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給料に対する差押への対処

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000年11月:掲載

クレジット会社やサラ金会社から給料に対し差押があったら?

A社の従業員Bは、欲しい物があると直ぐ買ってしまうタイプで、月の給料だけの生活では飽き足らず、賞与を当て込んでクレジットカ―ドを使ったり、サラ金を利用したりしていました。ところが折からの不況の嵐によりA社の賞与が例年の半分に減り、昇給も定昇のみということになり、Bの当ては外れ、クレジット会社などへの返済が滞っている内にCクレジット会社からA社に対してBの給料を差押える命令が届きました。A社はBの経済観念の無さに呆れましたが、何とかしてやりたいとも思っています。差押に対しどう対応したら良いのでしょうか。

裁判所からの通知に従って2週間以内に給与の支払いの有無・範囲などにつき回答すべきです。

1.仮差押
 一般に会社が従業員の給与に関して出会う差押には二種類あります。先ず、仮差押です。これは、未だクレジット会社などの債権者が従業員に対して差押の前提となる判決、支払命令、調停調書や公証役場での公正証書(特に、強制執行できるという条項の入ったもので執行証書と呼ばれている)などの書類(これを債務名義と読んでいる)を持っていない場合に、これらの債務名義を取るまでの間、給料が従業員に支払われてしまって無くなるのを防ぐためになされるものです。この場合は仮差押えられた額を次に説明する本差押までの間、従業員に対して支払ってはならないことになります。
2.差押
 次に差押です(右の仮差押に対して本差押ということもあります)。これは、(1)で説明した判決などの債務名義に基き、給料、賞与、退職金等を差押えて会社に対して差押えた部分の支払いを禁止するだけでなく、更に、差押をした債権者が直接会社に対して差押えた賃金を取り立てる権限を与えるものです。この場合は、差押命令に対して、原則として従業員の手取り給与の4分の1の支払いを止め(民事執行法152条、東京高決昭和34・6・22判時199-25)、裁判所から差押命令と一緒に送られて来る陳述命令の催告書に回答し、特に差押えられた給与の支払いを拒否する理由がない場合には支払うという回答を書き、取立てて来るクレジット会社などの差押債権者に給与を支払うこととなります。この場合は差押債権者からの請求に会社が直ちに支払わなかったからと言って、いきなり会社の財産を差押える等の措置をとられることはありません。又、会社が従業員に対して、差押前から反対債権を持っている場合、例えば賃金の控除協定(労基法24条1項)などにより合法的に控除できる貸付金債権などがある場合は、これについて相殺を主張すれば良いのです。差押えられたのが退職金であれば懲戒解雇などの場合、不支給や減額を当然主張することとなります。
3.取立の訴え
 会社が、以上のような理由なく一方的に差押債権者の請求を拒んだ場合や、差押債権者が拒んだ理由を認めなかった場合には、差押債権者が「取立の訴え」という裁判を起こして来ることになります。この場合、会社はその裁判を放っておけば一方的な判決が出てしまうので弁護士への依頼などにより裁判で争わなければなりません。
4.陳述命令の回答書に記入する時の注意
 なお、以上のように差押えられた賃金を差押債権者に対して支払うかどうか、支払わない場合はその拒否する範囲と理由などについて回答を求められる陳述命令の回答書への記入には充分注意しなければなりません。この回答書への記入を間違えたからと言って後の取立の訴えで主張を絶対に変更できない訳ではないのですが、不利になることは明らかです。又、その回答を催告期限に出さないと、差押債権者から損害賠償を求められることになります。但し、ここでの損害とは、回答しなかったことによって差押債権者が会社からの債権の回収に期待して他の資産の差押をしなかったため、これをタイミング良くすれば他から得られたであろう利益を失ったことに対する損害ということとなります。従って、実際にその損害額を確定するのはそう簡単なことではありません。しかし、そのようなトラブルに巻き込まれないように期限内にちゃんと回答しておくことが必要です。

対応策

設問の場合は、差押えて来たC社に対して、会社としてBに対して相殺することができる反対債権があるか、退職金の不支給事由があるかなどをチェックした上で、期限内に差押債権者に対して支払う意志がある範囲とその理由について陳述命令の回答をした上で、回答に応じてC社に任意に支払うか、取立の訴えを待って裁判で決着を付けることになります。

予防策

紛争予防策としては、第一には、従業員が給料債権への差押などの事態を招かないように従業員の動きを把握し普段の生活への指導をしておくことが必要です。そして起こってしまった場合に賃金の控除などについて争いにならないように、賃金の控除に関する労使協定(労基法24条)などを準備しておくことです。又、このような事態になった場合の会社としての差押債権者への対応を給与担当の部署に徹底しておくことです。

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