法律Q&A

分類:

嘱託社員の退職金

回答者 弁護士 村林俊行(ロア・ユナイテッド法律事務所)

嘱託社員の退職金請求

就業規則上、正社員に対して退職金を支給している会社においては、嘱託社員に対しても退職金を支払う必要があるのでしょうか。

必ずしも退職金を支払う必要があるわけではありません。

1嘱託社員と就業規則
 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません(労基法第89条)。そして、届け出る就業規則は、原則として事業場で働く全ての従業員に対して適用されます。
そのため、嘱託社員に対しては、正社員との労働条件の差を考慮して就業規則に除外規定を置いて嘱託規定を設けることが有用ですが(昭和63・3・14基収150号)、正社員と共通する事項も多いので、就業規則で「準用」するという規定を置くこともあるのが実情です。
後者のような規定の仕方をした場合には、就業規則のどの規定が準用されるかを就業規則や嘱託規定等で明確に規定しておく必要があります。この点明確でない場合には、争いとなって裁判に持ち込まれたときには、嘱託社員に対して思いがけず正社員の規定が準用されることがありえます。
 また、嘱託社員について就業規則の適用を除外しても、嘱託職員に対する別規則を設けていないと、就業規則作成義務違反となるので注意が必要です。
2 嘱託社員と退職金
  就業規則上、退職金支給規定がある場合に、嘱託社員に対して退職金を不支給とする場合には、会社としてはいかなる対応をすべきでしょうか。
まず、就業規則に別規則への委任規定を設けた上で、嘱託規定を設けて退職金を不支給とする場合には、嘱託社員に対して退職金を不支給とすることも認められます。
次に、就業規則において嘱託社員につき適用除外とした上で、別途パートタイム労働法が要求する「労働条件通知書」(同法6条)を交付する場合や、嘱託社員との労働契約において退職金不支給を規定する場合にも、嘱託社員に対して退職金を不支給とすることも認められるでしょう。この方法による場合には、単に労働契約で退職金の不支給を規定するだけでは足りないことに注意してください。なぜならば、個別労働契約より就業規則の効力が優先することから(労基法93条、労契法12条)、就業規則で嘱託社員については適用除外しておく必要があるからです。
仮に以上の方策をとっていない場合には、正社員の就業規則が準用される可能性があるとともに、募集条件等で退職金の不支給が明示されていれば、これが参考とされることもありえます。しかし、それもない場合には各社の採用時の説明内容、取り扱いの実態や慣行の有無・内容によって処理されることもあります。これらの場合には、退職金の支給をしなければならないか否かについて微妙な問題を残しますので、やはり上記の対応が是非とも必要となります。
この点判例においては、就業規則では正社員用のものしか作成していなかった事案において、地裁では退職金請求を認めませんでしたが、高裁においてはこれを減額した上で認めた判例があります(大興設備開発事件・京都地判平8・11・14労判729号67頁、大阪高判平9・10・30労判729号61頁)。
また、就労時間等で一般職員と差異があっても、就業規則での適用除外がないとして病院の勤務医師に職員の退職金規定の適用を認めた判例もあります(清風会事件・東京地判昭62・8・28労判508号72頁)。
逆に、宿直で守衛業務に従事している従業員に、昼間労働を前提とする就業規則をそのまま適用できないとした判例(江東運送事件・東京地判平8・10・14労判706号37頁)、就業規則が嘱託社員にも別に定めるものを除き準用されるとの前提の会社において、①嘱託契約を締結する前の当初の労働契約において退職金を支給しないことを合意していたこと、②嘱託契約においても内容的には基本的に従前の契約と同様であったこと、③嘱託契約締結に際して退職金の話が出なかったこと等を理由として、退職金を支給しない旨の黙示の合意が成立しているものとして、退職金請求を認めなかった判例があります(小型自動車開発センター事件・東京地判平16・1・26労経速1865号24頁)。

対応策

就業規則上、退職金支給規定がある場合に、嘱託社員に対して退職金を不支給とする場合には、①就業規則に別規則への委任規定を設けた上で、嘱託規定を設けて退職金を不支給とするとか、②就業規則において嘱託職員につき適用除外とした上で、別途パートタイム労働法が要求する「労働条件通知書」(同法6条)を交付するか、嘱託社員との労働契約において退職金不支給を規定する必要があるといえます。

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