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反復更新された有期労働契約と雇い止めの問題

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2006年12月再補正:掲載(再々補正 社会保険労務士 村上 理恵子2008年6月:掲載)

最近、反復更新した準正社員的な有期労働契約の場合でも、更新拒絶が有効とされることがあると聞きましたが、裁判所の考えに変化があるのでしょうか?

A社では、業況の悪化に伴い、人員の削減に入らざるを得なくなりました。そこで、正社員の削減の前に期間を定めて契約しているアルバイト、パートタイマー、契約社員などの非正規雇用労働者から削減をはじめようと計画しています。しかし、これらの非正規社員も期間の定めがあるといってもほとんどの削減対象者Bらは更新を繰り返し、勤続期間も数年以上に及んでいます。そのため、専門家に聞いたところでは、このような場合、期間の定めがあるといっても期間満了を理由として更新を拒絶することは困難と言われました。でも、新聞などで、最近、反復更新した有期労働契約の場合でも、更新拒絶が裁判所で有効とされることがあると聞きましたが、裁判所の考えに変化があるのでしょうか?

回答ポイント

確かに、少なくとも、東京地裁労働部などにおいて、従前に比較すると更新拒絶を有効とする範囲を拡大するかのような動きが感じられることは事実です。しかし、それらは、理論的な変化ではなく事案の相違によって説明可能な部分も少なくなく、未だ、高裁段階でのこの動きへの大きな変化はない状況下で、更新拒絶の自由拡大の動きに過大な期待や危惧を持つのは危険です。少なくとも紛争の回避・拡大防止の観点からは、企業における質問のような非正規労働者への更新拒絶に当たって、当面は、従前の判例法理を踏まえた慎重な更新拒絶理由の整理・立証準備を怠ってはならないでしょう。ただし、有期労働契約の派遣労働者に関しては、最近、派遣労働法の構造(常用代替への抑制の要請)から、反復更新してきていても、その更新拒絶を認める傾向が見られる点には留意する必要があります。
解説
1.従前の解雇の法理の概観
(1)判例上確立された一般的な解雇の法理
 他で触れられるように(第9編第5章退職・解雇)、裁判所は、従前から、解雇一般について、次のようないわゆる解雇の法理を確立して、企業の解雇について厳しい制限を加えてきました。即ち、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には権利の濫用として無効になり」(日本食塩製造事件・最二小判昭和50・4・25 民集29-4-456)、「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になる」(高知放送事件・最二小判昭和52・1・31労判268-17)、との判断を示していました。現在、この法理は、労働基準法18条の2を経て、労働契約法16条として明文化されています。

(2)解雇の法理の具体的適用としての判例上の整理解雇の法理
 解雇には合理的理由を必要とするという上記解雇の法理(高知放送事件・前掲等)の具体的適用として、とくに整理解雇については、労働者自身には何ら落ち度が無いにも拘わらず解雇を余儀なくされるものであるところから、裁判所は、整理解雇の効力の判断に当り、できる限り最終措置として解雇を回避してきた雇用調整の実態を考慮に入れて、多くの場合、次の4点の全部又は一部を判断要素として挙げています。

 つまり、a.人員削減の経営上の必要性の存否、b.整理解雇回避努力義務の実行の有無、c. 合理的な整理解雇基準の設定とその公正な適用の存否、d.労使間での協議義務の実行の存否です。例えば、東洋酸素事件・東京高判昭和54・10・19労民 30-5-1002)は、企業の1部門の閉鎖に伴う当該部門の従業員の整理解雇について、ここでの、いわゆる整理解雇の4要件に沿って整理解雇の有効性の存否を判断しています(4条件の分析につき菅野和夫「労働法」第8版補正版457頁以下、岩出誠著「実務労働法講義」下巻627頁以下、660頁以下等参照。同旨を示すものとして、高田鉄鋼所事件・大阪高判昭和57・9・30労判 398-38、名村造船所事件・大阪高判昭和60・7・31労判457-9等参照。比較的最近、この基準の適用により解雇が無効とされた例として日証事件・大阪地判平成11・3・31労判765-57、整理解雇4要素説の判示をし、債務超過や破産状態であることによって、直ちに整理解雇が有効とされるものではないことを明言した山田紡績事件・名古屋高判平18.1.17労経速1970-3、山田紡績事件・最三小判平19.3.6労判932号98頁(原審・名古屋高判平18・1・17労判909号5頁)、ただし最高裁での整理解雇に関する判断基準が示されることが期待された事案でしたが不受理で終え、判示は回避されました。有効とされた例としてレブロン事件・静岡地浜松支決平成10・5・20労経速1687-3等参照)。

