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欠勤した従業員が事後に年次有給休暇を申請した場合の対応は?

弁護士 中村 仁恒(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2018.07

欠勤した従業員が事後に年次有給休暇を申請した場合の対応は?

欠勤した社員が、後日、欠勤した日を年次有給休暇扱いにして欲しいと申出ました。
会社としては事前に申請がなかった以上、欠勤として扱いたいのですが、本人いわく、体調不良によりやむを得ない欠勤であったとのことです。
欠勤した日を年次有給休暇として認めなければならないのでしょうか?

年次有給休暇(以下、「年休」といいます。)は事前に申請することが求められているので、原則的には事後的に年休を認める必要はありません。
ただし、就業規則に年休の事後申請を認める規定があるなどの事情があれば、年休の事後的な取得を認める必要がある場合もあります。

1.年休について
 年休については、労働基準法(以下、「労基法」といいます。)39条に定めがあり、その取得には事前の申請が必要と解釈されています。
 そのため、事前に申請がなかった場合には、労基法上は、事後的に年休とすることを権利として請求することはできません。
 ただし、労基法は、労働者により有利な内容を就業規則あるいは個別契約等で定めることを許容していますので、事後申請を認める規定あるいは個別契約等があれば、事後的な年休申請が認められる場合もあります。
2.裁判例
 裁判例においては、
「病気、災害その他やむを得ない事由によってあらかじめ休暇を請求することが困難であったことを所属長が認めたときは、職員は、その勤務しなかった日から、週休日及び祝日を除き、遅くとも三日以内に、その事由を付して請求書を提出することができる。」
との規定があった事案において、
「いわゆる事後請求の申し出に対応した処理をするかどうかは、使用者の裁量に委ねられているものというべき」と判示しています(東京高裁平成6年3月24日労判626号56頁)。
 同裁判例においては、上記規定の解釈として、事後申請を認めるか否かについて、使用者に裁量が認められたことになります。
 上記規定では、あくまでも所属長が認めた場合には事後申請ができるという内容であったため、事後申請が否定されましたが、規定次第では事後申請が認められる場合もありますので、当該企業における規定の内容を検討する必要があります。
 また、上記裁判例においては、次のような判示もあります。
「当該申し出の事情を勘案すれば年次有給休暇として処理することが当然に妥当であると認められるのに、使用者がもっぱら他の事情に基づいてその処理を拒否するなど裁量権を濫用したと認められる特段の事情が認められる場合に限り違法となる」
 この判示に表れているように、会社の裁量にも限界はありますので、この点にはご留意いただく必要があります。

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