法律Q&A

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社内犯罪を防ぐには?

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

会社とすれば、役員や従業員の不祥事の発生を未然に防ぐには、どのようなことに注意すればよいですか。

甲社では、このわずか半年くらいの間に役員や従業員の3件もの不祥事が明るみに出てしまいました。現在、社長や役員会でその対応にてんてこまいしているようですが、このようなことを二度と繰り返すことがない様にするには、今後どのような点に注意すればよいでしょうか。

根本的な防止策とは、労働者に「やりがい」を起こさせる労働環境作づくりとチェック体制の確立しかないでしょう。

1.事前防止策の重要性
 設問[7-2-1]に解説してあるような社内犯罪に対する対処法をどれくらいのコストをかけてやれば「社内犯罪」が減少して健全な社内環境が確立されるのでしょうか。おそらく、いくら多大なコストと時間を費やして対症療法に力を注いだとしてもそのような片手落ちの対策では、「社内犯罪」の減少は望めそうにもないと思われます。たとえば、社内に限らず、一般の犯罪の場合を考えてみてください。犯罪の数を少なくするために、犯罪者に犯した罪に相応な刑を科するだけで十分といえるでしょうか。いわゆる「刑事政策」という学問では、犯罪の減少に役立つ全ての国家施策をその対象としており、刑法はその一手段にしかすぎません。つまり、犯罪に対処する手段だけでなく、予防と再社会化に役立つ広範な政策が重要となっているのです。「社内犯罪」であっても、同じ事が言えます。つまり、防止策無しに「社内犯罪」の減少は有り得ないし、むしろ、会社にとっては「防止策をより重視していくべきと思われます。
1.具体的防止策
(1)社内職場環境の設備
 まず、「社内犯罪」の温床となる会社の役員や従業員を取り巻く職場環境を整備することが大切です。
 1)「管理システムの確立」
  社内での不正を未然に防ぐためには、当然のことながら日常的なチェックが欠かせません。受任・仕入れ・納品・請求書の 発送・代金回収・返品チェック等の 各段階において、担当者を明確に分けた上で、その担当者の間の相互のチェック体制( 定期的なミーティング等)を充実させる必要があります。
 2)就業規則等の整備
  この点は、特に最近社会問題となるつつある「情報機密の漏洩」に関していえることです。会社の営業秘密の最大の弱 点は、一旦他人に知られてしまうと経済的価値をまったく失ってしまうことです。従って、漏れた場合のことより漏れないよ うにする方法を検討することが重要なのです。そこで、営業秘密を知っている役員や従業員を法的に拘束しておく必要が 生じ、我が国における従来の雇用形態はそれを各従業員の「モラル」で守ってきたのですが、近年になり、我が国における 雇用形態の欧米化が急速に進んできたために、営業秘密保持の義務を会社と従業員あるいは従業員との契約という形で 厳格に律する方策が求められる様になってきました。そして、この契約には、a従業員に営業秘密の価値の高さを明確に 認識させ、反対動機を形成させ、不正行為を思いとどまらせる。b不正行為が万一行われた場合に、不正行為者に対す る損害賠償請求の根拠とするという2つの意味があります。なお、bの意味からすれば、守るべき秘密の内容・範囲を明確 にし、当該保持義務と引き換えに与えられるべき対価(給付の額、ポスト、退職金等)とが著しく不均衡とならないように注 意すべきでしょう。なお、セクハラ問題についても、我が国では、新しい社会問題であり、それに対応できる社内規定はほと んど整備されていないのが現状です。そこで、会社内部に規則を設け、望ましくない行動を明確にした上で、不用意な行 動をしないように、社内でミーティングや研修会を委ねて、周知徹底した上で、問題となる行為がないかど うかをチェックす るシステムを築きたいものです。

(2)取引先等社外とのチェック体制の強化
 社外との取引先との関係で発生する「社内犯罪」(インサイダー取引がその典型例)の場合、会社を取り巻く関係者との間で密に連絡を取り合い情報を交換したりしておくとよいでしょう。なぜなら、こうしておけば、社外の者と何か不正なことを企んでいる社内の人間の不正行為を事前にチェックできる可能性が大きいからです。なお、インサイダー取引については次の4つの防止策が重要でしょう。
 1)社内規定と社内研修の徹底
  我国では、まだ歴史が浅いことから当然に要求されることです。
 2)1)に対する経営者サイドの関与
  経営者サイドの熱意や姿勢、覚悟の程が会社員に伝わらなければ事の性質上効果は期待できません。
 3)情報管理体制の見直し
  社員は、自社株の取引は自粛すべきでしょう。つまり、「李下に冠を正さず」という姿勢が重要でしょう。
 4)会社情報の公表
  会社の情報については、きっちり管理するだけでなく、時期が来れば公表するようにすべきです。会社にとって不利な情 報であっても、時期が来れば公表する勇気が必要です。この勇気なしには、様々なリスクに囲まれた環境変化のスピード が速く社会の企業を見つめる厳しい時代を会社が生き抜くことはできないでしょう。

対応策

以上「社内犯罪」の防止策を制度的側面から紹介してきましたが、このような制度的側面をたとえ100パーセント確立したとしても、この制度をその目的つまり「社内犯罪」の防止の達成に直結させられるか否かは、この制度の下で如く、役員や従業員立ちの「やる気」に依存しているといえるでしょう。従って、今まで述べてきた防止策のさらなる根本的なものとして会社として労働者に働き易い職場を提供するということに留意すべきでしょう。その具体的内容としては、【1】安全管理、福利厚生等の職場環境の確立【2】休日、有給時の時間的ゆとりの確立【3】世間並みの報酬(給料)等が挙げられます。このような職場を確立してはじめて、労働者に仕事に対する「やりがい」が生じ、職場内でのストレス等に悩まされることもなく、健全な一般常識を持った社会人として「正当な職務を継続して遂行していけるものと考えます。経営者、管理者としては、「社内犯罪」が発生した際に、犯罪者の責任を追及することにばかり気を向けるのではなく、その犯罪に至った原因を調査し、それを基にして、より効果的な防止策を早急に施した上で、労働者に「やりがい」をおこさせる職場の形成へ向けてたゆまぬ努力を続けることが肝要であり、その繰り返しで、「社内犯罪」の防止という目的は達成されるものと考えます。

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