法律Q&A

分類:

使用者の争議対抗手段

弁護士 木原 康雄(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2020年3月補正

労働組合が争議に入った場合、会社が対抗してとれる措置はありますか?

労働組合が争議に入った場合、会社が対抗して、派遣労働者を導入したり、部分ストやサボタージュに対抗してロックアウトなどの措置があると聞きましたがどのような法的問題があるのでしょうか。

回答ポイント

労働組合が争議に入った場合、原則として、会社が対抗して、操業を継続すること自体は禁止されていませんが、争議時に、新たな職業紹介を受けたり、派遣労働者を受け入れたりすることは禁止されています。なお、部分ストやサボタージュに対抗して、一定の場合、ロックアウトをすることはできますが、ストを潰すため先手を取る形の積極的なロックアウトは認められません。
解説
Ⅰ 操業の継続
1 争議行為中に操業継続の自由
 企業は、組合の争議行為中も、原則として、非組合員・管理職等により操業を継続する自由があり、また、代替労働者を雇い入れることも自由です(以下は、岩出誠「労働法実務大系(第2版)」民事法研究会・2019年・691頁以下参照)。判例・裁判例も、使用者が、ストライキの期間中であっても、操業を継続するために必要とされる対抗措置をとることができることを繰り返し宣明しています(御国ハイヤー事件・最二小判平成4・10・2判時1453号167頁、自治労・公共サービス清掃労働組合ほか(白井運輸)事件・東京地判平成18・12・26 労判934号5頁)。
 ただし、労働者派遣法(24条)や職業安定法(20条、34条、42条の3)の争議不介入条項に注意が要ります。もっとも、ここで禁止されている派遣や紹介は、同盟罷業または作業所閉鎖が行われて以後、新たに労働者派遣や紹介をすることです。たとえば、派遣では、「現に、労働者派遣をしている場合には、その範囲内で引き続き労働者派遣をすることまで禁止するものではない(同盟罷業又は作業所閉鎖中に同一内容の契約の更新、更改を行うことも許容される)。ただし、従来から労働者派遣はしていても派遣労働者を増加させるような行為は許されない。同盟罷業又は作業所閉鎖が予定されている場合に、その直前に、新たに労働者派遣をすることは法の趣旨に反するものであり、同様に許されないものと考えられる」(労働者派遣事業関係業務取扱要領第5の5(3)ニ)とされています。
2 スキャッブ禁止協定
 労働組合と使用者間に、ストライキ中の代替労働者(スキャッブ)雇入れを禁止する協定を結ぶことがまれにあります。これをスキャッブ禁止協定と呼びます。かかる協定ある場合に使用者がこれに違反すれば、債務的部分の労働協約違反の責めを負います(菅野和夫「労働法(第12版)」弘文堂・2019年・996頁、荒木尚志「労働法(第3版)」有斐閣・2016年・653頁)。
Ⅱ ロックアウト
1 ロックアウトの意義
 労働者の提供する労務の受領を集団的に拒否するいわゆるロツクアウト(作業所閉鎖)は、使用者の争議行為の一態様として行われ、労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、使用者の受ける打撃の程度等に照らし、衡平の見地から対抗手段として相当なものと認められる場合には、正当な争議行為として、使用者は、賃金支払義務を免れます(丸島水門事件・最三小判昭和50・4・25民集29巻4号481頁)。
2 ロックアウトの有効要件-丸島水門事件最高裁判決
 かかる使用者の争議行為としてのロックアウトの有効要件につき、丸島水門事件最高裁判決・前掲は、次のように判示しています。即ち、「使用者に対し一切争議権を否定し、使用者は労働争議に際し一般市民法による制約の下においてすることのできる対抗措置をとりうるにすぎないとすることは相当でなく、個々の具体的な労働争議の場において、労働者側の争議行為によりかえって労使間の勢力の均衡が破れ、使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、衡平の原則に照らし、使用者側においてこのような圧力を阻止し、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められるかぎりにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認されると解すべきである。労働者の提供する労務の受領を集団的に拒否するいわゆるロツクアウト(作業所閉鎖)は、使用者の争議行為の一態様として行われるものであるから、それが正当な争議行為として是認されるかどうか、換言すれば、使用者が一般市民法による制約から離れて右のような労務の受領拒否をすることができるかどうかも、右に述べたところに従い、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるかどうかによってこれを決すべく、このような相当性を認めうる場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、右ロックアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務をまぬかれる」、としました。
 換言すれば、「正当」なロックアウトについては、民法536条2項の使用者の「責めに帰すべき事由」が否定され、使用者の賃金支払義務が消滅する(令和2年4月1日施行の改正民法の下では、使用者は賃金支払の履行を拒絶することができる)ものと解されます。
3 丸島水門事件最高裁判決以降の判例・裁判例の動向
(1) 防御的ロックアウトと攻撃型ロックアウト
 このような丸島水門事件最高裁判決の判断枠組みは(以下は、主に、岩出誠編著「論点・争点 現代労働法(改訂増補版)」[三上安雄]・民事法研究会・2008年・805頁以下による)、その後の最高裁判例においても採用され(山口放送事件・最二小判昭和55・4・11民集34巻3号330頁、日本原子力研究所事件・最二小判昭和58・6・13民集37巻5号636頁等)、このような考え方によると、労働者の争議行為に対する対抗防衛的手段として相当であると認められるロックアウト(いわゆる防御的ロックアウト)には正当性があるが、使用者が自己の主張を貫徹するために圧力手段として行うロックアウト(いわゆる攻撃型ロックアウト)には正当性は認められないということになります。