しかし、これらは、本来は、各々が解雇権の濫用に当たるかどうかの判断要素の一つとして総合的に考慮されるという考え方もあります(4要素等を総合的に検討考慮すべきことを明言する例として、ミザール事件・大阪地決昭和62・10・21労判506-41、日本アグフア・ゲバルト事件・東京地判平17・ 10・28労経速1918-19、三陸ハーネス事件・仙台地決平17・12・25労判915-152等参照。前掲書下巻660頁以下、厚生労働省「労働契約法制権研究会最終報告」等参照)。

また、CSFBセキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件・東京高判平18.12.26労判931号30頁は、Xが整理解雇の4要件として主張するⅰ人員削減の必要性、ⅱ人選の合理性、ⅲ解雇回避努力、ⅳ手続きの相当性は、整理解雇の効力(権利濫用の有無)を総合的に判断するうえでの重要な要素を類型化したものとして意味を持つにすぎないものであって、整理解雇を有効と認めるについて厳格な意味での「要件」ではないと解すべきであると明言しています。

2.解雇権拡大を示唆する判例の出現
 ところが、一時、以上の判断枠組み自体を変えようとしたり、あるいは基本的にはそれを踏襲しているように見えますが、実質的に企業の解雇権を拡大しているとも解され得る一連の裁判例が、東京地裁労働部に現れ(以下については拙稿「最近の労働判例の動向と労務対策マニュアル」リスクマネジメント2000年11 月1日号2頁以下参照)、マスコミからも批判的観点からの関心が集まったことがありました(例えば、中野隆宣「雇用の危機」朝日新聞平成12.12.27 付論説等)。

(1)整理解雇4条件の機械的適用の否定例

 もっとも注目されているのが、従前、ややもすると当然とされてきた、整理解雇4条件の枠組みの機械的適用を否定したうえで整理解雇を有効とした、ナショナルウェストミンスター銀行事件・東京地決平成12・1・21労判782- 239)です。判旨は、整理解雇における解雇権濫用の有無の判断は、本来事案ごとの個別的具体的な事情を総合判断して行うべきものとして、上記のような4条件の機械的適用を排除し、本件事業部門の閉鎖に伴う整理解雇が、「雇用契約解消には合理的な理由があり」、労働者の「当面の生活維持及び再就職の便宜のために相応の配慮を行い、かつ、雇用契約を解消せざるを得ない理由についても」労働者に「繰り返し説明するなど、誠意をもった対応をしていること」等を総合考慮して解雇を有効としました。続く廣川書店事件・東京地決平成12・2・29 労判784-509)でも整理解雇4条件を適用することなく、敢えて古典的解雇の自由をうたった上で、出版社の分室閉鎖に伴う解雇が有効とされています。

 実は、同様の変化は、角川文化振興財団事件・東京地決平成11・11・29 労判780-67)においても既に見られていました。本件では、親企業からの委託契約の解消に伴う部門閉鎖に伴う元期間雇用の臨時労働者の解雇につき、黙示の更新による期間の定め無き労働契約への転換を認めながら、委託解消に伴う部門閉鎖を当然の措置とし、同部門に従事する目的で雇用されていた労働者の解雇に当たり、整理解雇に当たらないとして、希望退職の募集等の解雇回避努力義務を尽くさず、労働者への協議・説明をしていなかったとしても解雇権の濫用に当たらないとしたものです。

