法律Q&A

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派遣労働者3年使用後の雇用義務

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2001年2月再補正:掲載(再々補正 社会保険労務士 村上 理恵子2008年6月:掲載)

派遣社員を3年間受け入れたのち、新たな労働者を雇用しようとするときには、当該の派遣社員を優先して採用しなければなりませんか?

冒頭の質問のような取扱いは、派遣労働者の行う業種によって違うのでしょうか?

回答ポイント

26専門業務等では、3年間当該業務に継続して従事していた派遣労働者に対しての雇入れ申込み義務があります。それ以外の業務については、当該派遣労働者が3年間継続して当該業務委に従事していなくても、当該業務に派遣期間3年を経過して派遣労働を継続していた場合、当該部署で新たな労働者を雇用しようとしていたか否かに拘わらず、当該派遣労働者に対する雇入れ勧告を受け、これに従わない場合には、企業名の公表等の制裁もあります。
解説
1.労働者派遣法の改正による業務制限の撤廃
(1)旧派遣法の適用対象業務
 最初に、派遣法の対象となる業務には、平成11年の改正までは、制約があり、当初労働者派遣事業を行うことができる「適用対象業務」は、26の専門的業務、高齢・育児介護特例派遣事業に限られていました(以下は、主に、厚生労働省ホームページ掲載の「労働者派遣事業業務取扱要領)<以下、要領といいます>、菅野和夫「労働法」第8版200頁以下等参照)。

(2)従前の適用対象業務
 政令により労働者派遣事業を営むことのできる業務は、当初13業務でしたが、後に26業務に拡大され(旧派遣令2条)、その後、高齢・育児介護特例派遣事業が追加されましたが、平成11年の改正により原則自由化となり、業務の限定については、前述の通り、同改正で原則廃止となりました(ネガティヴ・リスト方式への転換)。

(3)労働者派遣法の改正による業務制限の撤廃(いわゆるネガティヴ・リスト方式化)と撤廃範囲の拡大
 派遣法によれば、平成15年の改正と政省令の平成17年改正を経て、いわゆるメーカー派遣が下記の制限付で解禁され、現在のところ禁止されているのは、 a.港湾運送業務、b.建設業務、c.警備業務及びd.紹介予定派遣以外の病院等における医療関係の業務(医師、看護婦の業務などです)が派遣禁止業務です。ただし、d.についても、下記の通り、段階的に制限が撤廃されています。

[1]物の製造の業務への労働者派遣事業の拡大
a.物の製造の業務について、労働者派遣事業を行うことができるものとされました(派遣法附則4、5項)。
b.物の製造の業務について労働者派遣事業を行う事業所については、当分の間、その旨を許可申請書及び届出書に記載する等しなければなりません(同4項)。
c.平成19年2月末日までの間は、物の製造の業務に係る派遣期間を1年と制限されていました(同附則5項)。しかし、既に、平成19年3月1日からは、製造業務での派遣受入期間は3年となっていますが、一定の手続きを経ることによって、実質的に平成18年3月1日から最大3年まで派遣受入れが可能となっていました。

[2]医業等での社会福祉施設等での解禁
同様に、既に、医業等の内社会福祉施設等については、平成15年3月28日から(派遣令2条1号、派遣則1条)、さらに、前述の通り、医療業務への紹介予定派遣による派遣の解禁範囲の拡大が平成16年3月1日から、さらに、平成18年4月1日から、労働者派遣法施行令が改正され、以下の場合については労働者派遣が認められることとなっています。 a.医療関連業務に従事する者のうち、産前産後休業(産前6週間及び産後8週間)、育児休業(子が1歳に達するまでの間、その他育児休業に継続する休業であって母性保護又は子の養育をするためのもの)介護休業(通算93日、その他介護休業に後続する休業であって対象家族を介護するためにする休業)中の労働者の業務 b.へき地(離島、山村、過疎地域などで、法により規定・指定された地域を有する市町村)において行われる医業育児介護休業対応への派遣等への拡大が施行されています。

2.26専門業務以外の業務についての過半数代表者の意見聴取を経た派遣期間の3年内の延長の認容と雇入れ申込み義務をめぐる問題・派遣業務の期間制限の具体的意義
(1)26専門業務以外の派遣業務についての過半数代表者の意見聴取を経た派遣期間の3年内の延長の認容
26専門業務以外の派遣業務については、当初、派遣先が同一業務について派遣労働者を受け入れる期間の上限を1年に制限していましたが、平成15年の改正法により、後述の条件付ですが、個別事業場ごとに3年まで受入れ可能になりました(派遣法2条)。1年~3年の期間については、臨時的・一時的と判断できる期間は、派遣先の事業の状況等によって異なるものとみられることから、1年を超えても臨時的・一時的と考えられる期間であると判断できるかどうかは、個別事業所ごとに、派遣先の事業主が判断することとし、派遣先事業主は派遣先事業場の労働者の過半数代表の意見を聴いて定めることになりました(派遣法40 条の2)。即ち、派遣法では、「派遣可能期間」として、イ)「派遣先は、その事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(派遣期間に制限がない業務を除く。)について、派遣元事業主から1年を超え3年以内の期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、あらかじめ、その期間を定めなければならない。」(派遣法40条の2第3項)、ロ)「派遣先は、イの期間を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、派遣先の事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合に対し、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に対し、当該期間を通知し、その意見を聴くものとする。」とされました(同4項)。なお、この意見聴取の手続は、派遣先の事業主が自ら臨時的・一時的と考えられる期間を判断するに当たり、あくまでも現場の実情等を的確に把握するために、労働者の過半数代表の意見を聴くという性格を有するものです。 なお、延長された派遣期間は、派遣労働者を取り替えたり、派遣元事業主を取り替えても通算されます(40条の2第1項)。 しかし、改正派遣法では、従来の1年の期間制限が見直され、労働者の意見聴取等の条件付ではありますが、個別事業場ごとに3年まで受入れ可能になりました。

