法律Q&A

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企業内コンピュータ・ネットワーク化に伴う社内規定整備の必要

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)

 企業内コンピュータ・ネットワーク化の急速な進展に伴い、それが引き起こす犯罪や人事管理上のトラブルが多発している。そこで、改めて、インターネット、電子メールを含めた企業内コンピュータ・ネットワーク化に伴う社内規定整備の必要性について、整理してみよう。

 先ず、コンピュータ関連の犯罪に関しては既に、刑法により一応の規制がなされている。

 例えば、背任や横領を隠すため取引に関する情報を入力してあるフロッピーディスクやサーバーへの虚偽記録の入力や経理関係の記録改ざんに関する電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2(1))や、電磁的記録毀棄罪(刑法259条)、電子計算機損壊等業務妨害罪や(刑法234条の2)、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)などだ。

 これらに該当する行為に関しては、強いて就業規則等の改正をせずとも、従前の懲戒規定等に、「刑法その他刑事罰諸規定に該当する行為をなしたとき」などの規定があれば、その適用で処分自体には対応できよう。ここでは、むしろ、それらの犯罪の防止・監視システムや実際の破壊行為に対する損害の極小化のためのデータのバックアップ等によるリスク管理システムの構築が優先されよう。

 次に、上記監視・防止システムや前述の電子メールへのモニタリング(監視)やそれが招く企業の責任などへの対応として、以下のような対応が必要だろう。つまり、就業規則等で、明確に、企業施設であるコンピュータの利用(電子メールを含めたインターネット利用を含む)に関して業務外利用の禁止やそのためのモニタリング実施の明確化、従業員の使うパソコン等のパスワードの届出制と無断変更の禁止や新ソフト・一定のインターネット情報のダウンロード等への上司等の事前承認制、電子メールでの送信方法・内容における人格権の尊重・社会通念上不適切な表現等の禁止、これらの違反に対する制裁等を明文化すべきだ。

 なぜなら、業務研究用のインターネットによる情報検索やその検索文字情報のダウンロードと思いきや、情報量が膨大になり易いアダルト系の画像情報などを取り込まれていたのでは回線容量を超えてシステムダウンを起こしたり、勝手なソフトのインストールが、コンピュータウィルスの蔓延や他のソフトの誤作動を招く危険などもあるからだ。

 なお、モニタリングの実施は、他方で、社内電子メール利用のセクハラ等の人格権侵害などに対しての企業の責任(使用者責任による損害賠償責任等)を招き易いため、前述の内容等への規制が必要となることに要注意だ。

 又、これらのコンピュータの業務外利用判明時には、先ず、前述の懲戒処分が問題とされるが、業務懈怠による懈怠時間相当分の賃金の減額や、インターネットの定額料金での利用をしていない中小零細企業では、アクセス時間に対応する通信費用分の損害賠償の問題なども発生することが考えられる。そこで、少なくともこれらの場合の賃金の減額や賞与・昇給査定との関係や損害賠償の方法等についても明文化しておくことが、実際の処理の円滑化のためのみならず、違反への威嚇効果を狙う観点からも必要だろう。

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