他にも、みどりNリウマチ科整形外科事件・大阪地決平18.3.6労判914-90では整理解雇4要件の一般論を展開せずに、同解雇を否定しています。

(2)解雇権濫用の労働者側の証明責任の明示例

更に、理論的には当然としても、前述のように解雇に合理的理由を要するとの最高裁判例の確立の下、実際の訴訟実務の大勢においては企業側に解雇の合理的理由の主張・立証の必要が有る中で(労基法第22条1項の退職時の使用証明において、労働者から求められた場合に解雇理由の明示の必要があることについては、岩出誠著「改正労働法への対応と就業規則改訂の実務」75頁以下、菅野・前掲452頁以下参照)、強いて古典的な解雇の自由を強調して、使用者は単に解雇の意思表示をしたことを疎明すれば足り、解雇を争う労働者側に解雇権濫用を基礎づける事実については主張・疎明責任があると判示するものも現れました(角川文化振興財団事件・前掲。労働側からのこれらの傾向への危機意識を整理し、かつ解雇理由の証明責任論に関する労作として古川景一「解雇権乱用法理と要件事実・証明責任、及び解雇に関する正当事由必要説の再構成試論」季労194号77頁以下参照)。

(3)実質的に企業の解雇権を拡大していると解される判例

 他方、従前の解雇の法理を踏襲しつつも、実質的に企業の解雇権を拡大していると解される裁判例も現れています。

 例えば、ナカミチ事件・東京地八王子支決平成11・7・23労判775-71は、解雇回避努力義務が裁量の幅のある弾力的なものであることを明示して解雇を有効としました。又、明治書院事件・東京地決平成12・1・12労判779-27は、総合的判断の基準として整理解雇4条件を使いながらも、人員削減の必要性を従前の裁判例に比較すると極めて緩やかに認め、9名中8名の解雇を認めました。即ち、役員の増員、役員報酬の支払い、解雇前後の派遣社員の採用、株式配当や会社所有物件の無担保による借り入れ余力の存在等はこの必要性を否定する事情にはならないとしたものです。

 又、ここでの問題であるいわゆる反覆更新してきた期間雇用労働者の雇い止めに関しても企業の更新拒絶の範囲拡大の動きがあります。即ち、前述の通り(第 10篇第2章「アルバイト、パートタイマーの雇止め」)、一般には、ごく短期で更新も一定範囲でしか予定されていない臨時性の強いアルバイトやパートタイマーを除いて、更新拒絶するには一定の合理的な理由を必要としていますが(東芝柳町工場事件・最1小判昭49・7・22民集28-5-92、岩出誠著「社内トラブル救急事典」278頁以下参照)、カンタス航空事件(東京地決平成12.3.30 労判784-18)では、東芝柳町工場事件・前掲を引用しつつ、事案においても、10回前後の更新を経て、準社員的地位にあった期間雇用の航空会社の客室乗務員について更新拒絶を有効と認めたのです。しかし、同控訴事件・東京高判平成13・6・27労判810-21では逆転されています。

3.解雇権の拡大への過大な期待は危険
以上の裁判例の分析によれば、一見すると、少なくとも、東京地裁労働部において、従前に比較すると解雇権を拡大しようとする胎動が感じられたことは事実でしょう(最近の雇止めを有効とした例として、JALナビア大阪事件・大阪地判平 17.12.9労経速1934-3、三共(寡婦嘱託雇止め)事件・静岡地浜松支判平成17・12・12労判908号13頁、ヤマト運輸(パート社員)事件・東京地判平19.1.29 労判939-89、山藤山陽印刷事件・札幌高決平 19.3.30 労判943-92等参照)。しかし、それらは、理論的な変化ではなく事案の相違によって説明可能な部分も少なくなく、他方で、例えば、期間雇用の更新拒絶につき、丸子警報器事件・東京高裁平11・3・31労判758-7や、ヘルスケアセンター事件・横浜地決平成11・9・30労判779-61は、いずれも更新拒絶を合理的な理由なしとして無効としています(最近の雇止めを無効とした例として、近畿建設協会(雇止め)事件・京都地判平18.4.13労判 917-59、大阪府住宅供給公社事件・大阪地判平18.7.13労経速1957-3等)。従って、未だ、高裁段階でのこの動きへの大きな変化も見出せない状況下で解雇権拡大の動きに過大な期待や危惧を持つのは危険です。少なくとも紛争の回避・拡大防止の観点からは、企業における解雇権の発動に当たって、当面は、従前の判例法理を踏まえた慎重な解雇理由の整理・立証準備を怠ってはならないでしょう。

