法律Q&A

分類:

振替休日と代休

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000年10月:掲載

休日を他の日に振替えて勤務させた場合に休日勤務の割増手当を支払う必要があるのか?

A社では、休日は毎週土、日の二日と国民の祝日及び12月29日乃至1月3日となっていました。しかし取引先との関係もあって年末年始以外の土、日曜日や祝日は一部の社員を職場ごとの話し合いで事前に交替で勤務ローテーションを決めて出勤させていました。これは就業規則で定められ、休日振替といって1カ月以内に代休を与えることにしていました。しかし急用の時はこのローテーションに関係なく、休日に出勤させて同じく1カ月以内に代休を与えていました。ところが、A社に新しく入った従業員Bが「土、日に出勤するのは振替でも、代休を貰っていても、休日の出勤には変わりがないのだから、割増の付いた休日勤務手当を支払って欲しい」と言って来ました。A社はBの要求に応じる必要があるのでしょうか。

事前の振替えがなされていれば休日割増手当の支払いの必要はありません。

 結論としては、事前振替により代休を与えている場合には、休日出勤手当は不要ですが、急用のための事後振替による代休の場合でそれが法定休日の出勤であった場合には、休日出勤手当の割増分又は全額の支払が必要となります。
1.労基法の求める週休制
 労基法35条1項は、週1日の休日を義務付けていますが、実際は同条2項によって4週4日の変形週休制も認められています。この変形週休制を取る場合は就業規則において単位となる4週間(又はそれより短い期間)の起算日を定める必要がありますが(労基則12条の2)、どの週に何日の休日を与え、どの週に休日を与えないか、などについては事前の特定が必要とされていません。但し、行政指導ではできるだけ特定するよう指導されていて(昭和23・9・13基発17)、多くの会社では休日がA社のように特定されているでしょう。
2.休日の振替
 しかし、会社は突発的な受注への対処など一時的な業務上の必要性から、労働者に対し、就業規則上休日と定められた特定の日を労働日に変更し、代わりにその前後の特定の労働日を休日に変更する(このような意味で休日を他の日に「振替」える)措置をとることがあります。この措置についてよく混乱されて理解されているので注意すべきは、このような広い意味での休日振替えにも【1】「事前の振替え」(あらかじめ「振替え休日」を指定したうえで特定の休日を労働日とすること、これが本来の「休日振替え」)と、【2】「事後の振替え」(休日に労働をさせた後に「代休日」を与えること、これが本来の「代休」)とがあり、これらは労基法上の取扱いが大いに異なるということです(菅野和夫「労働法」第5版補正版253以下参照)。
3.「事前の振替え」と振替休日
 事前の振替えは、労働契約上特定されている休日を他の日(振替休日)に変更することなので、会社の休日振替命令が、労働協約や就業規則などの労働契約上の根拠が必要で、それらの規定で、定められた休日を他の日に振替えることができること、そしてその理由・方法を定める規定があり、それに従って振替が行われることが必要です。このような規定がない場合には、休日振替えは、労働者の個別の同意が必要となります(鹿屋市事件・鹿児島地判昭和48・2・8判時718-104)。
 又、事前の休日振替えは、労基法の1週1日または4週4日(変形週休制)の休日の要件をみたさなければならないので、会社は振替休日の日をこの要件に反しないように配置し、指定しなければなりません。そしてこの要件をみたす限り、事前の休日振替えにより、本来の休日の労働は労働日の労働となり、それについては労基法上の割増賃金(労基法37条)の支払が要りません(三菱重工業事件・横浜地判昭和55・3・28労判339-20、前記通達、昭和63・3・14基発150)。但し、注意が要るのは、振替えにより週の法定時間を超えると1.25倍の割増賃金の支払の必要がある、ということです(同通達)。
 なお、休日労働が禁止されている妊産婦についても(労基法66条2項)、このような形で特定されていた休日に労働させることができます。
4.「事後の振替え」と代休
 次に一般に代休と言われる「事後的な休日振替」についても、事前の休日振替と同様に労働契約上の根拠が必要で、労働協約または就業規則などの根拠規定に従って行うか、又は労働者の個別的同意が必要です。しかし、この事後の振替えの場合には、就業規則上定められた休日が休日のまま労働日として使用されたことになり、それが労基法上の法定休日であった場合には、同法上の休日労働の要件をみたすことが必要となります。つまり、会社は、三六協定による休日労働の規定(36条)に基くことが必要で、その休日労働に対しては割増賃金(同37条)を支払わなければなりません。しかし、代休日を与えることは労基法上要求されていないため代休日を与える場合も週1日や4週4休の週休制の要件(同35条)は関係ないのです。
 ここで注意が要るのは、事後振替の代休の場合は、これを与えても、当然には、割増分のみ支払えば良いということにはならず、1.35倍の割増賃金の支払義務を免れないということです。代休を与えた場合に35%の割増分のみで済ますためには代休取得の場合に関する賃金の精算規定を置く必要があります。例えば、「法定休日労働をして代休を取得した場合には35%の割増分のみを支払うものとする」などの定めです。
5.法定外休日の振替について
 以上述べてきたのは労基法上の法定休日の振替についてであり、会社が労基法の基準を上回って与えているいわゆる法定外休日については、労基法上の制限はなく、三六協定の締結、割増賃金の支払や、事前の振替の場合の4週間以内の振替などの必要はありません。又、振替の代休を与えるかどうかも労使で自由に決めることができます。しかし、法定外休日を振替えて労働させることがある旨の就業規則などの労働契約上の根拠が必要であることは法定休日の場合と同じです。

対応策

設問について、法定休日の場合を前提に改めてまとめると、就業規則の根拠に基く4週間以内の日に代休(振替休日)を与えた上で事前の振替がなされていればBに対し特に休日出勤手当などの支払の必要はありません。しかし、事後の振替(休日労働)により代休を与えた場合には、代休取得の場合には、代休取得の場合の割増賃金との精算に関する規定を置いておくか、個別の精算への同意を得ておかないと代休と1.35倍の休日出勤手当のダブルの負担となってしまうこととなります。

予防策

 既に触れた通り、事前にしろ事後にしろ休日の振替をするためには、これを根拠付ける就業規則などの定めが、そして代休による賃金の精算のためには、事後振替の代休取得と割増賃金に関する精算規定及び事後振替の場合の三六協定の締結などの諸規定の整備が必要です。そしてこの事前の振替による「振替休日」と事後振替の「代休」との区別を人事担当者に良く理解して貰っておくことも必要です。
 実際には、事前の振替の場合にも割増賃金を支払っている会社もあるようです。しかし、法定休日労働の割増賃金の割増率が35%に引上げられ、法定労働時間も週40時間とされている状況を踏まえますと、法定休日と法定外休日との割増率の取扱の区別と共にこの事前の休日振替の確実な運用は会社にとって重要となってくることは間違いないでしょう。

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