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遺産分割協議で共有した物件の分割方法

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000.09.08
1.管理困難な共有状態
 遺産分割の際に、相続税の申告期限が迫り、細かな詰めをしないままに、取りあえず、法定相続分に従って、配偶者の割合だけ分割したり、全体を共有とした遺産分割協議書が作成されることが今でもあるようです。しかし、協議書作成後に、相続税の捻出のため、共有とした物件の処理や有効利用法について具体的に詰めようとしたことなどをきっかけとして、親族間で紛争となったりした場合、この協議書作成が思わぬ足枷となることがあります。というのは、共有関係は、色々と面倒の基なのです。通常の物件の管理については、持分の過半数で決定できますが(民法252 条)、物件を変更・処分したりする場合には全員の同意が必要なため(同251 条)、実際には動きが取れなくなることが起るのです。そのようなデッドロックの最終解決方法は、共有状態を解消して、物件を分割することです。分割方法について共有者間で円満な話し合いが着けば問題ないのですが、紛争の結果分割となるようなケースでは、そのようなことは期待できません。その場合の解決方法としては、従前から、次の三つの方法が考えられていました。
2.解決方法
 先ず、[1]家庭裁判所に対する「遺産分割後の紛争調整調停」の申立がありますが、遺産分割が一応終了しているため、調停が成立しなかった場合、遺産分割の審判に持ち込んで、現物分割や金銭の精算を含む多様な形での分割を強制することはできません。次に、[2]簡易裁判所に対する「共有物分割調停」の申立ですが、不調となればそれまでです。最後が、[3]民法258 条による裁判所に対する「共有物分割請求」の訴訟です。条文上では、競売や現物分割のみが規定されているため、つい最近までは、競売による金銭での持分に応じた精算となることが多かったのですが、競売では、不動産が時価より相当低くしか評価されないことや、先祖からの土地を手放すのがしのびなく、分割請求に踏み切れないということも多かったようです。

 この問題につき、かねて最高裁は(最大判昭和62・4・21等)、現物分割と金銭による精算を含めた、いわば遺産分割の審判におけると同様な、多様で柔軟な共有物分割の可能性を指摘し、最近は、一部を特定の者に現物分割して、その他の部分を共有のままに残したままでの分割や(最判平成 4.1.24)、共有物を共有者の一人又は数人の所有とし、他の者には持分の価格を賠償させる(最判平成8.10.31)などの多様な方法が認められてきました。これにより、従来のように、競売を恐れて分割請求を諦めたりする必要はなくなりました。

  しかし、未だこの方法も、家裁の遺産分割審判とまったく同様に柔軟な分割方法を認める段階までには至っていないため、先ずは、できる限り、遺産分割を慎重にすることが大切です。

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