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住宅手当が割増賃金の算定対象外に!

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1.平成11年10月1日から住宅手当が割増賃金の算定対象外に
 平成11年10月1日から、改正労基法37条 4項に基づく同法施行規則21条が施行され、同条で時間外・休日・深夜労働に支払われる割増賃金算定の基礎から除外が許される賃金に、住宅手当が追加されました。つまり住宅手当を割増賃金の算定基礎の対象外にすることが認められたのです。しかし、(1)除外される住宅手当とは何か、(2)除外のための手続はどうすればいいのか、(3)何時の賃金から除外できるのかなど、改正規則の利用に関しては、実務上様々な注意点があります。

 そこで、以下、この改正についての通達(平11・3・31基発170号。以下、新通達)を踏まえ、これらの点を検討してみます。

2.従来割増賃金の算定基礎に住宅手当は組み込まれていましたがその合理性には疑いがありました
 現行法令で割増賃金の基礎から除外が許される賃金は、(1)家族手当、(2)通勤手当、(3)別居手当(4)子女教育手当、(5)臨時に支払われた賃金、 (5)一ヶ月を超えて支払われる賃金(賞与等)に限定されています。しかし、(1)乃至(4)の賃金が労働と関係なく個人的事情に左右されるという除外の趣旨からすれば、住宅手当も同様の性格をもっています。そこで、以前から、住宅手当を算定の基礎の対象とする実務(昭27・4・21基収1947)については、労働と関係なく個人的事情によって割増賃金が膨張してしまう不合理性などから、経済界や裁判所からも批判がありました。そこで、この度の改正となったものです。
3.割増賃金算定基礎から除外される住宅手当とは-一律支給のものなどは除外
 以上の経緯から、割増賃金の基礎から除外対象となるには、その住宅手当が、名目の如何に拘らず、住宅に要する費用(住宅の家賃等や持家購入費用等)で、その費用に応じて算定される場合(家賃の一定割合、ロ-ン月額の一定割合の支給などや、費用を段階的に区分して費用が増えるにしたがって額を多く支給する場合など)をいいます。したがって、注意を要するのは、住宅の形態、即ち、賃貸、持家ごとに一定額を一律に支給するものなどや、住宅に要する費用に関わらず全員一律に支給される手当などは、除外の対象にならないということです。
4.住宅手当てを割増賃金の算定基礎から除外するには就業規則等の改正が必要
 しかし、今回の改正は、単に前記の住宅手当を割増賃金の算定基礎から除外することを許しただけで、当然に算定基礎から住宅手当を除外することを義務付けたり、企業に除外する権利を与えたものではありません。したがって住宅手当を算定基礎としてきた全ての企業では、今回の改正を利用しようとすれば、所定の手続を経て(労基法90条等)、割増賃金の基礎に関する就業規則・給与規定(以下、就業規則等という)の改正により、住宅手当を算定基礎から除外しなければなりません。この場合、いわゆる就業規則の不利益変更の問題をクリアする必要があります。労働組合との間に給与に関する労働協約があれば、更に合意により改定するか、期限切れを待つか(労組法 15条(1))、解約予告をなすなどして(同条(4))、その失効を図らねばなりません。
5.いつの住宅手当から割増賃金の基礎から除外できるのか
 以上の問題をクリアしたとして、住宅手当を算定基礎から除外できるのは、理論的には、もっとも早くて、平成11年10月1日以降に発生する賃金についてということになりますが、実務的には、日割り計算の煩雑さ等から事務の簡素化のため、10月21日以降の賃金につき除外する方法などが取られることでしょう。

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