 たとえば、日本原子力研究所事件・前掲は、労働組合がストライキを解除した後も21日間ロックアウトを継続した事案ですが、ロックアウト開始の時点において、ストライキにより著しく不利な圧力を受けることになるような場合であったとはいえず、衡平の見地から見て対抗防衛的手段として相当なものであったとは認めることができないこと、その後継続したロックアウトについてその圧力により使用者が定めた交替制を内容とする労働協約を締結させるという積極的な意図を有していたと見られ、これを正当なものとすることができず、本件ロックアウトは、その実施期間中のいずれの時点をとっても正当性を認めることができないとしています(三一書房労働組合(建物明渡等請求)事件・東京地判平成15・12・26労判893号163頁では、ロックアウトの違法性を理由に組合による違法占有に対する損害賠償請求を権利の濫用に当たり許されないとされました)。
(2) 防御的ロックアウト類型としての安威川生コンクリート事件最高裁判決
 防御的ロックアウトとしてその正当性を認めた安威川生コンクリート事件最高裁判決・最三小判平成18・4・18民集60巻4号1548頁においても、ロックアウトの正当性判断基準については丸島水門事件最高裁判決と同様の判断枠組みが取られています。この事件では、原審が、争議行為が暴力的態様のものではない等の理由から会社は著しく不利な圧力を受けていたとまでいえず、ロックアウトは当該組合員らの要求に対して一切妥協しないために強行されたものであり、防衛手段としての域を超え、攻撃的な意図をもってなされたものであって、正当性を認めることができないと判断したのに対し、最高裁はこの判断を覆し、本件争議行為である時限ストライキは、事前に通告しないか、または直前に通告して開始し、これにより出荷不能となることから会社がその日の受注を返上したころを見計らって解除するという態様で6回にわたり繰り返されたことにより、比較的短時間の時限ストライキであったにもかかわらず、終日、事実上休業の状態とせざるをえなかったこと、これにより受注が減少し、取引先の信用も損なわれた等会社が被った被害は甚大であったことなどから、本件争議行為により著しく不利な圧力を受けていたことは明らかである等の理由から、本件争議行為に対する対抗防衛手段として相当であるとしています(補足すると、①本件被上告人の争議行為においては、時限ストにより、被上告人らの提供した労務が不就労時間にかかる減額後の賃金に見合わず、上告人に賃金負担に依る損害を被らせ、受注の減少等により甚大な損害を与え、上告人が著しく不利な圧力を受けたことは明らかであること、②被上告人らの求める遡及的賃上げ要求は、所属していた運一労組と上告人の間に成立していた、一定期間賃上げ要求を保留する旨の合意の破棄を同労組からの脱退直後に持ち出したものであり、労使間の信義の見地から見て相当な交渉態度とはいえず、上告人が本件ロックアウトに出たこともやむを得ないといえること、③上告人が本件争議行為開始以前から事業を放棄する機をうかがっていたとの事情はなく、本件ロックアウトが攻撃的意図でされたものとは認められないこと、などの事実関係によれば、本件ロックアウトは、本件争議行為の態様、それによって上告人の受ける打撃の程度、争議における上告人と被上告人らおよび連帯労組との交渉態度、経過に関する具体的に事情に照らし、本件ロックアウトをもって防衛手段としての域を超え、攻撃的な意図をもってなされたものと見ることはできず、衡平の見地から見て、組合側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるとされたものです)。
 安威川生コンクリート事件最高裁判決の事案は、従前から、ロックアウトの正当性が認められる典型例とされてきた、怠業や時限スト、波状ストなどにより業務全体が麻痺し、使用者が賃金負担に見合う事業運営が期待できない状況についての判断です(前掲・菅野998頁、前掲・荒木655頁参照)。
 なお、その後も、日光産業ほか1社事件・大阪地堺支判平成22・5・14労判1013号127頁が、怠業の事案で、ロックアウトの正当性を認めています。
(3)ロックアウトの相手方
 ロックアウトが有効に成立した場合、使用者が賃金および休業手当(労働基準法26条)の支払義務を免れる範囲については、当該争議行為をしている組合員に対してのみであり、その他の非組合員や他組合員に対してはその免責効果はないと解している学説もありますが、しかし、ロックアウトの要件が上記のように厳格であるため、かかる事態は事実上、部分ストで「ストライキに参加しなかった労働者が労働をすることが社会通念上不能又は無価値となり、その労働義務を履行することができなくなった場合」(ノースウエスト航空事件・最二小判昭和62・7・17民集41巻5号1350頁)と近似し、使用者には、その他の非組合員や他組合員に対しても、ロックアウトの宣言による労務の受領拒絶により、民法536条2項の帰責事由がない場合が多いことになるであろうと考えられます(同旨、西谷敏「労働法(第2版)」日本評論社・2013年・665頁)。ただし、他の非組合員や他組合員への休業手当に関しては、行政解釈は支払義務を否定するものの(厚生労働省労働基準局編「平成22年版労働基準法上」労務行政・2011年・371頁)、経営上の障害によるとしてその義務を認めるべきと解されます(同旨、前掲・西谷665頁、前掲・荒木652頁、前掲・菅野994~995頁、水町勇一郎「詳解労働法」東京大学出版会・2019年・1132頁)。

対応策

以上を踏まえますと、原則的に、Aのとおり、防御的ロックアウトを頂点として、管理職、非組合員、従前から使用している派遣労働者等による操業継続等は可能です。

予防策

使用者側としては、まずはスキャッブ禁止協定を結ばないこと、組合が争議に入っても企業のダメージを最小化すべき操業担当要員の確保等をシミュレーションして準備しておくこと、ロックアウトに入る場合も想定し、企業の損害の甚大さ、争議行為の不当性等による防御型ロックアウトであることの立証の準備をしておくことなどが求められます。

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