法律Q&A

分類:

第5回 健診後の軽減措置一般

筒井 剛(弁護士・ロア・ユナイテッド法律事務所)
(1)労安法上の規定
 法定健康診断(労安法66条1乃至5)及びその結果に基く労働者の健康を保持するための措置としては「当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備その他の適切な措置を講じなければならない。」(労安法66条7)ことが要求されている。また、法定一般健康診断は健康管理上何らかの措置が必要であるかどうかというスクリーニング、健康診断の結果、健康障害のおそれがある者については、更に医療の場において精密な措置を行いあるいは治療をすることが必要となる。
(2)裁判例上認められた諸措置
 裁判例も、労安法の規定を受け、同様又はその周縁に、より厳格な健康配慮義務の一環としての増悪防止措置義務を措定している。

a.診断結果の告知義務
 先ず、企業が健康診断の結果を従業員に告知すべきとしている(京和タクシー事件・京都地判昭和57.10.7。なお、HIV感染に関する健康情報と従業員のプライバシーとの関係については 4参照 )。

b.診断結果に応じた事後的な増悪予防措置義務の具体的内容
 次に、診断結果に応じた、就労、勤務時間に関する適切な措置による、事後的な増悪予防措置義務の具体的内容として、例えば、腰痛に関する空港グランドサ― ビス・日航事件・東京地判平成3.3.22前掲は、次のような、従業員の健康状態に応じた適切な休養付与及び配置等に関する安全配慮義務(病状に関する嘱託医の診断結果に基きその結果に応じた、就労、勤務時間に関する適切な措置及び管理体制確保による、事後的な腰痛増悪予防措置義務)を認めている。即ち、 [1]就労能力低下者に対する作業指示に見合う作業の嘱託医への問い合せ等による特定指示義務、[2]作業内容の変更における嘱託医への諮問義務、[3]就労制限者の制限違反への作業中止等の措置及び管理体制確保義務に、[4]本人の承諾・希望の有無にかかわらない嘱託医による診断に基く勤務時間または作業内容の変更措置義務及び管理体制確保義務、[5]嘱託医の指示に即応できる人員確保等の措置及び管理体制確保義務を措定。裁判例が、[6]の人員確保措置といういわば経営者の裁量権に属する領域でも、使用者の安全配慮義無違反を認めている点に注目すべきである。

c.労働環境の改良義務
 多くは、健康診断の結果以前の事前の作業環境管理義務としての問題となるが、事後的な増悪防止措置の一環としても問題となり得る。例えば、腰痛の事件・名古屋埠頭事件・名古屋地判平成2.4.27前掲でも、「腰痛部に負担がかからないように、本件クレーンの改良等に努めるべき義務があり、また腰痛症に罹患した原告に対し、その病勢力が増悪することのないように措置すべき義務」が措定されている。
 但し、高知営林局白ろう病上告事件・最二小判平成2.4.20労判561号6頁「社会通念に照らし相当と認められる措置を講ずれば足りる。」としている。

d.休憩の確保による事前の予防措置義務務
 さらに、事前の作業条件管理義務についても、事後的な増悪防止措置の一環としても問題となり得る。例えば、腰痛の事件でも、「連続二日の深夜勤務に従事する作業員らが」椅子の不足により床に座る状況や「昭和四七年後半以降昭和49年にかけて、客室第一課職員の約一割ないし二割の者が腰痛を訴えて嘱託医の診察を受けていたこと」「などを総合して勘案すれば」「休憩場所について十分な休憩を取れる設備を整備するなどの適切な措置を取るべき義務、」として、発症後の増悪防止義務としての休憩の確保義務が措定されている(空港グランドサ―ビス・日航事件・東京地判平成3.3.22)
e.診断に基く勤務時間または作業内容の変更等の措置義務履行への違反の効果

 企業による診断に基く勤務時間または作業内容の変更等の措置義務履行への違反の効果として、[1]労災認定における業務起因性の認定要素や(第3の二)、[2]安全配慮義務違反に基く損害賠償の対象となり得ることは(第3の一)、前述の通りであるが、裁判例においては、更に、[3]じん肺のような特殊な労災の場合には、じん肺罹患防止措置履行請求権も認められている(日鉄鉱業松尾採石所事件・東京地判平2.3.27)。以上

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