法律Q&A

分類:

使用者の争議対抗手段

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2007年1月補正:掲載

労働組合が争議に入った場合、会社が対抗してとれる措置はありますか?

労働組合が争議に入った場合、会社が対抗して、派遣労働者を導入したり、部分ストやサボタージュに対抗してロックアウトなどの措置があると聞きましたがどのような法的問題があるのでしょうか。

回答ポイント

 労働組合が争議に入った場合、原則として、会社が対抗して、操業を継続すること自体は禁止されていませんが、争議時に、新たな職業紹介を受けたり、派遣労働者を受け入れたりすることは禁止されています。なお、部分ストやサボタージュに対抗して、一定の場合、ロックアウトをすることはできますが、ストを潰すため先手を取る形の積極的なロックアウトは認められません。
解説
1 操業の継続
(1)操業の自由
 労働組合が争議に入った場合、原則として、会社が対抗して、管理職や非組合員により操業を継続すること自体は禁止されていません。このための新たな労働者(代替労働者・スト代置労働者)の採用も規制されていません(以下につき菅野和夫「労働法」第7版補正版580頁以下参照)。このことは、ストライキに際して、会社の営業用バスを組合の支配下に置いた車両確保行為が威力業務妨害罪に当たるとした判例(最2 小判昭和53.11.15 山陽電気軌道事件 刑集32巻8号1855頁)が、「使用者は・・・ストライキ中であっても業務の遂行自体を停止しなければならないものではなく、操業阻止を目的とする労働者側の争議手段に対しては操業を継続するために必要とする対抗措置をとることができる」などと判示しているところからも明らかです。

(2)職安法等の争議不介入条項

 但し、争議時に、新たな職業紹介を受けたり、派遣労働者を受け入れたりすることは禁止されています(派遣法20条や職安法20、34条、42条等の争議不介入条項)。もっとも、ここで禁止されている派遣や紹介は、同盟罷業又は作業所閉鎖が行われて以後、新たに労働者派遣や紹介をすることです。例えば、派遣では、「現に、労働者派遣をしている場合には、その範囲内で引き続き労働者派遣をすることまで禁止するものではありません(同盟罷業又は作業所閉鎖中に同一内容の契約の更新、更改を行うことも許容される)。ただし、従来から労働者派遣はしていても派遣労働者を増加させるような行為は許されません。同盟罷業又は作業所閉鎖が予定されている場合に、その直前に、新たに労働者派遣をすることは法の趣旨に反するものであり、同様に許されないものと考えられる」とされています(労働者派遣事業関係業務取扱要領)。

 なお、平成18 年3月1日からは、社会保険労務士に関する争議不介入の規制は廃止されていることに注意して下さい(社会保険労務士法23条は削除)。これにより、社会保険労務士が、争議行為への対策の検討、決定に関与できることになりましたが、団体交渉の代理人となる業務は引き続き行うことはできません。

(3)スキャップ禁止条項

 労働組合と使用者間に、ストライキ中のスト代置労働者(スト破り)の採用禁止条項(いわゆるスキャップ禁止条項)が締結されている場合、使用者がこれに違反すれば、協約違反の責任が生じます。具体的には、組合から使用者に対する損害賠償や違反行為の差し止め請求が可能と考えられます。しかし、使用者の違反に対して、組合が対抗上、実力でスト破りの阻止行動、例えば、ピケッティングによるスト代置労働者の入構阻止などが許されることにはならないと解されています。しかし、組合の行為に対する懲戒処分などの適否が争われる際に、使用者側の協約違反が、処分の相当性などの観点から懲戒権の濫用の有無を判断する際に考慮されることは争いがないでしょう。

2 ロックアウト
(1)ロックアウトの意義
 ロックアウト(労調法7条等では作業所閉鎖)とは、「使用者が労働争議の相手方である労働者達に対し労働争議を有利に導く手段として、労務の提供を集団的に拒絶したり、事業場から集団的に締め出し(ないし退去を求め)たりする行為」(菅野・前掲 581頁以下、東大労働法「注釈労働組合法」上巻466頁以下等参照)ですが、その行為の組合への大きなダメージ等を考慮し以下のような法的処理が図られています。

(2)ロックアウトの有効要件と効果

 判例(最3小判昭和50.4.25 丸島水門事件 民集29巻4号481頁)は、いわゆる攻撃的・予防的ロックアウトは認めず、いわゆる対抗的ロックアウトのみを認め、使用者の対抗的ロックアウトについて、労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、使用者の受ける打撃の程度等に照らし、衡平の見地から対抗手段として相当なものと認められる場合には、正当な争議行為として、賃金支払義務を免れるとしています。

 その後の判例でも、組合の平和義務違反の行動に藉口して、組合の要求事項につき使用者に有利な解決を図ることを目的としたロックアウト(最判昭 50.7.17 ノースウエスト航空事件 労経速916号3頁)、使用者が一方的に実施した新交替制を組合に承認させるために、組合の新交替制反対スト解除後も21日間継続したロックアウト(最2小判昭58.6.13 日本原子力研究所事件 民集37巻5号636頁)などは攻撃的ロックアウトとして、正当性が否定されています(菅野・前掲584頁。近時の東京地判平15.12.26労判893-163 三一書房労働組合(建物明渡等請求)事件では、ロックアウトの違法性を理由に組合による違法占有に対する損害賠償請求を権利の濫用に当たり許されないとされています)。

 その中で最近、控訴審では、攻撃型ロックアウトとして違法とされていたものが、時限ストライキ等の争議行為のため受注を返上せざるを得なくなったことなどにより損害を被った生コンクリート製造販売業者がしたロックアウトが,争議行為に対する対抗防衛手段として相当であり,使用者の正当な争議行為と認められ賃金支払義務を免れるとされ、逆転して適法と判断された判例(最三小判平成18・4.18労判915-6 平成安威川生コンクリート工業事件)が現れ、注目されます。同判決では、上記判例を踏まえたうえで、[1]労働組の争議行為においては、時限ストにより、組合員らの提供した労務が不就労時間にかかる減額後の賃金に見合わず、会社に賃金負担に依る損害を被らせ、受注の減少等により甚大な損害を与え、会社が著しく不利な圧力を受けたことは明らかであること、 [2]労働組合らの求める遡及的賃上げ要求は、所属していた運一労組と会社の間に成立していた、一定期間賃上げ要求を保留する旨の合意の破棄を同労組からの脱退直後に持ち出したものであり、労使間の信義の見地から見て相当な交渉態度とはいえず、会社が本件ロックアウトに出たこともやむを得ないといえること、[3] 会社が本件争議行為開始以前から事業を放棄する機をうかがっていたとの事情はなく、本件ロックアウトが攻撃的意図でされたものとは認められないこと、などの事実関係によれば、本件ロックアウトは、本件争議行為の態様、それによって会社の受ける打撃の程度、争議における会社と労働組合らおよび連帯労組との交渉態度、経過に関する具体的に事情に照らし、衡平の見地から見て、組合側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるとされ、本件ロックアウトをもって防衛手段としての域を超え、攻撃的な意図をもってなされたもので正当性を認めることができないとして一審判決を変更した原審判断のうち、上告人の敗訴部分が破棄され、労働組合員らの賃金請求を棄却した一審判決が相当とされたものです。

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