法律Q&A

分類:

派遣労働者にテレワークを実施する場合に留意すべき事項は?

弁護士 難波 知子(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2020年7月掲載

新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、派遣労働者についてもテレワークを実施することを検討しています。派遣労働者にテレワークをさせることはそもそも可能でしょうか。また、派遣労働者にテレワークを実施するにあたり、労働者派遣法等に関して留意すべきことはありますか。

派遣労働者についても、派遣先が自ら雇用する労働者と同様に、積極的なテレワークの活用が推進されていますので、テレワークを実施することは可能です。  
派遣労働者にテレワークをさせる場合には、就業の場所等につき労働者派遣契約の一部変更、派遣元の定期巡回方法の変更、派遣労働者の自宅情報の開示等が必要になる場合があります。

1 派遣労働者にもテレワークを実施することは可能
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、テレワークが有効な対策の1つであり、派遣労働者についても、派遣先が自ら雇用する労働者と同様に、積極的なテレワークの活用が推進されています。 派遣労働者であることのみを理由として、一律にテレワークを利用させないことは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正された労働者派遣法の趣旨・規定に反する可能性すらあります。
 なお、派遣先での派遣労働者に対する指揮命令は、必ずしも対面で実施しなければならないものではありません。業務の内容を踏まえ、テレワークによっても必要な指揮命令をしながら業務遂行が可能かどうか、個別に検討し、テレワークの可否を決定することになります。

2 就業場所等の派遣契約の一部の変更
 労働者派遣契約においては、派遣労働者の就業場所を定めなければなりませんので、派遣労働者にテレワークを実施するためには、就業の場所について、労働者派遣契約の一部変更が必要になる場合があります。その他、労働者派遣契約において、通信環境整備費用、通信費その他、必要な費用負担についても定めておくことが有用といえます。
 このような場合の契約の変更については、緊急の必要がある場合にまで、事前に書面による契約の締結を行うことを要するものではありません。ただし、派遣元事業主と派遣先の間で十分話し合い、合意しておくことは必要です。

(契約変更の例)  
 令和○年○月○日付け労働者派遣契約と同内容で、○○株式会社は、□□株式会社に対し、労働者派遣を行うものとする。ただし、就業の場所は、□□株式会社の△△事業所(テレワークを実施する場合には派遣労働者の自宅)とする。

3 派遣労働者の自宅等の巡回の要否
 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では、派遣元事業主及び派遣先は、派遣労働者の就業の場所を定期的に巡回することとされています。では、派遣労働者に自宅等でテレワークを実施する場合にも、同指針に基づき、派遣労働者の自宅等を巡回する必要があるのでしょうか。
 上記指針においては、派遣元事業主及び派遣先は、定期的に派遣労働者の就業場所を巡回することとされていますが、これは、派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約に反していないことを確認するためのものです。
 したがって、派遣労働者に対して自宅等でテレワークを実施するときは、例えば、電話やメール等により、就業状況を確認することができる場合には、派遣労働者の自宅等まで巡回する必要はありません。派遣元事業主と派遣先との連絡・調整を的確に行うことで、派遣労働者のテレワークが労働者派遣契約に反せず適切に実施されるようになります。

4 派遣先による自宅住所の把握
 派遣先として、派遣労働者の自宅の住所を把握しておきたい場合、派遣会社から教えてもらってもよいのでしょうか。
 厚労省は、テレワークの実施にあたって必要な場合には、派遣先が派遣労働者の自宅の住所を把握することは差し支えないとしています。
 ただし、派遣先からの求めに応じ、派遣元事業主から派遣先に対し、派遣労働者の自宅の住所に関する情報を提供する場合には、派遣元事業主として、派遣労働者本人に使用目的(テレワークの実施にあたって派遣先が住所を把握することが必要であり、派遣先に提供すること)を示して同意を得ることが必要になります。
 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」において、派遣元事業主による個人情報の使用(提供を含む)は収集目的の範囲内に限られており、派遣元事業主から派遣先に提供できる情報は、労働者派遣法に基づいて派遣先に通知すべき事項のほか、派遣労働者の業務遂行能力に関する情報に限られていますが、使用目的を示して本人の同意を得た場合はこの限りでないこととされています。
 また、派遣先として、直接派遣労働者本人から自宅の住所に関する情報を取得する場合には、あらかじめ派遣元事業主に連絡の上、使用目的を本人に示した上で、本人の同意を得ることが必要です。
 いずれの方法においても、派遣元事業主及び派遣先の双方が、労働者派遣法や指針、個人情報保護法の規定を遵守し、派遣労働者の個人情報を適切に取り扱うように注意する必要があります。
 以上につき、新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)「9労働者派遣」問7~9参照

対応策

 派遣労働者についても派遣先が自ら雇用する労働者と同様に、積極的なテレワークの活用が推進されています。
 ただし、派遣元事業主、派遣先事業主ともに、労働者派遣法、指針、個人情報保護法を遵守し、適切に対応する必要があります。

予防策

 派遣労働者という理由だけでテレワークの対象から外すことは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正された労働者派遣法の趣旨・規定に反する可能性すらあります。派遣労働者の業務の内容を踏まえ、テレワークによっても必要な指揮命令をしながら業務遂行が可能かどうか、個別に検討する必要があります。
 派遣労働者にテレワークを実施するにあたっては、予めなすべき事項を整理し、十分な準備をして臨む必要があります。

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