法律Q&A

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専門学校等での研修費用の返還義務は?

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000.12.01

質問

勤務先の費用負担で、専門学校等で研修に参加する際、会社から研修終了後3年間は勤務するという約束をさせられました。でも、研修の成果を活かし研修終了後ただちに退職して独立したいと考えた場合、会社に研修費用を返済しないと退職できないのでしょうか?又、返済義務はあるのでしょうか?

回答

 このような場合に、約束違反の退職であるとして会社が違約金を取ることは労基法16条に違反し、労働契約の期間を3年と定めることは同法14条に違反することになります。

 しかし、自由な意思で自発的に受けた研修について、研修終了後の一定期間内の退職の際に、一般の社員が受けていない特別な便宜としての給料以外の授業料など客観的・合理的に算定された範囲での実費の返還を、合理的な方法で求めたり、一定期間後はその返還を免除する制度は、そのことが就業規則等に明記されているならば違法の問題を生じないと解されています(大阪地判昭43.2.28藤野金属工業事件、東京地判平9.5.26長谷工コーポレーション事件等)。

 これに対し、研修・指導の実態が、一般の新入社員教育とさしたる差がなく、使用者として当然なすべき性質のものである場合には、それに支出された研修費用の返還を求めることには、合理性がないとされます(浦和地判昭61.5.30サロンド・リー事件)。最近では、使用者が自己の企業における技能者養成の一環として業務命令で海外分社に出向させ、業務研修させた場合(東京地判平10.3.17富士重工事件)やビジネススクールでの研修を命じた場合(東京地判平10.9.25新日本証券事件)などでも、諸費用の返還合意が一定期間の業務拘束を目的とした違約金の実質を持つものとして違法とされたこともあります。

 従って、質問の場合、諸費用の合意が、研修参加につき自主性と自由な意思が確保され、返還に関する合理的で明確な規定があれば、教育機関の授業料のような実費の返還については会社の要求に応じなければならない場合が多いでしょう。しかし、3年間に亘って退職自体が禁止されることはありません。せいぜい1年乃至3年間の就労を条件とする返還義務の免除と退職の場合の返還義務に関する規定によって事実上の引き止め効果があるだけです。又、返還の範囲も学費を超えて研修期間中の賃金の返還までに及ぶような場合には違法の疑いがあります。ただし、退職の場合の返還方法についても、返還金額が高額に及ぶ場合には、現実的可能性のある返済期間内の返済方法(退職時の給料の4分の1程度の月賦払い等)によらないと事実上退職の自由が制限されるとして労基法16条等の違反の可能性がありますので,これらの点も会社と話し合うポイントとなります。

  従って、今後、会社の費用負担で外部研修を受けるような場合には、以上のような問題を意識して会社の諸規定や特別の合意内容を確認しておく必要があります。

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