法律Q&A

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取引先の破産と債権回収(その1)

弁護士 菊地 健治
2000年10月:掲載
2008年11月:補正

破産の申立があった場合の債権回収の方法は?

当社の取引先のY社が手形の不渡りを出し、裁判所に対して破産の申立をしたとのことですが、まだ、破産手続開始の決定がなされていないようです。当社はY社に1000万円位の債権を持っております。当社としては、破産手続以外に独自に債権を回収できなくなるのですか。また、Y社が資産を隠していることが判明した場合、どのように対処したらよいですか。

担保があれば独自に回収を図ることができ、隠し財産が判明した場合には刑事告訴もできます。

1.
 破産、民事再生、会社更生等の倒産手続が開始されても、その手続とは関係なく債権者が権利行使して債権回収を図ることができる場合があります。担保権の実行(別除権)、相殺権、そして所有権に基づく物件の引き上げ(取戻権)が代表的なものです。
 破産及び民事再生においては、これらの権利行使が認められていますが、会社更生においては、債権者の債権回収よりも債務者の再建の方に力点が置かれるため、担保権の実行はできなくなります。
 会社法上の倒産手続(特別清算)では、個別の強制執行が停止されるなどの制限を受けることがあります(会社法512条)。
2.
 計画倒産の場合には、会社の代表者が会社資産を別の場所に隠匿したり、不動産の名義を別人名義に変更するなどして会社財産を減少させてから破産の申立をするということがあります。
 このような財産を不当に減少させる行為は、破産管財人が就任すれば、減少前の状態に戻して、債権者の配当のために処分することができます。この管財人が財産の減少行為を元に戻すことができる権利を否認権といいます。
また、破産手続開始の決定の前後にこのような資産を隠匿、減少させて債権者を害した者には、刑事上詐欺破産罪として10年以下の懲役が課せられることがあります(破産法265条)。あるいは破産するのが法人であって、その代表者が自分のために会社財産を流用したり、隠匿したりしますと特別背任罪や業務上横領罪に該当することもあります。

対応策

1.
 本件は取引先が破産の申立をした場合ですから、債権者が抵当権等の担保権を持っているか、この会社との取引の内容が動産の売買で、債権も売買代金請求権であれば、動産売買の先取特権という別除権を持っていますから、抵当権であれば競売の申立を、動産売買の先取特権ならば売り渡した物の差押、競売をすることができます。
 ただ、納入した品物がいまだこの破産申立をした会社内にあるのならば、債務不履行を理由として品物を引き上げてくればよいでしょう。
 なお、このような解除は、破産申立をした会社が破産手続開始の決定を受け、破産管財人が選任されますと、若干手続が異なります(破産法47条参照)。ですから、契約の解除をするのは、破産の申立があったらすぐに行い、破産手続開始の決定前には相手方に解除の通知が到達しているようにしてください。
 上記のような権利があれば、破産の申立に影響されることなく債権回収することができます。 また、破産申立した会社に対して債務を負担している場合には、相殺によって回収を図ることが出来ることは前述したとおりです。
 相殺のやりかたですが、証拠を残しておく必要から、相殺する旨の意思表示を内容証明郵便を使って行うとよいと思います。

2.
 隠し財産があることが判明した場合、債権者としては破産管財人に対して隠し財産の存在について報告し、否認権が行使できるようその情報を提供するようにします。管財人は破産者の味方でも敵でもない、裁判所から選任された公正な機関です。
 特に隠し財産が多いとか、会社の財産が代表者個人に流用されているなど、破産させるのが不相当と思われる事案については、管財人にその事実を報告するだけではなく、刑事告訴の手続も採るべきであると思います。その場合、告訴が受理されるかどうかは証拠がかなり揃っていて、事実関係がかなり明確になり、捜査のポイントが絞れている必要があります(法律上では、警察は告訴を受理する義務がありますが、現実には証拠の少ない告訴は受理してもらえる可能性はかなり低いです)。

予防策

取引先がこのように財産を隠して倒産するなどの悪質な計画倒産に対抗する一番の方法は、取引先の信用不安の情報を事前にキャッチしておくことだと思います。事後的にここで紹介したような手段はありますが、いずれも手間と時間がかかることは否定できません。
 債権回収は情報量がポイントといえるでしょう。

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