法律Q&A

分類:

労使委員会制度の活用範囲

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2007年1月補正:掲載

労使委員会制度はどのように活用できますか?

改正労基法で新設された労使委員会制度は、新裁量労働制の導入の条件だけではなく、その他にも色々な活用範囲があると聞きました。具体的にどんな場合に利用でき、活用にはどんな点に注意したら良いですか。

回答ポイント

 労基法は、労使委員会の決議に対して、単に企画業務型裁量労働制の手続要件としての機能だけではなく、労基法上の36協定を始とする様々な事業場労使協定への代替効力を認めていますので、これらの協定に代えて、同委員会の決議で代用することができます。但し、労働組合がない職場においては、経営者としては、労使委員会が、当初の意図に拘らず、労働組合的なものに変化していく可能性は十分に把握しておく必要があるでしょう。
解説
1.労基法38条の4の労使委員会
 別に詳述している通り(労働時間・休憩・休日[基礎編]Q6、労働協約・労使委員会決議・労使協定・就業規則[基礎編]Q2)、労基法は、従来の専門業務型裁量労働制(38条の3)に加えて、企画業務型裁量労働制を平成12年 4月から施行するに当たり、その導入要件として、以下の条件を満たす労使委員会(以下、労使委員会といいます)の設置を求めています(38条の4第1 項)。労基法は、平成15年改正により、その運営方法について、委員会設置のとどで廃止や決議要件の全員一致から5分の4以上の多数への変更、労側委員の過半数代表者から指名後の信認を得る手続きの廃止、委員会での決議の有効期間の3年への延長などで規制を相当緩和しました。しかし、現在でも、委員の半数は労働者の過半数代表者が指名する者とすること、同委員会議事録の作成、保存、労働者への周知、同委員会の運営に関する指針の作成・公表、使用者の労使委員会での運営状況の内、健康確保措置の実施譲状況に関する労働基準監督署への報告義務等につき詳細な規制を定めています(38条の4第2項乃至第4項)。
2.労使委員会決議の事業場労使協定代替効力
 労基法は、労使委員会に対して、単に上記の企画業務型裁量労働制の手続要件としての機能を期待するのではなく、その委員会決議に、以下のように労基法上の様々な事業場労使協定への代替効力を認めています(以下につき、菅野和夫「労働法」第7版補正版74頁以下参照)。即ち、1ヶ月以内の期間の変形労働時間制(32条の2第1項)、フレックス・タイム制(32条の3)、1年以内の期間の変形労働時間制等(32条の4第1項、2項)、1週間単位の変形労働時間制(32条の5第1項)、一斉休憩の適用除外(34条2項)、時間外・休日労働(36条)、事業場外労働のみなし労働時間(38条の2第2項)、専門業務型裁量労働制(38条の3第1項)、年次有給休暇の計画化等(39条5 項、6項)などについて必要とされている事業場の労使協定(又は過半数労働者代表の同意)については、労使委員会の決議で代えることができます。これらの決議の内、時間外・休日労働に関するいわゆる36協定だけは、労使協定と同様に所轄の労働基準監督署に届出が必要とされています(38条の4第5項)。なお、これらの労使委員会での決議は、労働者側委員が委員会に参加していても、使用書の義務として、労使協定と同様に労働者へ周知されなければなりません(106条)。
3.労使委員会への対応における実務上の注意点
 以上のように、労使委員会は、労働者過半数代表者の指名する者が半数の委員会で、その場で企画業務型裁量労働制のみならず、当該事業場の賃金、労働時間その他労働条件に関する事項を調査審議し意見を事業主に述べることを目的とする委員会のみならず(労基法38条の4第1項前文)、そこでの決議が上記2の労使協定代替効力を持つ大きな権限を持つ制度です。言ってみれば企業と職場の従業員代表との労働条件に関する労使協議会的役割を持っているものです。その企業がもともと労働組合を持っている企業であれば、それは従前の労使協議会の延長のようなもので、さして新たな問題ではないでしょうが、労働組合がない職場においては、この労使委員会が、労働組合に発展していくような、鬼っ子的な展開を示す危険は十分に把握しておく必要があるでしょう。従って、企業としては、労使委員会導入のこの副作用・危険を十分に吟味し、最悪の事態への準備をした上でなければこの制度の導入を軽率に実行するのは回避すべきでしょう(拙著「改正労働法への対応と就業規則改訂の実務」127頁)。

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