[1]同一業務の意味
同一業務の意味について、派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号。最終改正平成19年厚生労働省告示第301号)。以下、派遣先指針といいます)は次のような判断基準を示しています。即ち、「派遣先は、法第40条の2の規定に基づき常用労働者の派遣労働者による代替の防止の確保を図るため、次に掲げる基準に従い、事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から一年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないものとすること。/(1)事業所その他派遣就業の場所については、課、部、事業所全体等、場所的に他の部署と独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断するものとすること。」と。

[2]業務の最小単位の考え方
業務の最小単位の考え方についても、次のような判断基準を示しています。即ち、「(2)同一の業務については、労働者派遣契約を更新して引き続き当該労働者派遣契約に定める業務に従事する場合は同一の業務に当たること。上記のほか、派遣先における組織の最小単位において行われる業務は、同一の業務であるとみなすこと。なお、この場合における最小単位の組織としては、業務の内容について指示を行う権限を有する者とその者の指揮を受けて業務を遂行する者とのまとまりのうち最小単位のものをいい、係又は班のほか、課、グループ等が該当する場合もあり、名称にとらわれることなく実態により判断すべきものとすること。ただし、派遣労働者の受入れに伴い係、班等を形式的に分ける場合、労働者数の多いこと等に伴う管理上の理由により係、班等を分けている場合又は、係、班等の部署を設けていない場合であっても就業の実態等から最小単位の組織に該当すると認められる組織において行われる業務については、同一の業務であるとみなすこと。偽りその他不正の行為により労働者派遣の役務の提供を受けている又は受けていた係、班等の名称を変更し、又は組織変更を行う等、従来の係、班等とは異なる係、班等に新たに労働者派遣の役務の提供を受け、又は受けようとする場合には、同一の業務について労働者派遣の役務の提供を受け、又は受けようとしているものと判断すること。その他法第40条の2の規定に照らし、就業の実態等に即して同一の業務であるか否かを判断すること。」と。

[3]ク-リング期間による再派遣の許容
但し、指針は、以下のようにクーリング期間による再派遣を許容しています。即ち、「(3)労働者派遣の役務の提供を受けていた派遣先が新たに労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、当該新たな労働者派遣の開始と当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣の終了との間の期間が3月を超えない場合には、当該派遣先は、当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣から継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなすこと。」と。

(2)26専門業務以外の派遣業務について派遣期間の制限を超えて当該派遣労働者を使用しようとする場合の雇用契約の申込み
派遣先は、26専門業務以外の派遣業務について、派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日以降継続して当該通知を受けた当該派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、派遣先に雇用されることを希望する当該派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければなりません(派遣法40条の4)。

(3)26専門業務以外の派遣業務について派遣期間の制限を超えて当該派遣労働者を使用した場合の雇入れ勧告
さらに、26専門業務以外の派遣業務について派遣期間の制限を超えて当該派遣労働者を使用してしまった場合はより強い規制があります。この場合は、厚生労働大臣は、派遣先に対し、派遣法48条1項の規定による指導又は助言をしたにもかかわらず、その者がなお当該期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けている場合には、派遣先に対し、当該派遣就業を是正するために必要な措置をとるべきことを勧告することができます(派遣法49条の2第1項)。また、厚生労働大臣は、派遣先が、派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けており、かつ、当該労働者派遣の役務の提供に係る派遣労働者が当該派遣先に雇用されることを希望している場合には、当該派遣先に対し、派遣法48条1項の規定により指導又は助言をしたにもかかわらず、当該派遣先がこれに従わなかったときは、当該派遣先に対し、当該派遣労働者を雇い入れるよう勧告することができることになっています(派遣法49条の2第2項)。厚生労働大臣はこれらの勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることになっています(派遣法49条の2 第3項)。 注意を要するのは、この場合に限って、「派遣労働者を雇い入れるように指導又は助言、勧告する際には、当該派遣労働者の希望による場合を除き、期間の定めなき雇用によるよう指導又は助言、勧告する」とされている点です(業務取扱要領第9の4(7))。