ちなみに、平成12年9月11日労働省労働基準局監督課発表の「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」(座長・山川隆一筑波大学社会科学系大学院教授)は、期間雇用労働者の更新拒絶問題につき従前の裁判例を分析し、期間雇用労働者の類型化を試み、「<1> 業務内容や契約上の地位が臨時的であること又は正社員と業務内容や契約上の地位が明確に相違していること、<2> 契約当事者が有期契約であることを明確に認識していると認められる事情が存在すること、<3> 更新の手続が厳格に行われていること、<4> 同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例があること、といった状況が全て認められる有期労働契約は、純粋有期契約タイプに該当する可能性が高いということがいえる(ヤマト運輸(パート社員)事件・東京地判平19.1.29前掲では、更新3回の有期雇用の雇い止めを更新への期待なきレベルとして有効としました(判例挿入筆者))。逆に言えば、<1>~<4>のいずれかを満たしていない有期労働契約であれば、純粋有期契約タイプに必ずしも該当しないこととなり、したがって、期間満了のみを理由とした雇止めは認められず、上記のように別途その適否を判断すべきことが原則となる。」と指摘していることは、期間雇用労働者への更新拒絶に当たっての参考となります。
4. 派遣労働者等に対する更新拒絶の範囲を拡大する裁判例の出現等の新たな動向
 この中で特徴的な動きとして、最近、派遣労働法の構造(常用代替への抑制の要請)から、反復更新してきていても、その更新拒絶を認める傾向が見られる点には留意する必要があります。即ち、期間雇用労働者たる派遣労働者の更新拒絶につき、「原告の雇用継統に対する期待は,派遣法の趣旨に照らして,合理性を有さず,保護すべきものとはいえないと解される。」としてそれを有効とした、 いよぎんスタッフサービス事件・松山地判平成15・5・22労判856- 45、伊予銀行・いよぎんスタッフサービス控訴事件・高松高判平18・5・18労判921-33及び同旨のマイスタッフ(一橋出版)事件東京地判平17・ 7・25労判900-32、マイスタッフ(一橋出版)事件・東京高判平18.6.29 労判921-5があります。
 なお、日本ヒルトンホテル(本訴)事件・最一小決平17・5・16労判892-98も、本件労働条件の合理性、組合との交渉経緯、正社員組合の同意のほか、上告人らが正社員となることを希望せず、本件異議留保付き承諾は被上告人の変更後の条件による雇用更新申込を拒絶したのであり、それにも拘わらず、被上告人に上告人らの雇用継続の期待権を保護するために雇用契約の締結を義務付けるのは、継続的に社会経営の合理化や経費削減を図っていかなければならない被上告人にとって酷であるなどの事情から、本件雇い止めには合理的理由があり有効とした2審判決(東京高判平成14・11・26労判843-20)を維持しており注目されます。同2審判決は、「異議留保付き承諾」を「雇用更新申込を拒絶したのであり、それにも拘わらず、被上告人に上告人らの雇用継続の期待権を保護するために雇用契約の締結を義務付けるのは、継続的に社会経営の合理化や経費削減を図っていかなければならない被上告人にとって酷であるなどの事情から、本件雇い止めには合理的理由があり有効とした。」点は、雇い止めを容易に認める方向に傾く事例として注目されます。なお、以上の他にも、ジェイアール西日本メンテック事件・大阪地判平成16・3・12労経速1877-3、近畿コカ・コーラボトリング事件・大阪地判平成17・1・13労判893- 150、清和ウエックス事件・大阪地判平成17・5・13労経速1906-24のように最近、従前に比すれば更新拒絶を認める例が増えつつある印象を受けます。
 ただし、ナブデスコ(ナブコ西神工場)事件・神戸地明石支部判平17.7.22労判901-21では、社外労働者と受入企業間に黙示の労働契約の成立を認めたうえで、本件雇止めの理由は、原告らの雇用の犠牲によって自ら作出した違法状態を解消しようとするものであり、著しく不合理であって無効であり、原告らは、黙示の労働契約に基づき、会社を吸収合併した被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあるとされ,いわゆる違法派遣の場合に、派遣先の労働契約上の地位を認め、期間雇用労働者の雇い止めを認めませんでしたので、留意する必要があります。
5. 労働契約法と改正雇止め基準の影響は
(1)労働契約法17条2項

