法律Q&A

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労基法施行規則等の改正に伴う押印等の廃止について、留意点などはありますか。

弁護士 中野 博和(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2021年9月

労基法施行規則等の改正に伴う押印等の廃止について、留意点などはありますか。

労働基準法施行規則(以下「労基則」といいます。)に定められている書式については、全て、使用者の行政への届出の書式についての押印等が廃止されたものの、協定書や決議書自体の押印等が不要となったわけではないことにご留意ください。

 36協定届をはじめ、解雇予告除外認定申請書や変形労働時間制に関する協定届など、労基則に定められている書式につきましては、令和3年4月1日に施行された「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令」(令和2年12月22日厚生労働省令第203号)によって、全て、使用者の押印欄が不要となり、記名のみによって届出等が可能となりました(以下、改正前の労基則等に定める書式を「旧書式」、改正後の労基則等に定める書式を「新書式」といいます。)。
 また、就業規則の意見書や寄宿舎規則にかかる同意書につきましては、省令に定められている書式はありませんが、これらの書面における労働者の押印又は署名も不要となりました。
 他方で、協定届や決議届において、協定当事者の適格性に関し、①様式に記載のある労働組合が、事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合である又は労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であること、②当該過半数代表者が管理監督者ではなく、かつ選出方法が適正であること、という2つのチェックボックスが設けられ、協定当事者が過半数労働組合である場合は、①のチェックボックスにチェックする必要があり、協定当事者が過半数代表者である場合は、①、②両方のチェックボックスにチェックする必要があります。
 なお、期限は明らかにされていませんが、当分の間、旧書式を利用することもできます。ただし、旧書式をそのまま用いることはできず、旧書式の押印欄を取消線で削除すること、及び協定届・決議届については、旧書式に、協定当事者の適格性にかかるチェックボックスの記載を直接追記する、又は同チェックボックスの記載を転記した紙を添付することが必要となります。
 また、協定書や決議書における労使双方の押印又は署名につきましては、今回の労基則等の改正は、あくまで行政手続における押印原則の見直しにすぎず、労使の当事者間の手続に直接影響を及ぼすものではないため、厚生労働省としては、引き続き、記名押印又は署名など、労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法で協定等を締結することを求めています(「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令に関するQ&A~行政手続きにおける押印原則の見直し~」1-5)。
 そのため、協定書や決議書等については、行政への届出の書式についての押印等が廃止されたものの、協定書や決議書自体の押印等が不要となったわけではないことにご留意ください。
 また、36協定については、多くの場合には36協定届が36協定書を兼ねるものとされているところ、このように行政への届出書が協定書等を兼ねる場合には、引き続き、記名押印又は署名などが必要となるものと解されます。
 そして、労基則に限らず、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則、労働安全衛生規則、雇用保険法施行規則など様々な法令が求める書式に関し、「押印を求める手続の見直し等のための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令」(令和2年12月25日厚生労働省令第208号)等によって、ほとんどの書式について押印等の廃止がなされています(各書式は厚生労働省のホームページ等に掲載されておりますので、適宜ご確認ください。)。

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