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団交の日時・場所の決定方法

弁護士 木原 康雄(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2011年01月:掲載

団交の日時・場所の決定方法

当社福岡支店の従業員が、福岡で個人加盟の合同労働組合に加盟し、労働条件について当該労組から団体交渉の申し入れがありました。当社としては、東京の本社で対応することとし、交渉の場所も東京都内に指定しました。しかし、労組があくまで福岡での開催を求めたため、団体交渉に応じないでいたところ、労組から不当労働行為であるとの主張がなされました。当社は、労組の一方的な指定に応じなければならないのでしょうか。

東京に限定することに合理的理由があるとはいえず、正当な理由なき団交拒否であり、不当労働行為とされる可能性が高いといえます。

1 団交の日時・場所の決定方法
労働組合法上、使用者は「正当な理由」なくして団体交渉を拒んではならないとされており(7条2号)、これに違反した場合には、不当労働行為となります。したがって、この「正当な理由」の有無が問題となりますが、団体交渉の日時・場所は、もともと労使双方が話し合って取り決めるべき事柄ですから、組合側が一方的に指定した日時・場所について、会社側の都合がつかない場合に、合理的な理由があって期日の延期や変更を求めるのであれば、正当な理由があるといえ、不当労働行為にはなりません(清本鉄工所事件・宮崎地労委昭29・4・25・命令集10号140頁)。たとえば、労組が事業場内での団交渉を要求したのに対し、会社側が団交場所を事業場外とすることに固執した場合でも、顧客への影響などを避けるとの合理的な理由があるなどとして、不当労働行為にはならないとした裁判例があります(四条畷カントリー倶楽部事件・大阪地判昭62・11・30日・労判508号28頁)。
2 地理的に離れた場所である場合
それでは、本問のように、労使双方の指定が、地理的に離れた場所である場合はどのように考えればよいでしょうか。この点、中央労働委員会は、日本モーターボート競走会不当労働行為再審査事件(平成22年5月10日)において、次のような判断をしています。すなわち、まず、組合員の就業場所等、当該組合と使用者の労使関係が展開している場所を基本としつつも、使用者がそれ以外の場所を指定したことに合理的理由があり、かつ、当該指定場所で団交をすることが当該組合や組合員に格別の不利益をもたらさないといえるときには、正当な理由があると認められ得るが、これらの事情が認められない場合には、他に特段の事情がない限り、組合が開催場所に同意しないことを理由に団交を拒否することには正当な理由が認められないとしました。その上で、福岡市内で団交を開催しても、法人本部から赴くことが必須ではなく、県競走会を代表して団交に当たってきた福岡所在の理事らが交渉担当者となることができ、妥結については適宜の措置をとれば足りること等から、東京都内に限定することに合理的理由があるとはいえず、また、東京での団交は、福岡県内を中心に活動している組合や組合員に格別の不利益をもたらすといえ、したがって、会社が、組合が開催場所に同意しないことを理由に団交を拒否したことには正当な理由がないとしました。
3 結論
本問の場合も、「本社対応」との理由だけでは、東京に限定することに合理的理由があるとはいえず、正当な理由なき団交拒否(不当労働行為)であるとされる可能性が高いといえます。

対応策

労働者にとっては、使用者と交渉するために遠隔地に移動しなければならないというのでは経済的にも、時間的にも負担が大きいのに対し、使用者はそれほどの負担なく対応可能であるといえます。公平の観点からみれば、上記中労委が指摘するように、組合員の就業場所等、当該組合と使用者の労使関係が展開している場所が基本となると考えなければならないでしょう。不当労働行為と認定された場合、労組は、労働委員会から、使用者に対して就業場所での団交を義務付ける救済命令を受けることができます。使用者にとってこのデメリットは大きく、安易な団交の拒絶は避けるべきです。

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