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労働者派遣法の期間制限のルールの改正内容と労働契約申込みみなし制度の内容は?

2017年1月 弁護士 石居 茜

派遣法の改正により、派遣期間制限のルールが見直され、その期間制限を超えて労働者派遣を受けていると派遣労働者に対し労働契約の申込みをしたものとみなされる制度ができたと聞きました。
その内容について教えてください。

派遣期間が原則3年とされ、新たに個人単位の期間制限と事業所単位の期間制限の制度が設けられました。
また、違法派遣を受けている会社は、労働者に対し労働契約の申込みをしたものとみなされる制度ができました。

 平成27年9月1日施行の労働者派遣法の改正前には、派遣の期間制限は、派遣期間の制限のない専門業務(26業務)とその他の業務に分けられて整理されていました。
 しかしながら、制度がわかりにくい等の理由から、26業務の区別の制度を廃止し、業務にかかわらず、個人単位の期間制限と事業所単位の期間制限の制度が設けられました。
 個人単位の期間制限では、派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは3年が上限とされます。ただし、同一の事業所に派遣する場合であっても、この後説明する、3年を超えて派遣労働者を受け入れるための事業所単位の期間制限の手続が取られている場合には、他の組織単位(課)に派遣することは可能です。
 「組織単位」とは、業務のまとまりがあり、かつ、その長が業務の配分および労務管理上の指揮監督権限を有する単位として派遣契約上明確化したものをいうとされています。
 事業所単位の期間制限では、派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受入れは3年を上限とし、それを超えて受け入れるためには派遣先の事業所の過半数代表労働者等の意見聴取を行うことが必要とされています。その後3年を経過したときも、同様の手続で派遣労働者の受入れは可能です。

 なお、無期雇用の派遣労働者、60歳以上の派遣労働者、産前産後休業・育児休業・介護休業等を取得する労働者の業務に派遣する場合などは期間制限の対象外であり、3年を超えて同一の組織単位(課)に派遣労働者を受け入れることは可能です。

 また、派遣先は、労働者派遣契約を締結するにあたり、あらかじめ、派遣元に対し、労働者派遣の開始の日以後、事業所単位の派遣可能期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならないとされています。
 そして、期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合、労働者派遣の禁止業務に従事させた場合、無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合、いわゆる偽装請負に該当する場合等、違法派遣を受け入れた場合には、違法派遣であることについて故意又は過失がなかった場合を除いて、派遣先は、派遣労働者に対して、派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされることとなりました。
 その場合、違反行為が終了した日から1年を経過するまでの間は、派遣先は申し込みを撤回することができませんので、その間に派遣労働者が承諾する旨の意思表示を行った場合、派遣先と派遣労働者の間に労働契約が成立することとなります。

 派遣先又は派遣労働者から求められた場合、厚生労働大臣は違法派遣に該当するかどうかについて必要な助言ができることとされており、派遣先が労働契約の申込みをしたとみなされ、派遣労働者が承諾をしたにもかかわらず、派遣先が派遣労働者を就労させない場合には、厚生労働大臣は、派遣先に対し、必要な助言・指導・勧告ができるものとされています。また、派遣労働者を就労させるよう勧告を受けたにもかかわらず、派遣先が従わなかった場合には、公表の対象となります。

 派遣労働者を受け入れる場合には、上記の期間制限のルールを正しく守る必要があります。

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