法律Q&A

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安全運転管理者によるアルコールチェックの義務化

弁護士 織田 康嗣(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2022年7月

令和4年4月より、安全運転管理者による運転者の運転前後のアルコールチェックが義務化されたと聞きました。同年10月施行分もあるようですが、その内容を教えてください。

令和4年4月1日より、運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること、その記録を1年間保存することが求められています。同年10月1日からは、酒気帯びの確認をアルコール検知器を用いて行うこと、アルコール検知器を常時有効に保持することが求められます。

解説
1 安全運転管理者とは

 一定台数以上の自動車の使用者は、自動車の使用の本拠(事業所等)ごとに、自動車の安全な運転に必要な業務を行う者として、安全運転管理者の選任を行う必要があります(道路交通法74条の3第1項)。
 具体的には、乗車定員11名以上のものは1台以上、またはその他の自動車を5台以上(50ccを超える自動二輪車は0.5台として計算)を使用している事業所において、専任が必要となります。なお、安全運転管理者の選任を怠ると罰則(5万円以下の罰金)があります(道路交通法120条第11の3号)。

2 改正の内容
⑴ 改正の背景
 飲酒運転による事故等を背景に、従来はいわゆる緑ナンバーの自動車について求められていたアルコールチェックが、一定台数以上の白ナンバーの自動車を使用する企業にも拡大されることになりました。
 具体的には、同年4月1日から、道路交通法施行規則が改正され、安全運転管理者が目視によるアルコールチェックを行うこと、及びその記録を1年間保存することが求められています(道路交通法施行規則9条の10第6号7号)。本改正に関しては、行政通達(令和3年11月10日警察庁企発412号、丁交指発116号)があり、運用の参考になります。また、各都道府県警察においてもQ&Aを策定しており、これらも参考になります。

⑵ 目視等でのアルコールチェック(令和4年4月1日施行)
ア アルコールチェックの対象
 アルコールチェックは「運転前後」に行うことが求められていますが、ここでいう「運転」とは、一連の業務としての運転をいいます。したがって、酒気帯び確認は、必ずしも個々の運転の直前又は直後にその都度行わなければならないものではなく、運転を含む業務の開始前や出勤時、及び終了後や退勤時に行うことで足ります。そして、「業務」のために運転を開始及び終了した者が対象となるので、通勤や私用のためにマイカーを運転する従業員は対象外となります。このように自宅から事業所までの出勤が目的であれば対象外ですが、目的地への直行直帰など、業務遂行を目的とした運転の場合には、アルコールチェックの対象になることに注意が必要です。

イ 目視等での確認
 アルコールチェックでは、「目視等で確認」として、運転手の顔色(赤くなっていないか)、呼気の臭い(酒の臭いがしないか)、応答の声の調子(ろれつが回っていないか)等で確認することが求められています。また、アルコールチェックの方法は対面が原則となります。
 ただし、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよく、前掲通達によれば、例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、以下のような対面による確認と同視できるような方法も許容されます。

①カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
②携帯電話、業務無線その他の運転者と直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法

 このように対面と同視できる方法が求められており、メールなど対話(通話)出来ない方法ではアルコールチェックを行ったことにはなりません。なお、安全運転管理者の不在時など、安全運転管理者による確認が困難である場合は、副安全運転管理者または安全運転管理者の業務を補助する者に、アルコールチェックを行わせることは差し支えありません。

ウ アルコールチェックの記録の内容
 アルコールチェックを行った場合は、次の事項について記録することが必要です(前掲通達)。なお、⑤のアの事項は令和4年10月1日から行う必要があります。

①確認者名
②運転者
③運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号等
④確認の日時
⑤確認の方法
ア アルコール検知器の使用の有無
イ 対面でない場合は具体的方法
⑥酒気帯びの有無
⑦指示事項
⑧その他必要な事項

⑶ アルコール検知器を用いた確認(令和4年10月1日施行)
 令和4年10月1日からは、アルコール検知器を用いたアルコールチェックが求められ、アルコール検知器は正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことが求められます。そのため、定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用する必要があります。

3 おわりに
 前掲通達や各都道府県警察のQ&A等を参考に、施行日までに必要な対応を行っていく必要があります。また、万が一、運転者の酒気帯びが確認された場合の対応についても検討しておくべきでしょう。懲戒処分の実施を検討するのであれば、必要な社内規程の整備などを行っておくべきです。

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