(4)26専門業務以外における派遣期間の制限を超えた以降労働者を雇用しようとする場合の雇入れ努力義務
なお、従前と同様の雇入れ努力義務が残っていることに注意が要ります。即ち、同40条の3「派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(前条第1項に各号に掲げる業務を除く)ついて派遣元事業主から継続して1年以上前条第1項の派遣可能期間以内の期間労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該労働者派遣の役務の提供を受けた期間(以下この条において「派遣実施期間」という。)が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の業務に派遣実施期間継続して従事した継続して1年間従事した派遣労働者であつて次の各号に適合するものを、遅滞なく、雇い入れるように努めなければならない。一 派遣実施期間が経過した日までに、当該派遣先に雇用されて当該同一の業務に従事することを希望する旨を当該派遣先に申し出たこと。二 派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に当該派遣元事業主との雇用関係が終了したこと。」とされており、この点の解釈運用は従前と変わらないものと解される(要領参照)。但し、この場合には、公表制度等の対象となっていません(同49条の2)。

(5)期間制限の適用除外
以上の期間制限は、a.従前からの26の専門的業務、b.有期プロジェクト業務(事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務で一定期間以内に完了することが予定される業務)、c.産前・産後休業および育児休業等を取得する場合の代替要員としての業務については、適用されません(40条の2第1 項)。

(6)26専門的業務について3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている場合の雇用契約の申込み
派遣先は26専門業務等の派遣期間に制限がない業務に関し、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者を受け入れている場合において、当該同一の業務に当該3年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければなりません(派遣法40条の5)。なお、上記の申込みについては、あくまで、「当該同一の業務に当該3年が経過した日以後労働者を雇い入れようとする」場合にこの申込み義務が発生するのであって、派遣を継続する限りは、ここでの申し込み義務があるわけではありません。同様の趣旨から、26業務等については、3年経過時の義務があるだけで、上記1年経過時の雇い入れ努力義務の対象とはなっていません(派遣法40条の3本文)。

3.直接の雇用契約申込み等の意義-申し込む労働条件の内容・時期等
なお、従前も同様に解釈されていましたが、前述の3年経過前の直接の雇用契約申込みや雇い入れ努力義務の意義については、派遣先企業に求められているのは単なる"直接雇用"であり、必ずしも正社員や同一乃至類似の業務に関与している他の直接雇用労働者と同一の労働条件でとして雇用することを求められているわけではないということです。つまり、直接雇用である限り、いわゆるアルバイトや契約社員等の非典型雇用で採用するということでも理論的には差し支えないものです。また、業務取扱要領によれば、26業務等において雇い入れ業務が生ずる場合にて、その対象人数が雇い入れ人数を超えている場合には、対象労働者全員に応募の機会を与えたうえで、試験等の公平な方法により雇用契約の申込みを行なう労働者の中から選考することで差し支えない、とされています。しかし、業務取扱要領は、26専門業務か否かを問わず、「申込み義務に係る派遣労働者の労働条件は、当事者間で決定されるべきものであるが、派遣先と派遣労働者との間で、派遣就業中の労働条件や、その業務に従事している派遣先の労働者の労働条件等を総合的に勘案して決定されることが求められる。」として、期間の定めのない雇用を指導したりすることがあります。なお、業務取扱要領によれば、雇用契約の申込みは、26専門業務以外では、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の前日までに、任意の方法により行うことが必要とされています。
4.募集対象者確定の時期に関する問題
更に、厚生労働省の見解では、「同一の業務への同一の派遣労働者の受入れが3年を超えることとなる日より前に募集・採用を行う場合であっても、雇用契約の申込み義務の対象となりますか?」との問いに対する回答において、「A 同一の業務への同一の派遣労働者の受入れが3年を超える日以降に雇用関係が開始される場合は、雇用契約の申込み義務の対象となります。例えば、平成20年1月1日に同一の派遣労働者の受入れが3年を超えることとなる業務に、平成20年4月1日から労働者を雇用する場合には、当該業務に係る労働者の募集・採用活動を平成19年度中に行う場合であっても、派遣労働者への雇用契約の申込みが必要です。」、と解されていることに留意する必要があります。
5.違反に係る勧告及び公表
厚生労働大臣は、前述の各雇用契約の申込み義務に違反している者に対し、指導又は助言をした場合において、その者がなお同義務に違反しており、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該者に対し、雇用契約の申込みをすべきことを勧告することができるものとし、これに従わなかったときは、その旨を公表することができるとされています(同49条の2)。しかし、前述の雇い入れ努力義務違反の場合には、これらの制裁等は及ばないことになっています。

対応策

以上の次第で、26の専門的業務では、3年間当該業務に継続して従事していた派遣労働者に対しての雇入れ申込み義務があります。それ以外の業務については、当該派遣労働者が3年間継続して当該業務委に従事していなくても、当該業務に派遣期間3年を経過して派遣労働を継続していた場合、当該部署で新たな労働者を雇用しようとしていたか否かに拘わらず、当該派遣労働者に対する雇入れ勧告を受け、これに従わない場合には、企業名の公表等の制裁もあります。

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