法律Q&A

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後継者の不存在

弁護士 船橋 茂紀
1997年4月:掲載(校正・大濱 正裕 2007年12月)

私には後継者がいません。私がなきあと会社をどうしたらよいでしょうか。

当社は、私が一代でたたきあげた会社ですが、最近になってようやく経営が安定してきてほっとしていましたが、そろそろ隠居しようと思って、跡を継いでくれると思っていた一人息子に話したところ、「自分は自分の道を行く。父さんの会社を継ぐつもりはない。」などと生意気な事を言っています。親戚には、私の会社を安心してまかせることができる人がいません。社内には昔からよく仕えてくれた優秀な番頭が一人います。私の会社を守っていくためにはどうすればよいでしょうか。

解散するか、M&Aするか、しかるべき人物に経営を任せるかなどの選択ができます。

1.総論
 中小企業の経営者の場合、自分が創りあげた会社を身内の者に継いでもらいたいと考えるのは自然なことです。しかし、身内の者にしかるべき承継者がいない場合には、会社を一代限りでたたむか(解散の方法)、しかるべき人に会社を売却してしまうか(M&Aの方法)、身内のものをオーナーとして経営を社内の優秀な者に委ねるか(所有に徹する方法)しなければなりません。
2.解散の方法
 解散をすることにより、オーナーは、会社の財産の増殖分を残余財産の配当という形式で払戻を受けることができます。事業をたたんで現金化して、老後に備えるというのも一つの選択方法です。但し、この方法の場合、清算所得に対して法人税が課されるとともに、配当金額についても所得税が課されるなど、税金の関係で手取額が少なくなってしまう危険性があります。会社を引き取ってくれる第三者がある場合には、M&Aの方式の方が得なケースが多いと思われます。
3.M&Aの方法
 M&Aには、会社の全部を譲渡する方法のうち、合併、株式の売却、株式交換などが考えられます。
いずれの方法が適切かは、ケースバイケースで一概にいえませんので、やはり弁護士などの専門家に相談することが不可欠でしょう。また、税務面などの問題もでてきますので、税理士、公認会計士との連携も必要となってくる可能性もあります。 M&Aを成功させるためのポイントとして、多くのポイントが挙げられますが、もっとも基本的なポイントは、売却する会社の価値を高める努力をすることに尽きるといえます。具体的には、[1]業績の改善への努力[2]貸借対照表のスリム化[3]役職員への権限委譲[4]各種社内規定類の整備[5]株主の事前整理[6]コンプライアンス遵守などがあげられます。近年では、親の会社を承継する子供が著しく減少してきており、中小企業におけるM&Aの件数は増加しています。
4.所有に徹する方法
 オーナーは株式の所有者として株式配当等の利益を享受し、経営については、社内・社外の優秀な人材に任せるという方法です。オーナーとしては、株主総会を通じて、取締役を選任・解任することで会社経営をコントロールする方法です。但し、気を付けておかなければ、取締役会の決議で新株を発行することができますので、いつのまにか自己の持分比率が薄められているという事態も発生しかねませんので、注意が必要です。

対応策

M&Aの仲介機関に相談し、会社を引き受けてくれる第三者を探すか、息子が改心するまで番頭に経営を任せるかするのが良いのではないでしょうか。煩わしさを回避して隠居するというのであれば、解散してしまうのも一つの選択です。

予防策

会社の解散にも、M$Aにも、番頭を代表取締役にするにも、一定の法的手続が必要ですので、手続を履践して下さい。

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