法律Q&A

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雇止めと試用期間

弁護士 大濱 正裕 2007.01掲載
パラリーガル 岩出 亮 2016.07補正

試用期間を有期契約とした場合、期間満了による雇止めは認められるか?

労働者の適性を評価・判断することを目的として、期間の定めのある新規労働契約を締結した場合において、期間満了によって雇止めを行っても問題はないでしょうか。

上記目的により採用した期間雇用者の雇止めは、同人との契約が1度も反復更新していなかったとしても、勤務成績不良や勤務態度不良といった客観的かつ合理的理由なく安易に行うべきではありません。

1 試用期間を有期契約として締結
ア 社員を雇用する場合、適性や能力を判断するために、一般的には「試用期間」が設けられています。この「試用期間」は、会社が従業員の適格性を判断し、適性がないと判断した場合には本採用を拒否できる解約権がついた「解約権留保付労働契約」と考えられています(最大判昭48・12・12三菱樹脂事件)。そのため、「試用期間」であっても、本採用を拒否する場合には、契約の終了、つまり「解雇」と同程度の基準によってその有効性が判断されることになります。

イ そこで、「試用期間」について、期間の定めのある契約(以下、「有期契約」)として、締結する企業が出てきています。まずは、「有期契約」として締結し、その期間内に問題がなければ、その後については「無期契約」にするという考え方です。逆に、適性や能力等に問題がある場合には、期間満了により契約を終了し、無期契約の締結を行わないことになります。

ウ これは、原則としては、無期契約を終了する「解雇」よりも有期契約を終了する「雇止め」の方が行いやすいと考えられているためです。そこで、ご質問のようなケースにおいて雇止めが可能であるのか、まずは、雇止めに関する判例等に触れた上で、検討していきます。

2 反復更新された有期労働契約の雇止めに関する判例法理、労働契約法19条
ア 「雇止め」については、裁判例の蓄積により以下のような理論が形成されています。それは、「反復更新された労働契約関係は、実質的には期間の定めのない契約と変わりがなく、雇止めの意思表示は「解雇」と実質的に同一であり、解雇に関する労働基準法等の法規制(例えば、労基法18条の2の解雇権濫用法理)が類推適用されるべきである」との理論です。
 判例は上記のような反復更新された有期雇用契約の場合の理論を推し進め、「期間の定めのない労働契約と実質的に同視できない場合でも、雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合は、解雇権濫用法理を類推し、雇止めに合理的理由を求める」との理論を形成しました。ここでいう「合理的理由」について、裁判例では「[1]雇用の臨時性・常用性[2]更新の回数[3]雇用の通算期間④雇用継続に対する期待を持たせるような言動や制度の有無」などの要素を勘案しているケースが多いと言えます。

イ この判例法理は、現在では、労働契約法19条に法文化されています。

3 本件のケースにおける雇止めに関する判例法理
ア 上記判例・法令を踏まえ、ご質問のケースを検討していきます。ご質問のケースでは、今まで一回も契約を更新されていないのですから、上記2の判例法理・法令によれば、労働者の期待利益に合理性がないとして、雇止めが容易に認められるようにも思われます。

イ しかし、最高裁は、仮に一度も更新をしたことがない場合であっても、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。」と判示しました(神戸弘陵学園事件・最三小判平2・6・5)。
 そして、試用期間付雇用契約の法的性質については、解約権留保付雇用契約であると解するのが相当としたうえで、同解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許される」との規範を定立しました。
言い換えますと、①有期契約とした趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、それは実質的には有期契約ではなく、試用期間と変わらない、②その契約終了は、試用期間を終了させる場合と同程度の理由が必要であるとされました。

4 結論
 このように、労働者の適正を判断するために期間を定めて労働契約を締結していた場合、その期間満了で必ず契約が終了するという労使双方の明確な合意があるという例外的な場合を除き、同期間は期間の定めのない契約における試用期間と解釈され、その期間満了という理由だけで雇止めをすることは難しいといえるでしょう。例えば、勤務成績不良や勤務態度不良といった客観的な合理的理由がなければ雇止めをすることはできません。
 したがいまして、仮に新規契約において、有期雇用契約の形式をとっていたとしても、上記のような判例法理等により、解約権留保に客観的合理的理由を要求するといった労働者保護の法理が適用される場合があるので、安易な雇止めは差し控える必要があります。

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