SNSを利用した従業員トラブルの対処法は?
当社は、居酒屋を経営しています。先日、当社のアルバイト従業員が、お客様が飲み残した日本酒を再び日本酒のビンに入れる動画に「#再利用」というタグをつけて自身のInstagramに投稿したところ、非難が殺到して問題視され、インターネット上のニュースなどで当社名とともに大きく報じられてしまいました。このような場合、どのように対処したらよいのでしょうか。
事実関係を確認した上で、マスコミ対応、プレスリリース等を速やかに行う必要があります。また、従業員の懲戒処分、損害賠償請求の必要性、刑事告訴などを検討するなどの対応も必要で、さらには、再発防止策を講じることも検討しなければなりません。
1 従業員によるSNSを利用したトラブルについて
近時、いわゆるSNSの利用に関して、トラブルが発生するケースが増えています。SNSとは、ソーシャル・ネットワーキング・システムの略称で、Twitterや、Facebook、LINE、Instagramなどが有名で、これらのサービスは多くの人が利用しています。
そして、SNSの発達、普及に伴い、従業員によるSNSを利用したトラブルが増えてくるようになり、平成29年ころまではTwitterによる不適切な投稿が多く見られ、最近では、Instagramに不適切な動画の投稿が行われるケースが増えています。
SNSは、仲間内で利用されることも多いのですが、匿名性であることとあいまって、誹謗中傷や情報漏えいなどに利用されるリスクもあり、また、一度投稿された内容は、たとえ削除をしたとしても、インターネット上のブログや掲示版などと同じく、世界中に拡散される可能性があり、かつ、削除も困難な状況となります。
そのため、企業としては、事後的な対応はもちろんのこと、このようなトラブルを発生させないための事前の防止策を講じる必要があるということが言えます。
2 本件の対処法について
本件は、居酒屋が、提供する飲料を再利用していると疑わせるような投稿がされており、会社の信用等を毀損する可能性のある重大な行為です。早急な対応が必要となります。
まずは、事実関係の調査が必要です。飲み残した日本酒を再び日本酒のビンに入れるという行為が実際にあったのか(その真似をする行為だけで、中味は水であったりしたという事情があったのかなど)、あるいは、実際に「再利用」するような行為(すなわち、お客様に飲み残しを提供するような行為)があったのかを速やかに調査する必要があります。
そして、調査結果を踏まえ、マスコミ対応、プレスリリース、あるいは自社ホームページがある場合には、そこでお詫びとともに事実関係についての説明をすることも考えられます。また、投稿の削除についても、従業員本人に依頼する等、速やかに対応する必要があります。
さらには、調査結果を踏まえ、従業員の懲戒処分、当該従業員に対する損害賠償請求の検討も必要となります。なお、懲戒処分については、実際にお客様に提供していたのか、それが店ぐるみで行われていたのかなどの事情の有無を踏まえ、場合によっては、懲戒解雇という重大な処分にすることも考えられます。
また、お客様に提供していたという事実があれば、お客様に対する説明、謝罪、飲食費の返還及び健康被害の有無の確認・調査なども必要になります。
これに加えて、従業員を刑事告訴するということも検討される場合があります。本件でも、投稿の内容が事実ではない場合(実際にお店で飲料の再利用をしていなかった場合)、信用毀損罪(刑法233条)に該当する可能性があります。
3 再発防止策について
なお、本件対応と併せて、今後の再発防止策が必要となります。
上記のような、厳しい懲戒処分や、損害賠償請求、さらには刑事告訴などを行うことで、他の従業員に対するその後の予防効果が生じるという側面があります。
また、社内規程の整備、社内教育の徹底などの対応や、さらには、時給の見直しを含むアルバイトの処遇についても再検討する必要があると言えます。
対応策
上記のとおり、マスコミ対応、プレスリリース等を速やかに行う必要があり、また、従業員の懲戒処分、損害賠償請求の必要性、刑事告訴などを検討する必要があります。
予防策
上記のような、厳しい懲戒処分や、損害賠償請求、さらには刑事告訴などを行うこと、また、社内規程の整備、社内教育の徹底などの対応や、さらには、時給の見直しを含むアルバイトの処遇についても再検討する必要があります。