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初回の契約更新時における更新拒絶

弁護士 岩野 高明(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2011年09月:掲載

初回の契約更新時における更新拒絶

契約期間を1年とする契約社員について、最初の期間満了時に更新をしない方針ですが、この場合に留意すべき点はありますか。

契約締結時の労働条件(特に更新に関する事項)を確認するとともに、当該契約社員に継続雇用を期待させてしまうような事情がなかったかどうかを吟味する必要があります。

 有期労働契約の更新拒絶(いわゆる「雇止め」)については、裁判上その効力が否定される事案が少なくありません。有効・無効の判断の基準は確立されていないものの、多くの裁判例では、当該契約社員の業務の内容(恒常的なものか臨時的なものか)、労働条件(正社員と同等か)、継続雇用を期待させるような使用者の言動の有無、他の契約社員に対する従前の扱い、及び更新手続の厳格さ等のほか、更新の回数が特に重視されています。これは、労働者が期間満了後の雇用の継続を期待することに合理性がある場合には、解雇権濫用の法理を類推適用すべきであるとされているところ(進学ゼミナール予備校事件・大阪高判平2・11・15労判590号10頁等)、契約が反復更新されていることは、かかる期待の合理性を裏付ける大きな要素となるからです。
 以上の通り、更新回数が重視されるのであれば、更新実績のない初回の契約期間満了時の雇止めには問題がないかというと、そうともいえません。これを有効とする裁判例が大多数を占めるものの、雇止めの効力が否定された例が僅かながら存在します。龍神タクシー事件(大阪高判平3・1・16労判591号36頁)では、当該会社において、それまで10年以上にわたり更新が拒絶された例がなかったことや、更新手続がずさんであったことなどが考慮され、結論として、「(労働者において)雇用を継続するものと期待することに合理性を肯認することができる」とされました。したがって、初回の更新拒絶であるからといって、必ずしも雇止めが認められるわけではないと考えるべきであり、その他の事情(前記「1」に記載したもの)をも吟味する必要があります。
 もっとも、契約更新時の紛争を防止する趣旨で、平成15年に「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(同年厚生労働省告示357号)が定められ(労働基準法第14条2項参照)、現在は、実務上雇止めに関するルールが確立されています。
 同基準によれば、使用者は、契約締結時において、契約社員等に対し、契約更新の有無を明示するとともに、「更新する場合がある」とするのであれば、その判断の基準をも明示しなければならないことになっています(第1条1項、2項)。このルールに従い、契約締結時に「更新しない」としていればもちろん、「更新する場合がある」とした上で、更新の有無の判断基準を明確に定めておけば、裁判において「期間満了後に雇用が継続されるとの期待に合理性がある」と判断されるリスクを極小化することが可能です。逆にいえば、上記基準によらずに更新の有無やその条件を明示していないと、いざというときに雇止めが無効とされてしまうリスクが生じます。
 このように、契約期間満了時の紛争を避けるためには、何より契約締結時に労働条件通知書等でしっかりとした取り決めをしておくことが肝要です。
 なお、上記基準においては、有期労働契約が3回以上更新されていたり、契約社員が1年を超えて継続雇用されていたりする場合には、雇止めの30日前までにその予告をすることとされています(第2条)。本件の事案は予告義務の対象ではありませんが、無用な紛争を避ける意味でも、使用者はやはりこれを励行すべきでしょう。

予防策

 契約社員の雇い入れの際に、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(同年厚生労働省告示357号)に従って、「契約更新の有無」や「更新する場合の判断基準」を明確に定めておく必要があります。
 また、日頃から、契約社員が契約期間の満了を迎える際には、都度更新の是非を上記判断基準に従って決定するようにしておくべきです。契約を更新するのであれば、契約社員との間で、改めて契約書を交わすという作業を怠らないことも肝要です。つまり、「会社として契約更新を厳格に行っている」という実態が重要だということです。
 前記した通り、雇止めに際して予告義務が生じる場合は(初回であろうと、契約期間が1年を超えている場合には、予告義務が生じます。)、これを忘れないことも大切です。

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