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休憩時間の電話番

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000年10月:掲載

休憩時間に電話番をさせていた従業員がその時間分の給料を請求してきたら?

建築会社のA社では、就業規則上「昼の休憩時間は12時から13時までとする」と定められていました。しかし、実際上は、営業部では昼時の顧客からの電話も逃がしてはならないと、6人のうち3人ずつが交替で30分間だけ自由に安める時間を与え、残りの30分は、ただ電話番をするだけだが職場で休憩することになっていました。ところが、最近、営業部の社員Bらが職場で昼休み電話番をさせられている時間についての賃金や損害賠償を請求してきました。A社は、この要求にどう対処すべきでしょうか。

慰籍料の支払いや、電話の頻度が高い場合には、賃金の支払いの必要もあります。

1.一せい休憩が旧労基法の原則
 旧労基法上の休憩時間は原則として事業場単位で一せいに与えられなければなりませんでした(同34条2項)。但し、例外として、運送、商店、金融等9種類の事業についてはこの制限はなく(同40条、旧労基則31条)、これら以外の事業では労基署長の許可を受けた場合のみ、休憩を交替で与えることができることになっていました(同34条2項但書)。
2.労使協定による一斉取得の免除
【1】一斉休憩の必要性が薄れた背景と労使協定による一斉取得の免除
 しかし、官公庁でさえ、交代で窓口業務を継続する今日、現行法が、経済情勢、とりわけ随時顧客の要求に対応を迫られる経済のサーヴィス化の実態から遊離していること、労務管理の個別化の進展、他方、労働者の側でも自律的に働くことを希望する労働者が増加していることなどを踏まえ、改正労基法は、労働者の過半数代表者等との労使協定より、一斉休暇付与義務を免除し、交代制休憩などを、労使協定により自由に決定できることとしました(34条【2】)。

【2】労使協定の内容
 この協定には、a一斉に休憩を与えない労働者の範囲、b労働者に対する休憩の与え方を定めなければなりません。但し、労働基準監督署への届出義務は規定されていません。

【3】従前の許可不用業種等の措置
 なお、既に適用除外の許可を受けている事業場については引き続き適用除外であり、改めて労使協定を締結する必要はありません。 勿論、休憩の付与時間や自由利用の原則に変更はありません。

3.企業の対応策-交替休憩等を義務付けるためには労使協定だけでなく就業規則の規定が必要
 又、前述の労使協定に関して述べたと同様に、ここでの労使協定自体も一斉休憩の付与義務の免除の効果を使用者に与えるに過ぎず、実際に、交代制の休憩を労働者に義務付けるには、別に、就業規則等で、例えば、下記の規定例のような書面協定の内容による就労義務を定める必要があります。
 労基法上の休憩時間は原則として事業場単位で一せいに与えられなければなりません(労基法34条2項)。しかし例外として、運送、商店、金融等9種類の事業についてはこの制限はなく(同40条、労基則31条)、右以外の事業でも労基署長の許可を受けると、休憩を交替で与えることができます(労基法34条2項但書)。A社は労基法8条3号の建築会社なので右例外業種でなかったため交替制の休憩が許されず、労基法34条2項但書の許可も取られていなかったので交替制休憩に代わるものとして設問のような電話当番制を取っていたのです。しかし、この許可は、休憩の自由利用が妨げられず、かつ、労働強化にわたることがないと認められる実態を備えている場合は与えられていて(昭和29・12・10基収6503)、A社でも許可取得の可能性はあります。
4.休憩時間とは
 ところで、労基法34条にいう「休憩時間」とは、「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」(昭和22・9・13基発17)とされているため、A社の就業規則の右規定の存在によって、労働契約上、A社は、「休憩時間を自由に利用させる債務」を負うことになります。Bらに30分間の「電話番」をさせることは、その分だけ使用者の契約違反(債務不履行)が成立するということになります(損害賠償請求権の発生)。
5.不完全な休憩には慰籍料も
 このような場合について、判例(住友化学事件・最三小判昭和54・11・13判タ402-64)は、いつ発生するか分からないフンケン現象に対処するため休憩時間中に電解炉の近くに見張りとして待機しなければならないとされていた労働者がこの見張り時間に対する賃金相当の賠償等を求めていた事件で、見張り労働に対する労働者の不利益は、拘束されていても完全に労務に服していた訳ではなく金銭に見積もることもできないという理由で、未払賃金相当の賠償を認めず、休憩時間なのに働かされたことに対する慰籍料(30万円)のみを認めるという態度をとっています。
6.労働時間になる場合は
 他方、この契約違反が、休憩時間であるべき時間に労働させたり、後述の手待時間のような状態においたことによる場合は、使用者によってその時間が労働時間として使用されたということとなり、それが法定時間外労働(労基37条)となる場合は、会社はその時間につき法所定の割増賃金支払義務があります。しかし、それが法定基準(同32条)内の労働にとどまる場合は、その時間について賃金を支払う必要があるかどうかはその会社の就業規則などにおける賃金計算上の定めによることになります(菅野和夫「労働法」第5版補正版257以下参照)。例えば、法定時間内の労働には所定労働時間を超過しても賃金を加算しない定めがあれば、所定労働時間が7時間の会社の場合1時間以内の休憩時間中の労働は休憩付与義務違反は別として、賃金には影響しないのです。

対応策

Bらの本来業務が電話番ではなく、昼休み中の電話もまばらで食事も取れるような場合には、右判例が適用され、休憩時間について電話番の拘束を30分与えたことに対する慰籍料をA社はBらに支払うべき義務があり得ます。昼休みの電話がむしろ普通以上に頻繁であり、昼食を取るどころではないような場合は、賃金支払義務を負担することもあります。後者のような場合は、労働から解放されていないことから、労働時間の中に含められるいわゆる手待時間とされることもあります。例えば、裁判所は、客がいないことを見計って適宜休憩しているような場合は、労働時間としての手待時間と見ています(すし処「杉」事件・大阪地判昭和56・3・24労経速1091-3)。

予防策

 A社のような場合、先ず、前述のような労基法34条2項但書の一せい休憩の適用除外の許可を取り、正式に交替制の昼休みを取り、顧客に対応するように就業規則の改正等により制度を整備すべきです。
 一せい休憩の除外許可が取れないような場合やこれを求めたくない場合には、会社の負担を減らすため、就業規則や賃金規程等を整備し、1日8時間の法定労働時間の範囲内においては、昼休み中の電話番などによる労働時間の延長があり得ることを明確にし、その分については賃金の加算を行わないことを明文化するか、電話番という軽易な作業に対応する通常の時間単価より低い(但し、最賃法以下はダメ)賃金の定めを置き、その単価による支払いにより処理することです。

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