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有期労働契約の雇止めの有効性

弁護士 石居 茜(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2019年2月掲載

有期労働契約の雇止めの有効性

【 状況 】
当社では、清掃業を営んでおり、基本的に主として客先で清掃業務に従事してもらう従業員は1年間の労働契約を締結しています。期間満了で契約終了としたい従業員がいるのですが、契約終了できるのでしょうか。

雇止めの法理の適用により、更新拒絶について、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、更新拒絶は無効とされる可能性があります。

【 解説 】

1 労働契約法19条について

ご質問のような有期労働契約を期間満了で終了させる場合、従業員が継続を望んでいるのに会社の方で終了を通知する場合には、更新拒絶(雇止め)と言われ、裁判例の雇止めの法理が適用されます。

これは、現在では、労働契約法19条に法文化されています。

有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合(同条1号)、または、労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合(同条2号)には、雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、雇止めは無効とされ、会社は、同一の労働条件で更新又は労働者の契約締結の申し込みを承諾したものとみなされ、契約期間を含め、労働条件は同一条件で成立するとされているのです。

2 雇止めに関する裁判例について

裁判例では、労働契約法19条1号、2号に該当するかどうかについては、雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などが考慮されています(進学ゼミナール予備校事件・最三小判平成3年6月8日労判590号6頁)。

多数の裁判例の中には、初めての更新などのケースで、雇止めの理由を求めない判例もありますが、有期労働契約が通常更新を前提としていて、同じ待遇の労働者が更新されている場合などには、1回目の更新であっても、更新拒絶の合理的理由を要求する裁判例もあります。

他方で、他の従業員と区別され、臨時性の強い従業員として雇用されたことが明らかな場合は更新の期待はないとされ、更新拒絶が有効とされている裁判例もあります(上記進学ゼミナール事件等)。

また、当初から更新しないことを明確に説明し、契約書等にも更新なしと記載されている場合や、更新回数や労働契約期間の限度を当初の契約から説明し、契約書にも明記していたような場合には、更新への合理的期待はなく、雇止めは有効とされた裁判例もあります(東京地下鉄事件・東京地判平成22年3月26日・労経速2079号10頁など)。

なお、一度更新もあり得るとの条件で有期労働契約を締結した後、契約期間中に、会社が従業員と最終更新の合意をすることがあり、その有効性が問題となった事例もあります。裁判例の中には、会社が説明会を開き、労働者が契約書に押印をしていた事案で最終更新合意を有効とした裁判例もありますが(コカ・コーラボトリング事件・大阪地判平成17年1月13日・労判893号150頁、日立製作所事件・東京地判平成20年6月17日・労判969号46頁など)、これらの事例は、一度発生した労働者の更新への期待と権利を奪うものであることから、労働者の自由意思による合意といえるか慎重に判断されることが多く、最終更新合意を無効とし、雇止めを否定した裁判例も少なくありません(東芝ライテック事件・横浜地判平成25年4月25日・労判1075号14頁)。

3 まとめ

以上から、有期労働契約の雇止めは、当初から臨時性のある職種として、更新回数や労働契約期間を契約書等で明示し、説明もしている場合などを除き、更新があることも前提に雇用した場合には、雇止め法理における更新の期待があるとされ、裁判で争いになったときは、合理的理由を求められる場合が多いと思われます。

労働契約法18条により、有期労働契約が更新され、5年を超えた場合には、労働者に無期転換権も発生します。会社は、このようなことを考慮の上、採用計画や人事制度の設計を整える必要があります。

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