法律Q&A

分類:

社員間の喧嘩

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載
2015年8月:補正

社員同士が喧嘩した場合の対応は?

当社の営業部の社員乙と総務部の社員丙が、社員食堂で昼食休憩中に殴り合いのけんかとなりお互い怪我をしただけでなく、それを止めようとした社員食堂の職員まで怪我を負いました。当社として、どのように対応すればよいのでしょうか。

けがをした第三者には早急に謝罪して、被害弁償をし、社内ではトラブルの原因を調査し、トラブルを起こした従業員の処分を検討すべきでしょう。

1.原因の究明と事実の確認
 乙と丙の行為は、相手を殴って怪我をさせているようですから、互いに傷害罪(刑法204条)にあたることは明らかです。
 この様な場合に、まず最初に会社としてすべきことはなんといっても原因の究明です。喧嘩をした社員がどのようないきさつがあってこの様な結果となったのかということです。喧嘩の原因が会社に全く関係のないことならまだしも、もし会社の労務管理のまずさが原因となっている場合であれば会社としても無視するわけにはいかないでしょう。喧嘩をした当事者からしっかり事情を聴取しましょう。
 次に、事実関係をしっかり確認してください。怪我人が出た場合は、怪我の程度を診断書などを提出させて確認すると共に、設備備品の破損等があれば、その程度を見積書などで明らかにさせ、被害額算定の為に出してもらうようにしましょう。
2.警察への対応
 本件では警察沙汰になっていないようですが、そのようになってしまった場合は、警察に事情をよく説明して会社の方で穏便に処理する旨を伝えることが肝心です。警察も事情をよく説明すれば、この様な事件は当事者間での話合いによる解決を優先させるものです(警察権の「民事不介入の原則」と言います)。なお、事件が思わずマスコミに流れてしまう場合もありますが、その場合は、出来るだけ穏便に済ませたい意向を伝えて報道を自粛してもらうようにお願いし、もしそれがだめな場合でも、興味本位の報道となり会社の評判が下がらないように必要な情報はしっかり開示して、マスコミの情報操作を避けるべく最大限の努力をすべきでしょう。
3.怪我人への対応
 会社としては、従業員の不始末に対するフォローをしっかりとすべきですので、けんかの仲裁に入って負傷したのが会社関係者である場合でも、たとえ、その人に喧嘩の原因の一因があったとしても、会社としては丁重にまずその方への誠意を示すことを忘れないでください。仮に、その方が負った怪我がその方の過失に基づく部分があるとしても、せいぜい弁償金額の算定の際に考慮されるに過ぎないと考えるべきでしょう。なお、従業員相互間での喧嘩の場合は、怪我した側の治療費について一応会社が支払った上で後日の調査の結果をみてから怪我をさせた従業員に負担させるか、もし負担させるとすればどれくらいが妥当かという点を考慮しましょう。
 この様な対応を怠り誠意ある姿勢を示さないと、怪我をした方に喧嘩をした従業員が刑事告訴されたり、損害賠償を請求されたりする可能性がありますし、従業員相互間でもそのような状況がおきかねません。また、損害賠償の場合は、会社も使用者責任(民法715条)を問われかねません。要するに、会社としては、対外的には怪我をした方との間でのいち早い示談交渉に取り掛かり、対内的にも怪我をした従業員に対して治療費をとりあえず立て替えて支払う等して、刑事事件や民事事件として事が大袈裟になることを避けるべきでしょう。
4.社員の管理体制の確認と整備及び懲戒処分
 社内的には、喧嘩をした当事者の上司も含めて十分に話合い、このようなトラブルが二度と生じないように、社内の綱紀粛正をはかるべきです。そして、社員の労務管理体制に不備はなかったか、各部や各課内やそれら相互間のコミュニケーションはしっかりなされていたか、従業員の間に会社に対するいかなる不満があるのか等を調査・点検し、二度とこの様な不祥事が起こらないように万全の体制を整えると共に、当事者とその上司に対しては、他の従業員に対する見せしめの意味からも、相当な懲戒処分(戒告程度が妥当でしょうが、あまりに社員管理がずさんだったり、常習性が認められるような場合は、減給や停職程度もありえるでしょう)をすべき場合もあるでしょう。
5.派遣労働者の場合(参考)
 このような社員間での職場の喧嘩が、派遣労働者と派遣先会社の社員間でなされた場合の最新判例として、ヤマダ電機・アデコ事件(大阪地判平23.9.5)があります。派遣先社員に暴行を受けた派遣社員が、派遣先会社を使用者責任、派遣元会社を安全配慮義務違反でそれぞれ訴えましたが、前者については、打撲の限度での因果関係はあると認めたもの、個人間の借金トラブルを原因とする私的トラブルでしかも勤務時間外における喧嘩であることを理由に事業執行性を否定し使用者責任を否定し、後者については、派遣元が事前に派遣社員から苦情や相談を受けていた事実を認めることができないことから安全配慮義務違反を否定し、加害者である派遣先社員のみに民法709条により12万円余りの損害を認めただけでした。

対応策

以上のことから、まとめれば、会社とすれば、速やかに以下のような対応をすべきです。
【1】トラブルの原因究明と被害の確認
【2】被害者との間での早急な示談交渉
【3】警察及びマスコミへの報告と説明
【4】社内における懲戒処分の決定と綱紀粛正の徹底
 会社としては、昼食休憩中に生じたトラブルではありますが、社員食堂という会社が管理している場所で起こった不祥事ですから、「会社が起こした不祥事だ」という認識を持って迅速かつ丁寧な対応策が取れるかという点がポイントと思われます。

予防策

このような社員同士の喧嘩騒動が会社内で勤務時間中に生じないようにする為には、職場がプライベートな場でないことと仕事中は個人的な感情を仕事にも絶対持ち込まないように社員に対して周知徹底することが大切でしょう。今後のこのようなトラブル防止という観点からは、前述したように、「喧嘩両成敗」として、喧嘩をした双方に対して軽くてもよいので懲戒処分もしくは口頭注意くらいは与えておき、社員全員に対してこのような処分の内容を告知しておくことが肝要でしょう。

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