法律Q&A

分類:

新型コロナワクチン接種において、会社としてどのような準備・対応が考えられるか

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2021年10月掲載

若年者も含めた新型コロナワクチン接種(以下、単に「接種」ともいう)が本格化する中、社員が比較的短期間に相次いで接種に臨むことが想定されます。そこで、会社として社員の接種をサポートしたり、業務が滞ったりしないように準備・対応すべきことにはどのようなことがありますか。

法的には接種義務がないことに留意し、若年層の接種忌避傾向を見据え、正規・非正規等の差別なく、接種を受け入れ易く、プライバシーにも配慮しつつ、接種忌避者へのワクチン・ハラスメントの防止等も必要です。

1 接種支援制度構築に際して留意すべき法的課題 
(1)予防接種法上等のワクチン接種に関する法規制 

 第1に、新型コロナワクチン接種に関しては、令和2年12月改正予防接種法によれば、対象者については原則として接種を受ける努力義務の規定が適用され(同法9条)、妊娠中の者については努力義務の規定の適用が除外されています(厚労省HP掲載の「新型コロナウイルス感染症に係る臨時の予防接種実施要領」<以下、「要領」>等参照)。つまり接種を強制できないのです。しかも、心情的だけでなく、体質的に接種を受けられない方(要領第2の1の「予防接種不適当者及び予防接種要注意者」等)も居て、これらの接種忌避者へのハラスメントがないよう指導がなされています(令和2年12月2日成立の予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案に対する衆院の附帯決議第203回国会閣法第1号 附帯決議「二 新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではない。」同旨は、「新型コロナワクチン接種証明の利用に関する基本的考え方について」 令和3年9月9日新型コロナウイルス感染症対策本部<以下「接種証明利用基本構想)という>でも再確認されています)。
(2)個人情報保護法等の課題
 また、接種したか否かは個人情報保護法上の要配慮情報そのものではありませんが(同法2条3項)、前述の接種忌避の際に忌避者から任意の開示された忌避理由としての病歴は、正に、要配慮情報そのものに当たります。また、同法2条3項「その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」に接種の有無に関する情報が政令で明文化されていなくても、同法の趣旨や上記附帯決議から導かれる法的要請や差別防止のためのプライバシー保護の観点からも、接種忌避に絡む情報は高度の保護が及ぶものと解されます(接種証明利用基本構想や多くの企業における接種支援制度でもこの点への配慮を示しています)。
(3)公正な待遇への配慮
 パート有期法8条や派遣法30条の3等の求める非正規労働者への公正な待遇を求める法的要請は、接種支援制度にも適用されることに留意した支援制度の構築が必要です(職域接種の実例では派遣労働者やフリランサーや取引先にも接種を適用している企業も出ています)。

2 接種支援制度の具体的内容
(1)厚労省推奨制度

 厚労省は、「ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましい」として(新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)令和3年10月14日時点版「4 労働者を休ませる場合の措置」問20https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-20)、「①ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した場合の療養などの場面に活用できる休暇制度を新設することや、既存の病気休暇や失効年休積立制度(失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で療養する場合等に使えるようにする制度)等をこれらの場面にも活用できるよう見直すこと、②特段のペナルティなく労働者の中抜け(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認め、その分終業時刻の繰り下げを行うことなど)や出勤みなし(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認めた上で、その時間は通常どおり労働したものとして取り扱うこと)を認めることなどは、労働者が任意に利用できるものである限り、ワクチン接種を受けやすい環境の整備に適うものであり、一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます」と指摘しています。厚労省は、労基法89条1号の義務として「常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、就業規則の変更手続も必要です」としていますが、改正しなければ実施できない訳ではありません。
(2)先進的企業の支援制度の内容
 先進的企業の接種支援制度としては、以下の例などが想定されます。各企業文化や体力に応じて、2回の接種への支援制度を活用し接種忌避者を減らし、集団免疫の獲得を目指すことが、職場での安全衛生だけでなく、国家的公衆衛生にも資するものとなるため期待されています。その際には、前記1の法的留意点のみならず、接種へのインセンティブ策の導入も必要です。なぜなら、2021年7月末までに重症化リスクの高い高齢者の接種がほぼ終了し、今後は、活動的な若年層の接種が拡大するところですが、若年層には接種忌避の傾向が大きいからです(令和3年6月の日経新聞記事では「積極接種派は「18~39歳は38%」に留まる等の記事)。
①付き添いが必要な家族が接種する際の付き添い時間への拡大
②従業員の家族の接種への副反応発症時の看病目的の特別休暇
③休業を要さない程度の軽症の副反応時の在宅勤務
④副反応症状が長引いた場合のコロナ感染対策の実施
⑤期間を当面は2022年3月までとし、延長は感染状況とワクチン接種状況を見て決めること等

対応策

上記ワクチン休暇制度やワクチン未接種へのハラスメント防止規定、プライバシー保護の徹底などの規定の整備の他、その運用マニュアルの導入などで、徹底を図るべきです。

身近にあるさまざまな問題を法令と判例・裁判例に基づいてをQ&A形式でわかりやすく配信!

キーワードで探す
クイック検索
カテゴリーで探す
新規ご相談予約専用ダイヤル
0120-68-3118
ご相談予約 オンラインご相談予約 メルマガ登録はこちら