法律Q&A

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労働審判手続 対応と注意点

弁護士 中村 仁恒(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2019年7月掲載

元従業員から労働審判を申し立てられました。労働審判手続の流れと対応にあたっての留意点を教えてください。

労働審判手続は原則として3回以内の期日で終了します。また、労働審判手続においては、第1回期日での主張・立証が重要となるため、第1回期日までに周到な準備をする必要があります。

  1.  労働審判手続は、特別な事情がある場合を除いて、3回以内の期日において審理を終結しなければなりません(労働審判法15条2項)。そして、当事者は、やむを得ない事由がある場合を除いて、第2回期日が終了するまでに、主張及び証拠の提出を終わらせなければなりません(労働審判規則27条)。
     実務においては、第1回期日において、文書等の取調べと関係者からの事情聴取を終わらせたうえで、労働審判委員会から調停案あるいは調停案の概要が示されることが多くなっています。第1回期日に示された調停案あるいは調停案の概要を持ち帰って検討し、調停成立の可能性があれば、第2回期日で協議して調停案を詰め、第2回期日で調停成立となるか、あるいは再度持ち帰って検討し、第3回期日でさらに内容を詰めるという流れになります。
     3回以内の期日で調停を成立させるためには、第2回及び第3回は、調停案を詰めるための期日とする必要があります。そのため、第2回期日に新証拠を提出して調停案の大幅な変更を求めるような主張・立証活動をすると、調停成立はかなり難しくなります。自らの主張内容を十分に反映した調停案で和解するためには、第1回期日までに、主張を整えた上で、それを裏付ける証拠を十分に揃える必要があります。
     当事者と代理人が綿密に打合せを行ったうえで、提出すべき証拠を確認するとともに、関係者の出頭の確保のためのスケジュール調整も必要となります。
  2.  なお、当事者の合意が整わず調停が成立しない場合には、労働審判委員会が、当事者間の権利義務関係及び手続の経過を踏まえて、審判を行います。
     審判の内容は、双方の主張・立証を踏まえて決まりますので、審判の内容を有利にするためにも早期に充実した主張・立証が必要となります。
     審判は、審判書を作成して行われるか、全ての当事者が出頭する期日において主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により行われます(労働審判法20条3項及び6項)。
     審判に不服がある場合には、審判書の送達、あるいは期日における告知から2週間以内に異議を申し立てる必要があります。上記のとおり、期日で告知を受けた場合にはその時点から起算されますので、異議申し立て期間に注意する必要があります。
     審判に対して異議が申立てられると、審判は効力を失い、訴訟手続に移行することとなります(労働審判法21条3項、22条1項)。
     なお、争点整理や証拠調べに多くの時間が必要となり、労働審判手続きに適さない事案については、労働審判委員会の判断で手続を終了させることもあります(労働審判法24条1項)。

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