法律Q&A

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同一労働同一賃金に関する裁判例を踏まえて企業が対応すべき点

弁護士 石居 茜(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2021年2月

同一労働同一賃金に関して、最高裁の判例がいくつか出たと聞きました。それを踏まえて対応すべき点は何ですか?

賞与、退職金などの性質や支給目的を踏まえ、非正規社員にも正社員との職務内容等の違いに応じた待遇を検討すべきです。

 同一労働同一賃金に関し、令和2年10月にいくつか最高裁判例が出ました。
 東京メトロ(メトロコマース)事件(最判令和2年10月13日・労判1229号90頁)は、その使用者における退職金の性質や支給目的を踏まえて不合理かどうかを判断すべきとしました。そして、正社員は様々な部署等に配置され、業務の必要により配置転換を命じられることがあり、正社員の退職金は、職務遂行能力や責任の程度を踏まえた労務対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有することや、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から様々な部署等で継続的に就労することが期待される正社員に対し支給していることなどを踏まえ、正社員と契約社員の職務内容や組織再編等の当該事案の事情を考慮したうえで、契約社員の10年前後の勤続期間を考慮しても退職金について支給しなくても不合理ではないと判断しました。
 大阪医科大(大阪医科薬科大学)事件(最判令和2年10月13日・労判1229号77頁)も、正社員には賞与が支給されていたがアルバイトには支給されていなかった事案で、正職員の賞与は労務の対価の後払いや一律の功労報償の趣旨が含まれること、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から支給されていたこと、アルバイト職員の業務は正社員の業務に比べて相当に軽易であること、アルバイト職員と同じ内容の仕事をする正職員は数年前からアルバイトへの置き換えが進んでおり、他の正職員に比べて極めて少数となっていたこと、アルバイト職員には、契約社員及び正職員への段階的な登用制度が設けられていたこと、正職員に準ずる契約社員には正職員の約80%に相当する賞与が支給されていたことなどを踏まえ、不合理ではないと判断しました。
 しかしながら、上記最高裁判例は、賞与・退職金の性質や支給目的を踏まえ、当該事案での事情を踏まえて、当該事案では不合理とは言えないと判断したものであり、一般的に賞与や退職金を支給しなくても不合理ではないと判断したわけではありませんので、注意が必要です。契約社員やアルバイトには、賞与・退職金の支給目的を踏まえ、その職務内容、責任の程度、配置の変更の相違に応じた待遇を検討すべきです。
 また、日本郵便(大阪)事件(最判令和2年10月15日・労判1229号67頁)は、扶養手当について、正社員が長期継続勤務を期待されることから、その生活保障や福利厚生を図り、扶養親族のあるものの生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を確保する目的によるものと考えられるとし、その趣旨は反復更新する契約社員にも当てはまるといえ、契約社員に扶養手当を支給しないことは不合理としました 。この事案では、契約社員に年末年始勤務手当、祝日給、夏季冬季休暇などを与えないことも不合理と判断しています。
 さらに、日本郵便(東京)事件(最判令和2年10月15日・労判1229号58頁)は、契約社員に年末年始勤務手当、夏季休暇及び冬期休暇を与えないことを不合理と判断し、私傷病による病気休暇について、正社員には有給休暇を与える一方で、契約社員に対しては無給の休暇のみを与えるという相違は不合理であると判断しました。日本郵便(佐賀)事件(最判令和2年10月15日・労判1229号5頁)も、契約社員に夏季冬季休暇を与えないことは不合理と判断しました。
 これらの裁判例を踏まえると、休暇等の目的を踏まえ、非正規社員の待遇を検討すべきといえます。

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