法律Q&A

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PL責任の概要

弁護士 近藤 義徳
1997年4月:掲載(校正・村林 俊行2007年12月)

製品に欠陥があるといわれ、損害賠償を請求されてしまったときの対応は?

製品に欠陥があるとの理由で損害賠償請求を受けた場合、どのような対応をとるべきでしょうか。また、どのような予防策を講じておくべきでしょうか。

対応策としては、事故情報の収集、リコール(製品回収)等に留意し、予防策としては、社内における防御態勢の整備、その他安全対策に留意する必要があります。

1.PL法の目的
 平成7年7月1日から施行されたPL法(製造物責任法)は、「製造業者等は、・・製造物・・の欠陥により、他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」(同法3条本文)として、欠陥製品に関するメーカー等の賠償責任を加重しました。
 それまでは、欠陥製品で損害を受けた被害者は、[1]債務不履行責任(民416条)、[2]売主瑕疵担保責任(民570条)、[3]不法行為責任(民709条以下)等によってメーカー等の責任を追求できましたが、特にエンドユーザーとメーカーとの関係で問題となるのは[3]であり、この場合被害者がメーカー等の故意・過失を立証しなければならず、[2]では賠償範囲が狭いなど、被害者の保護としては必ずしも十分ではありませんでした。
 そこで、被害者が、製造業者の故意・過失を立証しなくても、製品に「欠陥」があることを立証すれば、製造物自体から拡大した損害についての賠償を受けられることにして、被害者の保護を図るべく制定されたのがPL法なのです。
2.PL責任の要件
(1)対象=「製造物」
 「製造物」とは、製造又は加工された動産です(同法2条1項)。「動産」とは、不動産以外のすべての有体物をいいますから(民法85条、同法86条)、無体物(電気、音響、光、熱等)や不動産は、PL法の対象となりません。ただし、不動産の部分を構成していても、動産として引き渡される物(例えばエレベーター、ガラス等)は、PL法の対象となります。
 「製造」は、原材料に手を加えて新たな物品を作り出すことで、「加工」は原料たる動産に工作を加え、その本質を変えずに新しい属性及び価値を付加することです。したがって、未加工の農林水産物や鉱物並びに単なる切断物、冷凍物、冷蔵物、乾燥物等は製造物に含まれません。

(2)責任主体=「製造業者等」
 「製造業者等」とは、[1]製造物を業として製造、加工又は輸入した者、[2]製造業者として氏名等を表示しまたは製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者、[3]実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者です(同法2条3項)。
 したがって、設計事業者や製造物を設置、修理、梱包、運送、保管、販売したにすぎない者はPL法の責任主体に含まれません。

(3)「欠陥」の存在
 「欠陥」とは、製造物が通常有すべき安全性を欠いていることで(同法2条2項)、製造上、設計上、表示上の3類型があります。欠陥の有無は製造物を引き渡した時を基準として判断されますが、判断に際して考慮する事情として、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情」が例示されています(同法2条2項)。
 裁判になると、被害者は、欠陥の存在について主張立証しなければなりませんが、製造業者の故意・過失を立証する必要はなくなりました。

(4)損害の発生
 欠陥によって(因果関係)、生命、身体又は財産が侵害されたことが必要です。単に欠陥品それ自体の損害しか発生しない場合や精神的損害のみが発生した場合はPL責任は生じません。
 損害の発生及びその額と損害と欠陥との因果関係については、被害者が主張立証する必要があります。

(5)免責事由の不存在
 1)開発危険の抗弁
  製造業者等は、製造物を引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、欠陥を認識できなかったことを 証明すれば、PL責任を負いません(同法4条1号)。
 2)部品・原材料業者の抗弁
  部品原材料の製造業者は、部品、原材料の欠陥が、専ら完成品メ-カーの設計に関する指示にしたがったことにより生 じ、かつ欠陥が生じたことに過失がないことを証明すれば、PL責任を負いません(同法4条2項)。
  これについては、169講で説明します。

3.PL責任の範囲
(1)損害賠償の範囲
 製造業者等は、通常生ずべき損害の他、特別の事情によって生じた損害でも製造物引き渡しのときに予見できたときはその賠償をしなければなりません(民416条) 。
 損害の種類には、精神的損害や逸失利益も含まれます。
 ただし、被害者に拡大損害が発生せず製造物自体の損害に止まるときは、PL責任は生じません(同法3条但書)。

