法律Q&A

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アルバイト、パートタイマーの雇止め

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2007年2月:掲載

期間雇用のパートタイマーが、長期間の雇用の後に契約 更新をされなかった場合、救済を求めることができますか?

ソフトウエア・ハウスのA社では、デモンストレーション用のコンパニオンを兼ねて、学生アルバイトBを使っていました。その方法は、学業に差し障りのない出勤可能日を毎月所定の用紙に記入してA社に登録させて、会社の他の学生アルバイトの登録日と調整の上出勤日を決めて勤務させていました。ところが、コンピューター関係業界の不況の深刻化で、デモンストレーションの機会も減り、大学1年の時から丸3年余りも働いていたBに対してもアルバイト契約の更新をすることができないと申し入れてきました。BはA社に対して更新を求められないのでしょうか。

回答ポイント

 更新拒絶の合理的理由がなければ更新を求められる可能性はあります。少なくとも1ヶ月の予告又は予告手続や、雇止めの理由の文書による開示請求ができ、これにA社が応じない場合には労働局等の指導を求めることもできる場合があります。
解説
1.常用的な場合には合理的な理由が必要
 労動契約に期間の定めのない正規従業員(本工)などと異なって、期間の定めのある、臨時工、パートタイマー、アルバイト、契約社員などの非正規従業員との間の労働契約について、これを期間満了などにより終了(雇止め)した場合の問題については、裁判所は、基本的には、常用的な臨時労働者に対するa.最高裁の東芝柳町工場事件・判決最一小判昭和49・7・22民集28巻5 -927と、日立メディコ事件・最一小判昭和61・12・4労判486-6の考え方を適用していると見て良いようです。前者の判決は、期間が定められていても、特別の事情がない限り反覆更新され、実質上期間の定めのない契約と異ならない状態に至っている常用的臨時労働者の場合は、雇止めを行なう際に、正規従業員に対して適用されている「解雇権濫用の法理」(社会通念上是認できる合理的理由がないと解雇権の濫用となり解雇が無効となるとする原則)を適用して、「余剰人員の発生等従来の取扱い(反覆更新)を変更してもやむを得ないと認められる特別の事情」がなければ雇止めできない、としたものであり、後者の判決は、臨時的作業ではなく恒常的な作業に従事している場合はある程度の雇用継続が期待されているとみなされるとしたものです(その他、b.平安閣事件・最二小判昭和62・10・16労判506-13も同旨)。
2.裁判所は雇用実態に応じて判断
 しかし裁判所は右a.の判決を機械的に適用することなく、各々の非正規従業員の雇用の実態に即して、ケースバイケースで雇止めの効力を判断し、この判決を適用又は準用し、時にはその適用を排除しています。(最近の判例の分析については、平成12年9月11日厚生労働省発表「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告(座長筑波大教授山川隆一)」参照。例えば、次のような臨時的性格の強い従業員の場合、c.国際自動車事件・東京地判昭和49・12・23判時771-84では、質問のような雇われ方の観光バスの学生アルバイトのガイドについては、学生の出勤可能日を記載した勤務割表の提出による申込みを会社が承諾することによって初めてその1ヵ月を期間とする雇用契約がその都度締結されることになっていたとして、雇用契約がそのような手順を経て成立していない以上、雇用関係は右期間の満了により当然終了したとされ、d.鉄道整備事件・東京地判昭和52・12・21判時892-103では、定年後再雇用の臨時職員の雇止めが有効とされています。

 他方で、e.光文社事件・東京地判昭和47・4・4労判151-38では、自動更新規定をもって期間を6ヵ月として、1ないし6回の更新を経てきた学生アルバイトに対する更新拒絶が合理的な必要性がなく許されないとされ、f.朝日放送事件・大阪地判昭和50・3.・7労判222-55では、雇用期間を 6ヵ月とし、3回を超えては更新しないとの就業規則の下にある女子常勤アルバイトについて、雇止めは実質上若年定年制であり、解雇権濫用の法理が適用されるとしています。なお、期間の定めのないパートタイマーの解雇については解雇権濫用の法理が適用されています(g.春風堂事件・東京地判昭和42・12・ 19判時503-18)。
3.正規従業員より緩やかな合理性の判断
 以上の裁判所の判断は、文字通りケースバイケースで一貫はしていないようにも見えますが、一つの流れは読み取れます。つまり、ごく短期で更新も一定範囲でしか予定されていない臨時性の強いアルバイトやパートタイマーを除いて、更新拒絶するには一定の合理的な理由を必要としているのです。しかし、既に、a.の判決でも触れていたように、これらの非正規従業員は、正規従業員と比較すると、企業との結び付きが薄く、会社からは経済変動による雇用調整の役割を果たすことが期待され、雇われる側も、長期間の正規従業員としての雇用を嫌うなどある程度企業の右のような意向を前提として雇用されている現実を踏まえ、例えば、正規従業員に先立っての整理解雇の効力を広く認めるなどその合理性の程度を正規従業員の場合に比べて緩やかに解釈して具体的な問題を解決しているのです。このような処理により緩やかに雇止めが有効とされた例は少くありません(h.日立メディコ事件・前掲最一小判昭和61・12・4労判486-6、i. 安田火災海上保険事件・福岡地小倉支判平成4・1・14労判604-17、j.大阪郵便輸送事件・大阪地決平成4・3・31労判611-32、k.国鉄大阪工事局事件・最三小判平成4・10・20労判617-19、カンタス航空事件・東京地判平成12・3・30 労判784-18等)。しかし、準社員的なパートタイマーの雇止めの場合には一定の解雇回避努力義務があるとする例もあります(三洋電機事件・大阪地判平成3・10・22労判595-91、丸子警報器事件・東京高裁平成11・3・31労判758-7)。

