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経営者・役員によるパワハラへの対応

弁護士 髙木 健至(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2019年8月掲載

経営者・役員によるパワハラへの対応(間接的被害者からの損害賠償請求の可否)は?

新任の社長が、営業成績が向上しない部下Aに対し、「君の給与は高額過ぎる。50歳代の社員は会社にとって有用でない。」、「給料泥棒と言われても仕方が無い」、などの人格非難発言を続けた結果、部下Aは、上記発言を受け始めてから1ヶ月後に耐えられなくなり退職願を提出し退職しました。
また、部下Aへの発言を見聞きしていた部下Bも、部下Aから退職する旨伝えられ、いずれ自分も同じような対応を受け、退職を強いられるであろうと考え、部下Aが退職届を提出した翌日に退職願を提出し退職しました。
部下A・Bから、今後どのような金銭的な請求を受けることが想定されますか。

本件において、社長の発言は、違法なパワーハラスメント(以下「パワハラ」と記す)に当たると考えられます。当該部下A・Bから、会社に対し代表者の行為についての損害賠償請求(会社法350条)、社長個人に対しては不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を受ける可能性があります。
(フクダ電子長野販売事件・東京高判平29・10・18労働判例1179号47頁(最高裁第3小法廷平30・7・15決定にて上記高裁判決が確定)参照)

1 損害賠償請求の根拠
 まず始めに、パワハラの認定・対応に関しましては、こちらにてご説明しておりますとおりですので適宜ご参照ください。
 その上で、本件では、前記URLにて取り上げられている一般的な事案と異なり、会社の代表者の行為がパワハラと認定された場合が問題とされています。
 一従業員の行為とは異なり、会社の代表者の行為については、「その職務を行うについて第三者に加えた損害」について、会社として責任を負うことになります(会社法350条)。本件のように、社長の行った従業員に対するパワハラ言動について、「その職務を行うについて」行われたものと評価され、会社として責任を負う場合があります。
 したがって、本件のように、直接パワハラを受けた部下Aから会社に対する損害賠償請求(会社法350条)を受ける可能性があります。
 そして、社長個人の不法行為による損害の発生が認められることから、部下Aから社長個人に対する損害賠償請求(民法709条)を受ける可能性があります。

2 間接的被害者からの損害賠償請求の可否
 また、部下Aと部下Bは同じ職場で働いており、部下Bが部下Aに対するパワハラ言動を見聞きしていることを前提に、社長から部下Aに浴びせられていた言葉の内容が部下Bにも妥当する場合において、今後自分も同じような言動を受けると受け止めるのは当然であると評価した上で、いずれ自分も同じような対応を受け、退職を強いられるであろうと考え、部下Bが退職願を提出し退職するに至ったという事情に基づき、部下Aに対する退職強要行為は、部下Bにも間接的に退職を強いるものであるから、部下Bとの関係においても違法な行為に当たると判断される可能性もあります。
 その結果、部下Bからも会社・社長個人に対する損害賠償請求を受ける可能性があります。

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