外回り営業社員の居場所をGPSで把握することは許されますか?
外回りの営業社員に対して、会社支給のGPS機能付き携帯電話の携行を義務付け、位置情報アプリ等で居場所を把握する仕組みの導入を検討していますが、従業員からは「プライバシーの侵害だ!」と反発されてしまい、困っています。
就業時間中に合理的な理由により位置情報を把握することは法的には問題ありませんが、就業時間外についてまで位置情報を取得しようとすればプライバシー侵害となりえます。
- 2.就業時間外の位置情報把握
- 他方、就業時間外についてまで労働者の居場所を把握することについては、合理的な理由はなく、プライバシー侵害となり得ます。ナビによる終業時間外の居場所確認の違法性を認め、損害賠償が認められた裁判例もあります(東起業事件・東京地判平24・5・31労判1056号19頁では、ナビシステムの導入は,外回りの多い原告を含む15名の従業員について,その勤務状況を把握し,緊急連絡や事故時の対応のために当該従業員の居場所を確認するという目的があり,当該目的には相応の合理性もあるということができ,そうすると労務提供が義務付けられる勤務時間帯およびその前後の時間帯において,会社がナビシステムを使用して労働者の勤務状況を確認することが違法であるということはできないが,反面,早朝,深夜,休日,退職後のように,従業員に労務提供義務がない時間帯,期間において本件ナビシステムを利用してXの居場所を確認することは,特段の必要性のない限り,許されないとしています)。
GPS携帯電話使用規程を作成するなどして、就業時間外は位置情報アプリを終了させる、携帯電話の電源をOFFにする、などのルールを明確にしておくことが重要です。
対応策
以上のとおり、就業時間中にGPSにより外回り営業社員の居場所を把握すること自体は法的には許されると考えられます。もっとも、導入に際しては、その目的や範囲を事前によく説明した上で、労働者の理解を得ることが重要です。法的には問題がなくとも、反発する労働者に無理に押し付けて士気を下げるくらいなら、自由に外回り営業をさせたほうが仕事の能率が上がることも考えられます。新しく導入する際には慎重に判断する必要があるでしょう。
なお、このGPS機能付き携帯電話で時間と所在確認をしている場合には、労働基準法38条の2の適用要件である「労働時間を算定し難いとき」には当りませんので、事業場外労働のみなし労働時間制の適用は困難となることにも留意願います。
(C)2016 Makoto Iwade,Japan