法律Q&A

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社用接待をめぐる犯罪

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

取引先を接待する際に犯罪となるのはどのような場合でしょうか。

甲社の営業部長Aは、甲社の新製品の宣伝をかねて数年前からの取引先である丙社の総務部長Bら数名を接待することとなり、赤坂の料亭で食事をしました。ところが、Aは丙社に対する接待はこれで終了しているにもかかわらず、二次会と称して甲社の社員数名だけで銀座の高級クラブに繰り出し豪遊した後、料亭代だけでなく、二次会代(約30万円)までも弊社の社員数名と行ったかのように偽り甲社に請求しました。このような場合のAの行為は、どのような犯罪になるのでしょうか。

Aには、詐欺罪、もしくは経理権限がないようですので、背任罪の成立が考えられます。

1.社用接待の問題点
 会社の業績をあげるためには、日頃、取引先や関係官庁の公務員などを接待し、会社の金で飲食したり、ゴルフや旅行して遊ぶことが行われています。しかし、この場合、公務員に対する接待は、社交儀礼の範囲を超え公務員の職務に関するものに対してなされたものであれば、公務員の職務に関して、賄賂を供与したことになって、贈賄罪として、刑法198条により、懲役3年以下か罰金100万円以下の計で処罰されることになります。さらに、公務員以外に対する接待でも、会社の費用で接待する場合は、自己の懐がいたまないことから、必要以上に派手になされることが多いようです。
2.背任罪の成立
 そこで、極端に不必要な濫費をして、自己の欲望を満足させている場合、たとえば、ホステスである自己の愛人の歓心を買うために、売り上げを常に店一番にさせるためだけを目的として、もっぱら、私欲のためにする場合などは、一種の社会的に許された役得の範囲を超えて、背任罪になることもあります。つまり、会社の部・課長などは、会社のために、社用接待に際しては、無用の濫費をしないように、誠実に処理すべき任務があるのに、自己又は第3者の利を図る目的で、その任務に違背し、会社に財産上の損害を与えたことになるからです。ただし、実際には、会社のために十分な接待をしたものであり、もっぱら自己の欲望のためだけに接待したものということの立証は、なかなか困難であろうといわれています。
3.詐欺罪の成立
 さらに、取引先の客に対する接待は、1次会だけとして、客を返した後で、2次会、3次会は、自分たちだけで飲食・遊興し、その金を接待費名目で会社から支払わせる場合も多くあるようです。又、当初から取引先の客を接待しないのに、接待したという名目で、自分たちだけで飲食し、その飲食代金を会社に接待費として請求して支払わせる場合もあるようです。これらは、いずれも違法行為で、犯罪となります。すなわち、接待費の支払方法が、接待費伝票などで経理に申告し、経理担当者から、料亭やクラブに直接支払われる場合は、経理担当者に対し、真実は自分たちだけで飲食し、取引先の客を接待したことはないのに、取引先の客を接待した旨うそをついて、会社の金を支払わせて騙し取ったことになって、詐欺罪を犯したことになり、懲役10年以下で処罰されることになります。また、経理担当者自信が、自分らだけで飲食し、偽りの接待費名目で料亭やクラブなどに支払いをした場合は、自己の業務上保管にかかる会社の金銭を、不法にも勝手に支出して費消したことになって、業務上横領罪を犯した事になり、懲役10年以下の刑で処罰されることになります。さらに、会社によっては、接待費として、料亭やクラブの領収証を持っていけば、いつでも領収証記載の金額をくれるところがあります。この場合、実在するクラブや料亭の領収証や、実在しないクラブなどでも、一般には実在するものと信じられるようなクラブ名などのゴム印などを使って、勝手に領収書を作って会社から接待費名目の金員を受け取れば、先に述べた詐欺罪や業務上横領罪のほかに、勝手に他人の作成すべき領収書を偽造したということで私文書偽造・同行使罪をも犯した事になります。

対応策

設問のAは、1次会だけでなく、丙社関係者の同席していない甲社だけでの社員の2次会の代金を接待費として甲社に請求しておりますので、詐欺罪が成立する ことになります。甲社内でのAの過去の行状等にもよりますが、懲戒解雇という手段に出るようなら、損害賠償請求や刑事告訴も考えるべきでしょう。

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