  労働契約法17条2項は、不必要に短期の有期労働契約の反復とならないよう配慮すべき義務を定めました。この規定の目的は、使用者に対し不必要に短い契約期間としないよう配慮を求めることで、全体として契約期間の長期化を促し、雇止めをめぐる紛争の端緒となる契約更新の回数そのものを減少させることにあります(施行通達も同旨)。
 「不必要に短期」とはどの極度の期間を指すのでしょうか(以下は岩出誠『労働契約法・改正労基法の個別論点整理と企業の実務対応』106頁以下による<日本法令 2007>)。この点については、有期労働契約を締結する事情は様々であり、個々の事案に応じて判断されるべきでしょうが、具体的には、有期契約を締結する事情として、(a)人件費の節約のため(b)1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため(c)専門的能力を有する人材を一定期間確保・活用するため(d)臨時・季節的業務量の変化に対応するため(e)景気変動への対応のため等が挙げられ、(c)及び(d)については、各使用者は想定している期間がある程度具体的であるといえるため、当該期間を(細切れにせずに)契約期間とすることを求めることが考えられ、それ以外の事項については、その事項特有の具体的な期間があるものではありませんが、少なくとも、当該契約期間とすることについて合理的な理由が必要であり、労働者から求められた場合には説明を果たすなど労働者の理解を深めるようにすることが求められるでしょう(労働契約法4条1項参照)。 この規定は、使用者に配慮を求めるものに過ぎず、仮に不必要に短い契約期間による労働契約が締結されたからといってその有期労働契約が法的に無効となるものではありませんし、当該契約が無期契約に転換したりすることはありません。
 ただし、労働契約法の各論の中に位置づけることにより、次の(2)の雇止め基準の改正とあいまって、ルールが周知されて紛争の未然防止が図られるとともに、雇止め等をめぐる紛争が生じた場合には、次に触れる、判例上のいわゆる雇止め法理において、このルールに照らして必要な配慮をしたかどうかということがその紛争の解決に当たっての考慮要素とされることが考えられ(判例上のいわゆる雇止め法理の詳細については、岩出誠著・前掲書上巻132頁以下参照)、短期契約の合理的「必要」性を主張・立証できない場合に、従前以上に雇止めが認められない要素とされる可能性は高まるものと解されます。

(2)改正雇止め基準
 また、平成20年3月1日から適用されている有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(厚生労働省告示第357号)により、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に限り求められている雇止めの予告について、3回以上更新されている者についても対象とすることになりました。この改正は、法律の改正でない点で、拘束力や影響力はさほど強くないでしょう。 しかし、現在の判例・裁判例においては、たとえ、現行の雇止め基準の適用にない、1年以上継続雇用していない有期労働者に対しても、雇止め基準が求めているような予告や、その理由の開示と内容が、判例上のいわゆる雇止め法理に照らして、合理性があるか否かが問われる際の重要な要素となっていることは明らかで、今回の告示の改正で、かかる判断をより導き易くなります(岩出誠他『労働契約法って何?』<労務行政研究所、2008>85頁以下)。

対応策

 従って、「回答」のように、当面は、従前の判例法理を踏まえた慎重な更新拒絶理由の整理・立証準備を怠ってはならないでしょう。即ち、前述の通り(第 10篇第2章「アルバイト、パートタイマーの雇止め」)、今後も多くの裁判所では、有期契約が反覆更新している場合には恣意的な雇止めは許されないとされることが予想され、企業側としては確実な雇止めをする場合の予告などの手続と雇止めをする場合の理由を明確化できる態勢をとっておくこと、労働者側にとってはそのような手続の順守や明確な更新拒絶の理由の開示を求めたりする事が必要でしょう(前記報告書有期労働契約の雇止め等に関する今後の方向性「<1>トラブルを未然に防止するための措置」(前項指針参照)(なお、この報告を踏まえた平成12年12月28日付労働省の「有期労働契約の締結及び雇止めに関する指針」も同旨を示し、上記の通り、平成20年3月1日より厚生労働省告示第357号として改正、適用されています)。 ただし、期間雇用労働者たる派遣労働者の更新拒絶については、「雇用継続に対する期待は、派遣法の趣旨に照らして、合理性を有さず、保護すべきものとはいえない」とされる危険があり、留意する必要があります。

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