法律Q&A

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社外取締役の要件の厳格化

弁護士 難波 知子 2019年12月:掲載

社外取締役として認められる要件とはどのようなものですか?

A社は、株主から、コンプライアンスの観点を踏まえて社外取締役を導入すべきだという意見を受け、社外取締役を迎え入れることを検討しています。A社の甲取締役の兄である乙が他社での経営経験もありふさわしいのではないかと考えていますが、何か問題がありますか。

平成26年の会社法改正により、社外取締役の要件が厳格化され、親会社や取締役、子会社や兄弟会社の一定の取締役、取締役の配偶者または二親等以内の親族等は社外取締役とは認められません。
なお、遅くとも令和3年6月までには、会社法の改正により、金融商品取引法の適用会社である監査役設置会社(公開会社かつ大会社)には、社外取締役の選任が義務付けられる予定ですので、その点に留意する必要があります。

1.社外取締役とは
 社外取締役の要件は会社法2条15号に定められており、まとめると以下のものは社外取締役にはなることはできません。
①当該会社の代表取締役、業務執行取締役、執行役及び支配人その他使用人(以下合わせて「業務執行者等」といいます。)
②過去10年間において当該会社の業務執行者等であったことがある者
③過去10年間において当該会社の取締役・会計参与・監査役であったことがある者の場合は、その取締役・会計参与・監査役への就任の前10年間において業務執行者等であった者
④子会社の業務執行者等
⑤過去10年間において子会社の業務執行者等であった者
⑥過去10年間において子会社の取締役・会計参与・監査役であったことがある者の場合は、その取締役・会計参与・監査役への就任の前10年間において業務執行者等であった者
⑦親会社の取締役、執行役及び支配人その他使用人
⑧兄弟会社の業務執行者等
⑨当該会社の取締役、執行役、支配人その他使用人の配偶者及びその二親等以内の親族
 平成26年の会社法改正前までは、①~⑥のみが社外取締役になれませんでしたが、改正により⑦~⑨が加わり、要件が厳格になりました。
2.社外取締役の設置は必須か
 会社法上、社外取締役の設置が必須とされているのは、監査等委員会設置会社(会社法2条11号の2、331条6項)及び指名委員会等設置会社(会社法2条12号、400条3項)、並びに、取締役会設置会社において、取締役会で決議すべき事項を特別取締役の決議に委ねる場合(会社法373条)のみで、通常の取締役会設置会社の場合、社外取締役の設置は必須ではありません。
 しかし、金融商品取引法の適用会社である監査役設置会社(公開会社かつ大会社)において社外取締役を設置しない場合には、当該会社の取締役は、定時株主総会において、社外取締役を設置することが相当でない理由を説明しなければなりません(会社法327条の2)。
 ここでいう「社外取締役を設置することが相当でない理由」とは、単に設置しない理由ではなく、社外取締役が有用であることを前提として、設置することが相当でないことの積極的理由であると解されています(江頭憲治郎「会社法(第7版)」弘文堂2017年・389頁)。
 この点に関し、令和元年(2019年)10月18日に、会社法の一部を改正する法律案が国会に提出され(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00252.html)、同年12月4日に参議院本会議にて賛成多数で可決、成立しました。施行日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、遅くとも令和3年6月までの施行が目指されています。
 改正会社法では、金融商品取引法の適用会社である監査役設置会社(公開会社かつ大会社)には、社外取締役の選任が義務付けられています(改正会社法327条の2)。そして、この規定に違反して社外取締役を選任しなかったときは、取締役等は、過料に処されることになります(改正会社法976条19の2号)。
 また、改正会社法では、株式会社が社外取締役を置いている場合において、当該株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、取締役会の決議により、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができることになっています(改正会社法348条の2)。現行の会社法では、上記1のとおり、取締役が、業務執行をすると社外取締役の要件を満たさないことになりますが(会社法2条15号)、上記のような会社と取締役の利益が相反するような場合には、社外取締役に業務を執行しても、社外取締役の要件を満たさない場合とはならないことが明確化されることになります。これにより、社外取締役がより積極的に活用されることが期待されています。
3.企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)と独立社外取締役
 このように、公開会社かつ大会社でない限り、会社法上は原則として社外取締役の設置は義務ではありません。しかし、上場会社の場合、東京証券取引所が定めた企業行動規範において、遵守すべき事項として独立役員を1人以上定めなければならないほか、1名以上の独立社外取締役を確保することを努力義務としています。ここにいう「独立社外取締役」とは、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役(会社法2条15号の社外取締役であって、かつ会社法施行規則2条3項5号に規定する社外役員に該当する者を指します。)のことであり、「独立役員」とは、独立社外取締役及び独立監査役(会社法2条16号の社外監査役であって、かつ、社法施行規則2条3項5号に規定する社外役員に該当する者。)を指します。
 さらに、平成27年に東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を公表しました。ここでは、上場会社は、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきであるとし、選任しない場合には、その理由の説明が求められるとしています。
 同コードは、法的拘束力はないものの東京証券取引所の上場規程の一部として適用されたため、令和元年年の時点では、東京証券取引所の全上場企業のうち、2名以上の独立社外取締役を選任する上場会社の比率は、99.0%となっています(「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び 指名委員会・報酬委員会の設置状況 2019年8月1日」https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu0000045rlr-att/nlsgeu0000045rou.pdf)。
 このように、上場企業においては、既に社外取締役を設置している会社がほとんどであると思われますが、今後は、社外取締役の設置が、法的義務として規定されることになりますので、更にこの点が明確になっていきます。

対応策

 設問の場合、乙は、社外取締役の要件を満たしません。A社が公開会社かつ大会社の場合、社外取締役を置かない場合には、定時株主総会において設置しないことの相当な理由を説明しなければなりません。また、A社が上場会社の場合には、会社法だけでなく東京証券取引所が定める企業行動規範やコーポレートガバナンス・コードにも留意する必要があります。そして、A社が公開会社かつ大会社である場合、令和3年6月までの近い将来には、会社法の改正により、社外取締役の選任が義務付けられることになります。現時点では、これらの観点から、社外取締役の選任の要否を積極的に検討する必要があります。

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