法律Q&A

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受託先に出向した発注労働者による指揮

ロア・ユナイテッド法律事務所 代表パートナー 弁護士 岩出 誠
2010年8月掲載

受託先に出向した発注主労働者による指揮命令は違法か?

ソフト開発会社A社は、開発の一部を子会社B社に委託し、実際の作業は、A社の構内で、B社の現場責任者を通じて、A社からの要請や注文は伝えられていました。しかし、新しい技術や顧客の要求の変更などを確実かつ迅速に伝えるには、A社の技術者Cから、B社の労働者Dらに、直接に指揮命令することが必要でした。しかし、そのようなことはいわゆる偽装請負で違法と聞いています。そこで、CをA社からB社に出向させ、CがB社の社員としてDらを指揮命令すれば、その問題は回避できるのではないかと考えたのですが、このような方法は可能でしょうか。

A社とB社の関係が親子関係にあり、出向が、経営指導、技術指導、職業能力開発の一環、あるいは、企業グループ内の人事交流として行われるものであれ、かかる方法は可能です。

1 委託等と区分基準の関係
 まず、Qでも触れているように、A社とC社の間で問題とされたように、形式上はいわゆる業務処理請負や業務委託等の契約となっていても、実態として発注主企業の労働者が受託先労働者を自己の指揮命令下で仕事をさせているような場合には、厚労省「労働者派遣事業と請負により行なわれる事業との区分に関する基準を定める告示」昭和61年労告37号(「区分基準」)に照らして、偽装請負として、派遣法違反の責任を問われることになります(詳細は、拙著『実務労働法講義』[民事法研究会、第3版]上巻314頁以下参照)。
2 厚労省の在籍出向=労働者供給事業説

 次に、在籍出向と労働者供給事業の関係につき、厚労省は(労働者派遣事業業務取扱要領第1の1(4)ニ乃至ヘ参照)、在籍出向は、本来、職安法44条の労働者供給事業に当たる違法なものだが、同事業に該当しない許容条件、適法な出向となる要件として「関係会社乃至グループ企業間での」という要件(以下、主体的要件という)と、その目的が経営指導、技術指導、職業能力開発の一環、あるいは、企業グループ内の人事交流研修等に限られるという要件(以下、主観的要件という)が満たされれば違法性はないとしています。
3 在籍出向への監督権限の発動
 実際にも、質問と同様の事案で、厚労省は、上記2の要件で労働者供給事業該当性の有無を判断し、安川電機には、是正勧告をせず、松下プラズマディスプレイ社(当時)には勧告をしています。即ち、厚労省の結論は、前述の「関係会社乃至グループ企業間」での出向か否かという主体的要件の有無で判断が分かれ、業務請負会社が安川電機の100%子会社であった同社の事案に対しては、「"人事交流"を目的としたグループ内出向として認められる」として指導や是正勧告はなされませんでした。これに対して、業務請負会社との間に主体的要件を満たしていなかった松下プラズマディスプレイに対しては是正指導がなされています(平成18・11・10付西日本新聞記事等参照)。
4 厚労省見解への疑問

 もちろん、厚労省の見解には、論理的にも、立法趣旨からも、現実との乖離からも疑問があり、最近の裁判例との矛盾も出ています(拙著・前掲書上巻321頁以下参照)。しかし、実務的な対応としては、Qのような事案で出向を利用される場合には、上記主体的要件を満たす環境がない場合には、かかる出向の利用には注意が要ります。少なくとも、企業グループと言えるような、業務提携関係の構築や、株の持ち合いによる資本関係の形成等により、主体的要件の構築の工夫が必要です。

対応策

従って、A社とB社の関係が親子関係にあり、出向が、経営指導、技術指導、職業能力開発の一環、あるいは、企業グループ内の人事交流として行われるものであれ、かかる方法は可能です。

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