法律Q&A

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子会社への内定先切替えの可否

弁護士 鈴木 みなみ(ロア・ユナイテッド法律事務所)

内定者の内定先を子会社に切替えることができるか?

今回の震災によって取引先が倒産したことに伴い、本社の業績が急激に悪化したため、内定者の内定先を、本社から子会社に切替えることを検討していますが、何か問題がありますか。

内定先を子会社に切替えるためには、内定者の同意が必要であり、会社側が一方的に内定先を切替えることはできません。また、本件のような場合、内定先の切替えを拒否したことを理由に内定を取消すためには、整理解雇の要件を満たす必要があります。

1.内定先切替えの法的性質
 採用内定が成立すると、内定者と企業の間に就労(効力)始期付き解約権留保付き労働契約が成立します。内定者の内定先を子会社に切替えるということは、内定者と本社との労働契約を終了させ、内定者と子会社との間に新たに労働契約を成立させることになります。これは、いわゆる転籍出向を内定段階で行うことと同じことになります。
2.転籍出向の有効要件
 出向には在籍出向と転籍出向の2種類があります。在籍出向は、出向元との労働契約に基づく従業員たる地位を保有したまま出向先の指揮監督の下に労務を提供するものであるのに対し、転籍出向は出向元との労働契約を解消(合意解約)した上で、出向先との間で新たに労働契約を締結するものです(岩出・講義(上)・583頁)。つまり、転籍出向は、転籍元との労働契約を解約させることについての同意と、転籍先との新しい労働契約を締結することの同意の、2つの同意を必要とします(菅野・447頁)。

 また、この同意は、原則として、事前の包括的同意は認められず(三和機材事件・東京地決平成4.1.31判時1416号130頁)、例外的に包括的同意が認められる場合というのは、転籍先と転籍元が同一会社であると同一視できる程度に密接な人事交流がなされているような系列企業グループ間の転籍に限られています(岩出・講義(上)・590頁、日立精機事件千葉地判昭和56.5.25労判372号49頁、興和事件・名古屋地判昭和55.3.26労判342号61頁等)。

 したがって、本設問のような場合、転籍出向の場合と同様に、企業側が内定者の合意なく一方的に、内定先を子会社に切替えることはできません。これは、内定成立時に「場合によっては、内定先が子会社に変更になることがある」というような説明をしていた場合についても(このような場合というのはあまり考えにくいですが)、同様であると言えます。
3.内定取消しを回避するための内定先切替え
 ただ、本件のような場合、本社が被災していることから、内定者の内定先を子会社に切替えることが出来なければ、企業としては、内定を取消さざるを得ない事態です(野川・128頁)。
 このような場合において、採用内定の取消しが出来るかという点についてですが、上記述べたとおり、内定段階においては、内定者と企業との間で、就労(効力)始期付き解約権留保付き労働契約が成立しています。したがって、内定を取消すためには、留保された解約権の行使として、客観的に合理的と認められない限りは、適法であるとは言えません。特に、本設問のような経営悪化を理由とする採用内定の取消しは、整理解雇制限法理の適用を受け、整理解雇4要素を満たさない限り、取消しできないことになります。

 本設問の場合、子会社に内定先を切替えることを内定者に対して提案し、その提案を内定者が断ったことを理由に内定取り消しを行った場合、内定先の切替えを提案した事実というのは、整理解雇4要素のうちの「②整理解雇回避努力義務の履行」のところで主に考慮されます。「①人員削減の必要性」という要件については、取引先の倒産により本社の業績が悪化している、という事実によって充足すると考えられますので、「③人員選定の合理性」「④労使間での協議義務の履行」の要素が認められて初めて、内定取り消しを行うことができます。

 なお、新規学卒者の採用内定を取消す場合には、事業主は、あらかじめ公共職業安定所に通知することが必要です(職安法則35条2項)。厚労省の発表によれば、平成22年度の内定取消者598人のうち、東日本大震災を理由とする内定取消しの人数は、469人でした(平成23年9月21日厚労省報道発表「平成22年度新卒者内定取消し状況(8月末現在)」)。

対応策

内定先を子会社に切替えるということは、内定段階で転籍出向を行うことと同じことになるため、内定者の同意なく、企業が一方的に内定先を変更することはできません。したがって、内定先の切替えを行うためには、内定者に説明をした上で、内定先切替えの同意を得るべきです。

予防策

内定者に対し、内定先を子会社に切替えることの提案をしたものの、拒否されたことため、内定を取消す場合には、整理解雇の4要素(特に、「②整理解雇回避努力義務の履行」以外の要素)を満たす必要があるため、他の要素を満たさない限りは内定取消ができないことに留意すべきです。

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