社法429条の損害賠償責任が認められるかどうかですが、それはあなたに「職務を行うについて悪意又は重大な過失」があったかどうかが問題となります。
 先程紹介した判例などを見ますと、あなたは会社の倒産が確実になった段階でも契約を締結していたということですから、履行の見込みのない契約を締結した事例にあたるといえますので、判例からすると取引先の被った損害を賠償する責任を負わされることになります。

予防策

1.
 このように、会社の取引先は、会社の代表者に責任追求できる場合があるわけですが、このような責任が確定するには訴訟を提起する必要があります。また訴訟も確実に勝訴できるかどうかは、証拠の問題もあります。

2.
 代表者の責任を明確にするには、事前に取引を開始するときに、基本契約書に代表者等の個人の連帯保証をもらっておくのが一番簡単で効果も大きいといえますので、取引開始のときに注意することが肝心です。

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