(2)責任期間
 PL責任は、被害者が損害及び賠償義務者を知ったときから3年間行わないとき、または製造物を引き渡した時から10年を経過したときは時効によって消滅します(同法5条1項)。なお、[1]身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質(例えば有機水銀、鉛、アスベスト等)による損害、[2]一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害(例えば病原体による被害、長期間経過後に発現する後遺症等)については、その損害が生じた時から10年の時効期間が起算されます(同法5条2項)。
 但し、PL法の消滅時効が完成しても、民法上の不法行為責任は、不法行為の時から20年間は消滅しませんので、損害賠償責任がなくなるわけではありません。

対応策

1.事故情報の収集
 まず、被害者から詳細に事情を聞き、可能な限り迅速に事故製品を回収した上で、欠陥の有無を自社または第三者機関で検査します。

2.リコール(製品回収)、通知
 事故情報を収集した結果、事故製品に欠陥があることが判明し、同種製品にも欠陥の可能性がある場合は、速やかに製品の所在先に対して回収を申し入れます。全製品の所在が確認できないときは、マスコミを利用した広報の必要もあるでしょう。 なお、同業他社の製品についても類似事故の可能性がある場合は、監督官庁、業界団体にも連絡して、事故の拡大を未然に防ぐよう努力すべきです。 このような対応が適時になされれば、会社に対する社会的非難が和らぎ、過度な企業イメージの失墜を免れうるものと思われます。

3.紛争処理
(1)交渉
 製品検査または製造工程の調査の結果、事故製品に欠陥が認められた場合は、適正な損害賠償を前提に示談で解決するように努力すべきでしょう。 この場合、被害者に対して欠陥の存在及び事故情報をどの程度開示するか否かは難しい問題ですが、訴訟で争う場合のことも考えて慎重に判断すべきです。
(2)裁判外紛争処理機関の利用
 被害者が、欠陥の存在に固執したり、高額な賠償を求めてきたときは、裁判外紛争処理機関を利用する方法もあります。但し、この場合は、被害者の同意が必要ですので、同意が得られないときは調停、訴訟に進まざるを得ないでしょう。
(3)調停・訴訟
 被害者が交渉に応じず、裁判外紛争処理機関の利用に同意しないときは、民事調停、民事訴訟等によらざるを得ません。被害者が調停、訴訟を起こしてこないときは、製造業者側から、債務の不存在の確認、適正な債務額の確定を求めて調停、訴訟を利用することも紛争解決の有効な手段です。

予防策

1.PL態勢の整備
 PL事故を予防するためには、設計、製造・指示警告上の欠陥を防止しなければなりません。そのために全社各部門のスタッフ参加によるPL対策組織を作り、代表者が直接指揮監督して統一・迅速・的確に予防対策を推進できる態勢を調える必要があります(予防態勢)。
 PLクレームがあった場合に、企業を防御するためには、まず、そのクレームについて、欠陥の存否、免責事由の存否、損害額を法的に確認しなければなりません。その上で、法的責任と社会的イメージの低下を比較しながら、被害者及びマスコミ等と対応することになります。そのためには、[1]代表者等によるクレーム情報の一元的管理、[2]PLに詳しい弁護士の確保、[3]専従スタッフの確保が重要であり、日常的には、[4]書類の作成保管を統一マニュアルに従って行う態勢にあることが必要です(防御態勢)。

2.PL責任の予防対策(PLP)
 PL責任の発生を事前に回避するには、
[1]誤使用対策を含めた安全設計
[2]素材・部品調達基準の設定
[3]化学物質等の使用制限
[4]品質管理の徹底等の製品自体の安全対策を充実させるとともに
[5]適切な取扱説明書の作成
[6]警告ラベルの作成・貼付
[7]質問相談窓口の設置等の製品情報提供等にも万全を期す必要があります。
 そして、これらのPL対策が適切になされているかを監査する制度を設ければ、社内にもPL意識が浸透すると思われます。
 なお、ISO9000シリーズの認証を受けることも有効でしょう。

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