法律Q&A

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付随的業務と派遣受入可能期間の制限

特定社会保険労務士 鳥井 玲子(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2011年06月:掲載

付随的業務と派遣受入可能期間の制限

26専門業務の1つである5号業務(機器操作関係)に従事している派遣労働者に一部5号業務以外の業務も担当してもらいたいと考えていますが、その場合でも主に5号業務に従事しているのであれば、派遣受入可能期間の制限はないと考えてよいでしょうか。

ご質問の派遣労働者に行わせたい業務が5号業務の実施にともなって、付随的に行う業務であれば、その割合が通常の1日又は1週間当りの就業時間数で1割以下の場合には、全体として第5号の専門業務として、派遣受入期間の制限を受けないものとして取り扱って差し支えないとされていますので、派遣受入可能期間の制限はかかりません。

1派遣受入可能期間とは
派遣先事業主は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(一定の業務を除く)について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないとされています(派遣法第40条の2(労働者派遣の役務の提供を受ける期間))。
この場合、派遣受入れができる期間は原則として1年ですが、過半数組合等の意見聴取など所定の手続きを経て3年以内の一定の期間とすることができます。

2派遣受入可能期間の制限のない業務とは
前述1のように、派遣受入可能期間は、原則1年最長3年となりますが、(1)政令で定める26の専門業務、(2)3年以内の有期プロジェクト業務(3)1月の所定労働日数が10日以下の業務(派遣先の通常労働者に比し少ない場合に限る。)及び(4)産前産後休業、育児休業又は介護休業を取得した労働者の代替要員としての業務については、派遣受入可能期間の制限はかかりません。平成15年改正前までは、26専門業務についても、同一場所・同一業務における派遣期間は合計3年を超えないように行政指導されていましたが、これが廃止され、改正後は、前述のように26の専門業務に該当する業務については、受入可能期間の制限はありません。

3付随的業務の範囲
業務の実態により個々に判断することになりますが、例えば①専門26 業務の実施、準備、整理の過程で一体的に行われ、かつ、他の労働者と適切な割合で分担しているときのごみ捨て、掃除、後片付け、②専門26業務の実施に電話応対を要する場合で、かつ、他の労働者と適切な割合で分担がなされているときの電話の応対等は、専門26業務に含まれます。しかし、①または②の業務が他の派遣労働者や派遣先の直接雇用労働者と適切な割合で分担等がなされないまま、派遣労働者の業務とされている場合には、付随的業務と考えられるとされています(前掲「専門26業務疑義応答集」)。付随的業務については、その割合が通常の1日又は1週間当りの就業時間数で1割以下の場合には、全体として専門26業務として、取り扱って差し支えないとされています(前掲「派遣業務取扱要領」「専門26業務疑義応答集」ほか)。

4第5号業務において、同号の専門業務にも付随的業務にもあたらない業務とは
例えば、第5号業務の実施に伴い、お茶くみが必要になるとは通常は考えられないため、派遣先事業主が指揮命令して、派遣労働者に、お茶くみを行わせた場合などや第5号業務の実施に電話応対を要しないときの電話の応対は、第5号業務にも付随的業務にも該当しないとされています。また、これらを派遣労働者が自発的に行っている場合であっても、派遣先事業主がそれを黙認している場合には、同様とされています(前掲「専門26業務疑義応答集」)。実態にもよるでしょうか、多少でもこれらの業務が行われている場合には、全体として、第5号業務と判断することができなくなり、派遣受入可能期間の制限(原則1年最長3年)がかかる可能性があるでしょう。

対応策

 「疑義応答集」を基に、前掲と重複部分もありますが、今一度付随的業務等の考え方を具体例で分類してみると、次の(1)から(3)のようになります。
 実際には、個別の実態に応じた判断がなされるため、必ずしも同様の判断になると断定できるものではありませんが、少なくとも1つの指標にはなるでしょう。
(1)専門26業務に付随する業務であり、全体として、専門26業務にあたると考えられる例

  • 専門26 業務に関連した打合せや指示が行われる場合の朝礼、ミーティング
  • 専門26 業務の実施、準備、整理の過程で一体的に行われる場合の派遣労働者自身のごみ捨て、掃除、後片付け等
  • 専門26 業務の実施、準備、整理の過程で一体的に行われ、かつ、他の労働者と適切な割合で分担しているときのごみ捨て、掃除、後片付け
  • 専門26 業務の実施に電話応対を要する場合で、派遣労働者の通常使用する電話に偶然他者あての電話がかかってきた場合の電話の応対
  • 専門26 業務の実施に電話応対を要する場合で、かつ、他の労働者と適切な割合で分担がなされているときの電話の応対

(2) 専門26 業務には当たらないが付随的な業務に当たると考えられる例(1日又は1週間当りの就業時間数で1割以下の場合には、全体として専門26業務として扱って差し支えない)

  • 他の派遣労働者や派遣先の直接雇用労働者と適切な割合で分担等がなされないまま、派遣労働者の業務とされている場合のごみ捨て、掃除、後片付け、用紙の補給、書類整理
  • 専門26 業務の実施に電話応対を要する場合で、かつ、適切な割合で分担がなされず、派遣労働者の業務とされているときの電話の応対

(3) 専門26 業務にも付随的な業務にも当たらないと考えられる例(第5号業務を中心に例示)
なお、前掲のとおり、これらの業務を行わせている場合には、専門26 業務に併せて行う場合であっても、就業時間数にかかわらず、全体として派遣可能期間の制限を受けることになるとされています。

  • 専門26 業務の実施に伴い、付随的に行うものではない業務(例えば、前掲の 第5 号業務の実施に伴い、お茶くみが必要になるとは通常は考えられないため、仮に派遣先が指揮命令し、派遣労働者にお茶くみを行わせた場合等)
  • 専門26 業務の実施に電話応対を要しないときの電話の応対
  • 第5 号業務と称しつつ、銀行等への入金作業、郵便物の振分け、アポイントメント取り、会議室における会議の準備や後片付け等のいわゆる一般事務を行っている場合
  • 第5 号業務と称しつつ、営業、販売、勧誘、債権督促の業務を行っている場合
  • 第5 号業務と称しつつ、従業員からの毎月の費用徴収、慶弔費の回収等、本来派遣先の庶務担当者が行うべき業務を行わせている場合
  • 派遣労働者が自発的に専門26 業務と関係ない業務を行っている場合であっても、派遣先がそれを黙認している場合

予防策

人事の担当者等は問題点を認識していても、実際に派遣労働者を活用している現場の認識が甘い、ということはよくあります。 研修や社内通達を通じて、現場の意識を高めるとともに、自社に即した自主点検表を作成するなども予防策として効果的でしょう。

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