法律Q&A

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紹介予定派遣

弁護士 岩出 誠・ロア・ユナイテッド法律事務所代表パートナー千葉大学法科大学院大学客員教授

紹介予定派遣で派遣先が紹介された派遣労働者を採用しない場合にはどのような対応が必要でしょうか?

Aは、B派遣会社から、紹介予定派遣として、C社に6ヶ月の期間を定めて派遣されたのですが、期間満了時に、C社はAを採用しませんでした。①不採用にAが納得できない場合、C社、B社はどのような対応をすべきでしょうか。②また、C社が直接雇用としての採用はできないが、C社にAを派遣で継続するなら受け入れると申出た場合、B社、C社で注意せねばならないことはどんな点か。

回答ポイント

 ①については、派遣就業終了後に派遣先が職業紹介を受けることを希望しないときは、派遣先は派遣元に対し、その理由を通知しなければなりません。明示された採用条件が勝手に変更された場合や、性的要求拒否を理由とするセクハラ的な採用拒否の場合には、少なくとも損害賠償請求の可能性はあります。
②については、派遣労働者の特定として派遣先の義務違反が問われ、かつ、労働局から、当該労働者を雇い入れるように努めることなどを指導されることもあります。
1 紹介予定派遣とは
 紹介予定派遣とは、「労働者派遣の開始前または開始後に、派遣労働者および派遣先について、許可を受けまたは届出をして職業紹介を行い、または行うことを予定してする」労働者派遣で、「当該職業紹介により、派遣労働者が派遣先に雇用される旨が、労働者派遣の終了前に派遣労働者と派遣先との間で約されるものを含む」とされています(派遣法2条6号。詳細については、拙著「実務労働法講義」改訂増補版上巻<民事法研究会、平成18>192頁以下参照)。
2 紹介予定派遣への行政指導
 紹介予定派遣の実施に当たっては、厚生労働省により以下の指導がなされています。先ず、派遣就業終了時に改めて派遣元が派遣先及び派遣労働者の求人・求職の意思を確認して職業紹介が行われるもので、その意思いかんによっては職業紹介がおこなわれないこともある制度であることを、派遣元には派遣先及び派遣労働者へ説明する義務があります。派遣就業終了後に派遣先が職業紹介を受けることを希望しないときは、派遣先は派遣元に対し、その理由を通知しなければなりません。しかも、この際には、派遣元指針により、派遣元事業主は、派遣労働者の求めに応じ、それぞれその理由について、派遣先に対して書面等により明示するよう求めるものとし、また派遣先から明示された理由を、派遣労働者に対して書面等(電子メール等による場合にあっては、当該派遣労働者が希望した場合に限る)で明示するものとすることとされています。
なお、Qの②のように、派遣先が当該労働者を特定して労働者派遣を受けることを希望した場合、派遣先指針での特定行為への禁止から、当該労働者を雇い入れるように努めることなどを指導するとされていす。ただし、リクルートスタッフィング事件では(東京地判平17・7・20労判901号85頁)、派遣法26条7項は、派遣先に対し、特定行為をしないよう努力義務を課すにとどまっているから、派遣先がこれに違反して特定行為をし、派遣会社がこれに協力したとしても、直ちに不法行為になるとは言えないとしています。
3派遣先の恣意的な採用拒否の場合
 派遣先の恣意的な採用拒否について、派遣先への採用自体を求めるのは、「採用の自由」との関係から原則的には困難でしょう(拙著・前掲書106頁以下参照)。しかし、上記②での回答のような場合、損害賠償請求される可能性はあります(労働条件明示義務違反等を理由に慰藉料支払を命じた日新火災海上保険事件・東京高判平12・4・19労判787号35頁等参照)。

対応策

以上のように、①不採用にAが納得できない場合、C社、B社については、派遣就業終了後に派遣先が職業紹介を受けることを希望しないときは、派遣先は派遣元に対し、その理由を通知しなければなりません。明示された採用条件が勝手に変更された場合や、性的要求拒否を理由とするセクハラ的な採用拒否の場合には、少なくとも損害賠償請求の可能性への対応に留意する必要があります。②のC社が直接雇用としての採用はできないが、C社にAを派遣で継続するなら受け入れると申出た場合については、派遣労働者の特定として派遣先の義務違反が問われ、かつ、労働局から、当該労働者を雇い入れるように努めることなどを指導されることに留意する必要があります。

予防策

紹介予定派遣の期間を安易に短くすることは、確かに派遣料と直接雇用の場合のコストを考慮すれば早く決めたい動機は理解できます。しかし、直接雇用の場合の内定取消や試用期間後の本採用拒否の困難を考慮するなら、できるか限り、派遣期間の限り、労働者を見定めることが必要と考えます。 なお、特定行為については、派遣法26条7項が努力義務に過ぎないことに加えて(リクルートスタッフィング事件・東京地判平成17・7・20労判901号85頁参照)、現在の派遣元指針では、「派遣労働者又は派遣労働者となろうとする者の判断で行う派遣就業開始前の事業所訪問及び履歴書の送付並びに派遣就業期間中の履歴書の送付は、派遣先による派遣労働者を特定することを目的とする行為が行われたことには該当せず、実施可能であるが、派遣元事業主は、派遣労働者又は派遣労働者となろうとする者に対してこれらの行為を求めないこととする等派遣労働者を特定することを目的とする行為への協力の禁止に抵触しないよう、十分留意するものとする。」と規制が緩和されていることを踏まえ、派遣労働者が自ら希望すれば可能と解されることを踏まえた対応が工夫されるべきであろう。

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