法律Q&A

分類:

派遣労働者の健康診断等について

パートナー 特定社会保険労務士 鳥井 玲子

派遣労働者に健康診断等受けさせる義務は派遣元事業主、派遣先事業主いずれにあるか。

当社では年1回定期健康診断を行っていますが、当社で就労している派遣労働者についても、健康診断を行う義務がありますか。

派遣労働者の雇入れ時の健康診断及び定期健康診断については、派遣元事業主が行うことになっていますので、貴社で行う必要はありません。ただし、行政通達(平成21年3月31日・基発第0331010号)で、派遣労働者の就業の場所は派遣先事業場であることから、派遣元事業者の依頼があった場合には、派遣先事業者は、当該事業場の労働者に対する一般健康診断を実施する際に併せて派遣労働者が受診できるよう配慮することが望ましいとされています。なお、有害物質を扱う者の健康診断(特殊健康診断)は、派遣先企業に実施義務があります。

1派遣労働者に対する労働安全衛生法の派遣元・派遣先事業主の責務
 派遣労働者の安全衛生の確保については、原則的な責任主体は派遣元事業者でありますが、派遣就労が派遣先の事業場において派遣先事業者の指揮命令下になされることから、派遣先事業者に対しても、職場における労働者の安全衛生を確保する事業者の一般的義務が課されます。したがって、派遣元事業主及び派遣先事業主の双方に対して、その責任区分に応じた労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)の遵守が求められます(労働者派遣法45条)。
2健康診断等労働者の健康の保持増進のための措置における派遣元・派遣先事業主の責務
(1)派遣元事業主の責務前述のように、雇入れ時や定期健康診断等一般健康診断(安衛法 第66条第1項)の実施、健康診断の結果の記録(同法66条3)、健康診断結果についての医師等からの意見聴取(同法66条の4)、健康診断実施後の措置(同法66条の5)及び健康診断の結果の通知(同法66条の6)を行う義務は派遣元事業主にあります。また、過重労働・メンタルヘルス対策の充実を図るため、平成18年4月(常時50人未満の労働者を使用する事業場は平成20年4月)に施行された、週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対し、労働者の申出を受けて行う医師による面接指導等(安衛法第66条の8、第66条の9)を実施する義務も、派遣元事業主にあります。

(2)派遣先事業主の責務
 特殊健康診断(安衛法第66条第2項及び第3項に基づく健康診断をいう。以下同じ。)の実施、健康診断の結果の記録(同法66条の3)、特殊健康診断における医師等からの意見聴取(66条の4)、及び特殊健康診断の結果に基づく事後措置 (同法66条の5)を講ずること義務は、派遣先事業主にあります。

3派遣元事業者と派遣先事業者との連携
 派遣元事業者及び派遣先事業者は、それぞれの責任区分に応じた安衛法上の措置を講ずる必要があり、これを円滑に実施するためには、両者の適切な連絡調整等が重要です。
 前述のように、行政通達で、派遣先事業者は、派遣労働者が一般健康診断を受診できる
よう配慮することが望ましいとされていますし、派遣元事業者及び派遣先事業者は、定期
的に会合を開催するなどし、健康診断、安全衛生教育、労働者派遣契約で定めた安全衛生
に関する事項の実施状況、派遣労働者が被災した労働災害の内容・対応などについて連絡
調整を行うこととされています(前述、平成21年3月31日・基発第0331010号)。
 更に、派遣先指針( 最終改正平成21年厚生労働省告示第245号)においても、派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者に対する雇入れ時の安全衛生教育を適切に行えるよう、派遣労働者が従事する業務に係る情報を派遣元事業主に対し積極的に提供するとともに、派遣元事業主から雇入れ時の安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には可能な限りこれに応じるよう努める等、派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために必要な協力や配慮を行うことが定められていることに留意する必要があります。

対応策

回答のとおり、派遣労働者の雇入れ時の健康診断及び定期健康診断については、派遣元事業主に実施義務がありますが、前掲通達(平成21年3月31日基発第0331010号)及び派遣先指針( 最終改正平成21年厚生労働省告示第245号)にもありますように、受診のための時間確保に協力する等派遣先事業主についても協力体制を整えることが求められますので、派遣先事業についても派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を現場の状況に即し適切に講ずることが重要です。

予防策

労働安全衛生法は、派遣労働者についても当然適用され、原則として派遣労働者と労働契約関係にある派遣元事業主がその責任を負うものとされますが、派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置など労働者派遣の実態から派遣元事業主に責任を問いえない事項、派遣労働者の保護の実効を期する上から派遣先事業主に責任を負わせることが適切な事項については「労働者派遣法」の「特例」によって派遣先事業主に責任を負わせることとしています。
 昨今、派遣労働者の労働災害が増えており、特例について十分に理解がなされていないことや派遣元事業主と派遣先事業主との連携が十分に図られていないことなどから、労働安全衛生法上の安全措置が講じられていないことが問題視されています(このため、平成22年改正派遣法に関連して、労災保険法も改正され、派遣先に対して、同法の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができることになる予定です)。
 労働災害が発生した場合には、派遣元事業主のみならず、連帯して、否、むしろ、直接の危険を発生させている派遣先事業主についての方が、より高度の安全配慮義務が問われることもあり得ます(偽装請負と認め、実質派遣先と派遣元の過労自殺損害賠償責任を認めたアテスト(ニコン熊谷製作所)事件・東京高判平21・7・28労判990号50頁参照)。また、労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」とされています。これらのことからしても、労働安全衛生法における事業主の講ずべき措置は、当然に遵守されなければなりません。例えば、安全衛生管理体制など、特例で派遣元と派遣先の双方に適用があるものについては、特に留意し整備する必要があります。安全衛生体制における特例規定では、総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、衛生委員会などの安全衛生管理体制については派遣元と派遣先の双方に適用がありますが、安全管理者、作業主任者、安全委員会については派遣先だけに適用があります。なお、衛生管理者や衛生委員会等の設置義務のある事業場規模の根拠となる「常時使用する労働者数」には、派遣元も派遣先も派遣中の労働者を算入することになっていますので注意が必要です(昭和61・6・6 基発333号)。

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