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民法改正によって変わる残業代請求権等の消滅時効期間

弁護士 岩野 高明(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2020年6月掲載

令和2年4月1日に残業代を請求できる期間が変わったそうですが、どのように変わったのでしょうか。

法改正によりこれまでの過去「2年間」から「5年間」に伸長されましたが、さらに経過措置として、当分の間は「3年間」とされました。したがって、今後は過去3年間の請求が可能になります。ただし、3年間となるのは令和2年4月1日以降に発生する残業代請求権であり、それ以前に発生した残業代請求権の消滅時効期間は、従前どおり2年間です。

 賃金請求権の消滅時効期間については、これまで民法(改正前174条1項)で1年とされていたのを、特別法である労働基準法(改正前115条)で2年に伸長していました。これは、労働者を保護するためです。

  民法(1年) < 労働基準法(2年)

 平成29年5月26日の民法改正により(施行日は令和2年4月1日)、民法上の消滅時効期間が5年に変更されたので、民法と労働基準法との間で消滅時効期間が逆転する事態が生じました。このため、労働基準法をどのように改定するかが注目されました。

  民法(5年) > 労働基準法(2年)

 労働組合は労働基準法も5年とすべきだと主張し、使用者団体はそれでは厳しすぎるとして反対していたところ、改正民法施行間際のギリギリの段階で労働基準法が改正され、駆け込みで「消滅時効期間は5年とするが、当分の間は経過措置として3年とする」という折衷案に落ち着きました。したがって、労働者は今後、過去3年分の残業代を請求できるようになります。

  民法(5年) ≧ 労働基準法(5年:ただし当分の間は3年)

 ただし、消滅時効期間が3年間になるのは、改正法の施行後、つまり令和2年4月1日以降に発生した賃金請求権ですので、それ以前に発生した賃金請求権の消滅時効期間は、従前どおり2年間です。
ところで、残業代の裁判では、未払残業代と同額の付加金の支払を裁判所が使用者に命じることがありますが(労働基準法114条)、この付加金を請求できる期間も、従前の2年間から3年間に伸長されました。

 なお、賃金のうち、退職金だけは、従前から請求権の消滅時効期間が5年間とされてきましたが、この点は法改正後も同様に5年間です。

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