法律Q&A

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新型コロナウイルス感染症に係る労災補償の現状

弁護士 髙木 健至(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2020年9月掲載

従業員が新型コロナウイルスに感染してしまいましたが、労災保険給付の対象となる場合はありますか。対象となる場合は、どのような場合ですか。

労働者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合、業務又は通勤に起因して発症したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。具体的事例及び取扱いに関しては、厚生労働省から通達(「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」基補発 0428 第1号 令和2年4月 28 日)が発せられています。

1 総論
 労働者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合、業務又は通勤に起因して発症したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。

2 各論
(1)医療従事者等
 患者の診療もしくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。

(2)それ以外の労働者
 医療従事者や介護従事者以外の労働者が、新型コロナウイルスに感染した場合、個別の事案ごとに業務の実情を調査の上、業務との関連性(業務起因性)が認められる場合には、労災保険給付の対象となります。

ア 感染経路が判明している場合
 感染経路が判明し、感染が業務によるものである場合については、労災保険給付の対象となります。

イ 感染経路が判明していない場合
 感染経路が判明しない場合であっても、労働基準監督署において、個別の事案ごとに調査し、労災保険給付の対象となるか否かを判断することとなります。
 感染リスクが高いと考えられる業務(①複数の感染者が確認された労働環境下での業務や②顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務)に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)について判断されます。
(ア)①複数の感染者が確認された労働環境下での業務
 複数の感染者が確認された労働環境下での業務とは、労災の請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられます。
(イ)②顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
 顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務とは、小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しています。
(ウ)①②以外の業務
 ①②以外の業務であっても、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)について判断され、労災認定の対象となり得ます。

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