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コロナ禍で休業する場合、シフト制のパート・アルバイトに対しても休業手当を支給する必要があるか

弁護士 岩野 高明(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2021年5月掲載

新型コロナウィルスに関連する休業の場合でも、従業員への休業手当の支給を要する場合があると聞きました。
この休業手当は、シフト制のパート・アルバイト職員に対しても支給する必要があるのでしょうか。

勤務日数や勤務時間数に関する合意の有無や従前の運用状況によっては、パート・アルバイト職員に対しても休業手当の支給を要すると解されます。

 新型コロナウィルスに関連して休業する場合の休業手当(労働基準法第26条)の支給の要否の判断基準は、厚生労働省が作成したQ&A(令和3年4月21日時点版)などを見てもかなりあいまいです。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に基づく都道府県知事の命令(新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条3項、第31条の6第3項)によって、「法律上休業を強いられる」という場合でなければ、「不可抗力による休業」ではなく「自発的な休業」と評価され、休業手当の支払を要するようにも読めます。なお、上記の命令に違反した場合には、過料の制裁を科されることがありますので(同法第79条、第80条1号)、少なくとも命令に従って休業するのであれば、「不可抗力による休業」といってよいでしょう。
 上記の場合の休業手当の支給の要否を判断した裁判例は、現時点(令和3年5月時点)では存在しないようですが、訴訟になれば、都道府県知事の命令に基づかない休業(例えば、知事の「命令」ではなく、その前段階の「要請」に基づく休業)については、裁判で使用者に休業手当の支払が命じられる可能性がいちおう残ります。コロナ禍で事業活動の縮小を余儀なくされている事業主には、雇用調整助成金の受給資格が与えられますので、使用者としては、同助成金の受給を申請しつつ、従業員に対しては休業手当を支払うのが無難でしょう。
 ところで、休業に際して手当の支払が必要な場合に、シフト制で勤務するパート・アルバイト職員についてはどのように考えるべきでしょうか。シフト制の場合、具体的な労働日や労働時間は、シフトが組まれて労使がこれに合意することによってはじめて定まります。シフトが組まれる前に休業が決まった場合には、個々の休業日数や休業時間数が明確ではないので問題になります。
 この論点については、休業手当の趣旨(=労働者の生活の保障)にかんがみて、「休業がなかったならば勤務したであろう蓋然性」の程度によって支給の要否を判断すべきではないかと思われます。具体的には、たとえば労働日数に関して「週3日」などの合意が労使間に存在し(合意は文書による場合に限らず、口頭による場合や黙示的なものもあり得るでしょう)、かつ長期にわたり合意内容どおりの運用がされてきた実績があれば、「休業がなかったならば週3日の割合で勤務した蓋然性が高い」として、使用者は週3日分の休業手当の支払を要すると考えらえれます。
 これに対して、コンスタントな勤務実績がなく、勤務の頻度にばらつきがみられるという場合には、「休業がなかったとしても勤務したであろう蓋然性は高くない」として、手当を支払う義務はないと判断されそうです。
 一方、休業手当の支給を受けることができなかった労働者に対しては、政府から休業支援金・給付金が支給される場合があります(要申請)。

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