法律Q&A

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突発的な深夜勤務で、午前0時以降働いた当日の所定時間における年休取得

弁護士 竹花 元(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2011年09月:掲載

突発的な深夜勤務で午前0時以降に働いた場合、その日の始業時刻以降を年休とできるか

先日、突発的な業務に対応するため、ある社員が、終業時刻後も継続勤務し、午前0時をまたぎ午前4時まで深夜勤務を行いました。帰宅後、体調を崩したとのことで、所定始業時刻(午前9時)には出勤できず、自宅から電話で、同日に対する年休の申請がありました(規定上、取得申請は前日の終業時までとしています)。そもそもこの日の深夜(早朝4時まで)に勤務しているわけですが、申請を受理してよいでしょうか。急な勤務指示に対応してもらったので、なるべく同人に不利にならない取り扱いとしたく、妥当な対応方法も併せてご教示ください。

時間単位年休を除き、年休は「暦日」単位による付与が原則であり、本件で年休を取得したとして扱うことはできない。対応としては、会社が賃金を100%支給する「特別休暇」の付与などが考えられる

1.回答に当たって
 ご質問のケースは、午前0時を越える深夜勤務をした場合の「労働日」と「年休の付与単位」の考え方が論点となります。そこで、お尋ねにもあるとおり、まずはこの点につき整理し、そもそも同日において年休が成立し得るかどうか検討することにしましょう。
2.深夜0時をまたぐ継続勤務が行われた場合の「労働日」の考え方
①継続勤務が2暦日にわたるケースでは、「一勤務」として扱われる
 一般に、1日とは、午前0時から午後12時(24時)までの暦日をいいます。しかし、当日の勤務が翌日の午前0時を越えた場合のように、継続勤務が2暦日にわたるケースでは、たとえ暦日を異にするときでも、「一勤務」として取り扱います(昭63・1・1 基発1・婦発1)。すなわち、午前0時を区切りとするのではなく、そのまま前日から引き続いてカウントし、午前0時を越えて行われた勤務も、前日の始業時刻の属する日になされた「1日」の労働となるわけです。

②年休は「暦日」単位での付与が原則
 一方で、年休については、時間単位年休の場合を除き、原則として暦日ベースで付与するものと解されています。行政通達でも、「法第39条の『労働日』は原則として暦日計算によるべきものである...」(昭26・9・26 基収3964、昭63・3・14 基発150)としています。
 お尋ねでは、通常の日勤(にっきん)者の勤務が、時間外労働によって翌日の午前4時にまで及んだとのことで、この場合、翌日の勤務を免除すれば、一労働日の年休を付与したことになるかどうかが問題となります。この点、その労働者は、翌日の一部(午前0~4時まで)をすでに勤務していることから、暦による一労働日単位の休息が与えられたことにはならず、したがって、年休を与えたことにはならないと考えられます(厚生労働省労働基準局編『平成22年版 労働基準法・上【労働法コンメンタール3】』〔労務行政〕596頁)。
 したがって、お尋ねにある「午前0時以降働いた当日」については、1日単位の年休が成立したとはいえないでしょう。

対応策

以上のとおり、本ケースでは、法律上、 1日単位の年休を取得したものとして扱うことはできません(労働者から「年休として処理してほしい」と求められても避けるべきです)。また、翌労働日を稼動していないので、半日単位の年休や時間単位年休(平成20年労基法改正。労使協定が必要)として扱うこともできません。一方で、貴社としては、「急な勤務指示に対応してもらったので、なるべく同人に不利にならない取り扱い」を検討されていることから、例えば、同日の賃金を100%支給する「特別休暇」を付与することなどが考えられます。そのうえで、年休付与における出勤率算定の基礎となる「出勤日」に含めるなど、賃金以外の取り扱いについても、年休取得の場合に準じて取り扱うこととすれば、本人の理解も得やすいと思われます。

予防策

 今回の検討内容とは直接関係ありませんが、ご質問の労働者のように、当日になって年休の取得を申請(時季指定)してくるケースが、実務では多くみられます。最後に、こうした年休の事後申請への対応(年休の振り替え)について、付記しておきます。
 「年休の振り替え」とは、所定の(事前の)期間内ではなく、当日の始業時刻後などになされた場合でも、事後的に取得を認める(=本来労働日になるであろう当日と年休を振り替える)取り扱いを言います。
 例えば、不意の体調不良により出社できず、通常なら欠勤扱いとなる場合、賃金の控除や勤務成績への影響等の不利益を避けるには、一般に、同日を年休に振り替えたほうが、労働者にとって有利です。裁判例も、労働者の求めに応じ、使用者が人事管理上の配慮から年休の振り替えを行うことを認めており(電気化学工業青海工場事件・新潟地判昭37・3・30 労働関係民事裁判例集13巻2号327頁)、実務上も、労働者の求めに応じて、会社が任意・個別的に、年休の振り替えを認めることは自由であると考えられています(ただし、労働者が振り替えを求める権利まではないと考えられます)。
 ただし、こうした事後申請が、さしたる吟味もなく無原則に認められるようになり、慣行化・通例化すると、同取り扱いが労使慣行となり、労働契約の内容となる結果、会社として年休の振り替えを拒否できなくなる場合があり得ます。年休の取得申請ルールは、就業規則の定めどおり徹底しておくことが重要です。そのうえで、事後申請について認める場合/認めない場合を規定・明文化しておくか、あるいは少なくとも、合理的な判断基準に基づき、個別事案ごとに検討することが求められるでしょう。

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