法律Q&A

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雇止め後における無期転換申込みの黙示的な意思表示の認定について

弁護士 中野 博和(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2020年11月掲載

雇止めした有期契約労働者が無期労働契約の締結を明示的に申し込んでこなかった場合、無期転換を認められることはないか。

有期契約を3回ほど更新し、通算契約期間が4年となった有期契約労働者を雇止めしました。当該労働者は、契約の更新及び無期転換を争って提訴してきたのですが、当社に対して明示的に無期労働契約の締結の申込みはしておりません。このような場合、無期転換は認められるのでしょうか。

有期契約労働者が無期労働契約の締結を明示的に申し込まなかった場合でも、黙示的に無期労働契約締結の申込みの意思表示を行ったものと認められることがあります。

 まず、有期契約労働者については、同一使用者との間で有期労働契約が1回以上更新され、かつ通算契約期間が5年を超えている場合、当該有期契約労働者の申込みにより、無期労働契約に転換されます(労契法18条1項)。
 また、有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合において、雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、当該有期労働契約は更新されたものとして取り扱われます(労契法19条)。
 そして、裁判例では、3回にわたり有期労働契約を更新した労働者に対し、雇用主が雇止めを行ったことについて、当該労働者が労契法19条に基づく労働契約の更新がなされ、その後、通算契約期間が5年を超えたことから、同法18条1項に基づき、期間の定めのない労働契約に転換したことを主張した事案において、労契法19条に基づく労働契約の更新を認めた上で、無期転換については、「原告が被告に対し明示的な申込みをしなかったのは本件雇止めを受けたためであること、原告は、平成30年4月13日、本件訴訟を提訴し、当審口頭弁論終結時まで一貫して、本件雇止めが労契法19条によって無効であり同月1日から本件労働契約が更新されたことを理由として、被告に対し、現在も労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び同月から本判決確定までの賃金支払等を請求しており、さらに、同法18条1項に基づき、本件労働契約が無期労働契約に転換した旨の主張もしていることなどを考慮すれば、遅くとも平成31年3月31日までの間に、原告が被告に対し同条同項に基づく無期労働契約締結の申込みの意思表示を行ったと認めるのが相当である。」と判示したものがあります(高知県公立大学法人事件(高知地判令和2年3月17日労経速2415号14頁))。
 そのため、有期契約労働者が無期労働契約の締結を明示的に申し込まなかった場合でも、その後の訴訟での主張内容等から、黙示的に無期労働契約締結の申込みの意思表示を行ったものと認められることがあります。
 労契法19条に基づく労働契約の更新が認められ、さらに労契法18条1項に基づき無期転換が認められた場合、雇止め後の訴訟等が長引けば、その分、就労拒否による逸失利益の額が大きくなり、会社が支払わないければならないバックペイの金額が大きくなってしまいます
 そのため、通算契約期間が5年となるのを間近に控えた有期契約労働者を雇止めする際には、この点を慎重に検討する必要があります。

予防策

 有期労働契約が一定程度反復・継続して更新されている場合において、雇止めを行うにあたり、雇止めの直前の最終の更新にあたり、「今回の更新をもって最終とし、次回の更新をしない」又は「次期の更新がなされないことについて合意する」といった最終更新の合意を当該労働者との間で行うことが考えられます。
 もっとも、裁判例においては、最終更新の合意の効力を認めなかったものも少なくありませんので、最終更新の合意を行うにあたっては、契約を更新できなくなった事情等を当該労働者に対して真摯に説明し、当該労働者に上記事情を十分理解してもらうことが重要となります。

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