法律Q&A

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改正労基法による使用証明記載事項拡大に伴う企業の対応上の注意点 改正労基法の事業主にとっての盲点

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1 改正労基法により使用証明書記載対象事項が拡大されました
  従来の労基法の下では、労働者が退職に当たって使用者に使用証明を求めることができることとその使用証明書に記載を求めることができる範囲を「使用期間、業務の種類、その事業場における地位及び賃金」に限定していました(同法22条(1))。

  これに対して、平成11年4月1日から既に施行されている改正労基法22条1項は、労働者が使用者に記載を求めることが出来る事項として、「退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)」を追加しました。

2 退職の理由を記載することの表面上の目的
 これは、特に解雇が、リストラ等によるもので、懲戒解雇や本人の責めに帰すべき事由によるものでないことを再就職先などに示す必要から生まれた規定と言われています。つまり、解雇や退職をめぐる紛争を防止し、労働者の再就職活動を支援するために追加したものというのです(改正労基法全般に関する通達であります、平成11年1月29日基発45号参照。以下、基発45号といいます)。

  企業が、元従業員から記載が求められて記載すべき「退職の事由」とは、自己都合退職、勧奨退職、解雇、定年退職など従業員が雇用契約上の地位を喪失した理由です。特に、解雇の場合には「解雇理由」も「退職の事由」に含まれます。

  解雇の理由については、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない、とされています(基発45号)。

3 解雇理由記載の重大な影響-安易な解雇の困難-に注意を
 この要請は、他方で、今回の改正の表向きの趣旨とは異なる目的でこの証明書が使用される危険を発生させます。先ず、企業が、解雇の意思表示自体には書面化の義務等の法的規制が今のところないことろから、解雇理由を明確にせずに解雇したような場合に、解雇された従業員が、この改正規定を用いて解雇理由の釈明請求を求めてくることが既に起こり始めています。この証明書を遅滞なく提出しないと罰則(30万円以下の罰金。改正労基法12〇条)の適用もあり、記載内容への慎重な注意が必要です。つまり、これは表面上の改正理由の裏側に、恣意的な理由なき解雇を抑制しようとの趣旨・含みが入っているものと考えられます。企業としては、解雇権の行使に当たって改めて慎重な理論武装、解雇理由たる事実関係の整理・証明の準備の必要が要請されているのです。
4 証明書記載事項の内容にも注意-名誉毀損等の請求の危険
  あるいは、記載した内容が事実と異なったり、表現に穏当でないものがあった場合には、名誉毀損等や就職妨害として損害賠償を元従業員から請求される危険もあり得ますので、そのような観点からも、記載内容の事実関係の整理・証明の準備への注意を怠ってはなりません。

  但し、労働者が、懲戒解雇の場合のように、解雇理由の記載を求めず、解雇の事実のみの証明を求めているのに、懲戒解雇の旨やその理由を記載するのは、改正労基法22条2項違反となることは旧労基法におけると同様です(基発45号)。

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