 以上を要約すると、更新拒絶に有効性の存否は、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などが考慮されています(菅野和夫「労働法」第7版補正版171頁以下、拙著「実務 労働法講義」上巻134頁以下参照)。「進学ゼミナール予備校事件」(最三小判平成 3・6・18労判590-6)も、次のような基準を提示した原審(大阪高判平成2・11・15労判590-10)を支持しています。即ち、「雇止めの効力の判断に当たっては、当該臨時従業員の従事する仕事の種類、内容、勤務の形態、採用に際しての雇用契約の期間等についての雇主側の説明、契約更新時の新契約締結の形式的手続の有無、契約更新の回数、同様の地位にある他の労働者の継続雇用の有無等に鑑み、期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態で存在しており、あるいは、そのように認めうるほどの事情はないとしても、少なくとも労働者が期間満了後の雇用の継続を期待することに合理性が認められる場合には、解雇に関する法理を類進適用すべきである。」 、と。
4 新たな裁判例の胎動
 ただし近時、裁判例において新たな傾向として注目されているのが、期間雇用労働者たる派遣労働者の更新拒絶につき、派遣労働の構造的性格から「原告の雇用継統に対する期待は,派遣法の趣旨に照らして,合理性を有さず,保護すべきものとはいえないと解される。」としてそれを有効とした、いよぎんスタッフサービス事件・松山地判平成 15・5・22労判856-45及び同旨のマイスタッフ(一橋出版)事件・東京地判平成17・7・25労判900-32です。

 また、日本ヒルトンホテル(本訴)事件・最一小決平成17・5・16労判892-98も、本件労働条件の合理性、組合との交渉経緯、正社員組合の同意のほか、上告人らが正社員となることを希望せず、本件異議留保付き承諾は被上告人の変更後の条件による雇用更新申込を拒絶したのであり、それにも拘わらず、被上告人に上告人らの雇用継続の期待権を保護するために雇用契約の締結を義務付けるのは、継続的に社会経営の合理化や経費削減を図っていかなければならない被上告人にとって酷であるなどの事情から、本件雇い止めには合理的理由があり有効とした2審判決(東京高判平成14・11・26労判843-20)を維持しました。同2審判決は、「異議留保付き承諾」を「雇用更新申込を拒絶したのであり、それにも拘わらず、被上告人に上告人らの雇用継続の期待権を保護するために雇用契約の締結を義務付けるのは、継続的に社会経営の合理化や経費削減を図っていかなければならない被上告人にとって酷であるなどの事情から、本件雇い止めには合理的理由があり有効とした。」点は、異動の際に、いわゆる異議をとどめての就労などの場合にも適用されると問題となるでしょう。以上の他にも、ジェイアール西日本メンテック事件・大阪地判平成16・3・12労経速1877-3-9、近畿コカ・コーラボトリング事件・大阪地判平成17・1・ 13労判893-150、清和ウエックス事件・大阪地判平成17.5.13労経速1906-24など、最近では、非常に厳格な条件を付した上で結論としては更新拒絶を認めるという例も散見されます。
5 一定期間以上雇用した者に対する更新拒絶の予告義務(労基法による雇止め基準)
 なお、平成15年改正労基法で定められた有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準を定める告示(平成15年厚生労働省告示第357号。以下「雇止めに関する基準」という。)は、有期労働契約の更新拒絶につき、以下の基準を定めており、その遵守が求められています。これらへの違反が直ちに裁判所での更新拒絶無効との判断を招くものではありませんが、かかる判断を招く可能性を高めることは明らかです。

対応策

設問の場合、右c.の判例に従えば、期間満了により雇用契約を終了させられることも止むを得ないものと考えられます。又、右h.ないしk.などの判例に見られる、非正規従業員への雇止め合理性の緩やかな判断基準によっても、ソフト業界の不況対策による整理解雇として、その雇止めは有効と考えられます。しかしBに対する雇止めの実施に当っては、右判例や雇止め基準に従い、最低限雇止めの30日以上前に事情を説明した上退職を促し、その上で予告を行うことが必要(退職・解雇・退職金[実務編]Q4参照)、上記回答の通り、更新拒絶の合理的理由がなければ更新を求められる可能性はあります。少なくとも1ヶ月の予告又は予告手続や、雇止めの理由の文書による開示請求ができ、これにA社が応じない場合には労働局等の指導を求めることもできる場合があります。

予防策

多くの企業で行なわれている方法としては、パートタイマーの就業規則などの整備(パート・派遣・契約社員[実務編]Q1参照)、各雇用期間ごとに、1ヵ月弱程度の空白期間を置いたり、更新回数の限定や、定年制を設けたりすることがあります。又、更新に一定の条件(例えば、医師国家試験、司法試験、公認会計士の受験生をアルバイトとしてながら一般の正規従業員と比較して特別待遇で使用している場合などで、一定の受験回数を限度とするなど)を設定することも工夫されています(研修期間の成績に応じて六次にわたる更新をなす損害保険会社の「代理店研修生」制度の例として安田火災海上保険事件・福岡地判平成4・ 1・ 14労判604-17、生命保険の営業職員につき、6ヶ月以内の一定の成績基準による契約関係の変更とその後の成績不良を理由とする解嘱が有効とされた例として、第一生命保険事件・東京地判平成12・2・25労判783-64等参照)。しかし基本的には色々な手続きをとっても、反覆更新している場合には恣意的な雇止めは許されないとされることが予想され、企業側としては確実な雇止めをする場合の予告などの手続と雇止めをする場合の理由を明確化できる態勢をとっておくこと、労働者側にとってはそのような手続の順守や明確な更新拒絶の理由の開示を求めたりする事が必要でしょう(雇止め基準参照)。

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