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みなし時間外手当設計時の注意点

弁護士 石居 茜 2017年12月掲載

みなし時間外手当設計時の注意点は?

 当社では、一定の役職についた者には役職手当を支給し、一定の職位にある者には職務手当てを支給していますが、これらの手当には、給与規程により、みなし時間外手当としての支給分が含まれる旨規定しております。
 このようにしていれば、支給している役職手当、職務手当は、あらかじめ割増賃金を支給しているとみなされるという理解で宜しいでしょうか。

役職手当、職務手当など、一定の役職や職位に対する手当として支給している手当を、みなし時間外手当として支給しても、時間外手当の支払があったとはいえないとされる場合がありますので、注意が必要です。

 みなし時間外手当とは、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ、毎月の固定給与において、一定時間分の時間外労働等に対する割増賃金を時間外手当として支払う給与の設計方法をいい、みなし時間外手当、固定残業手当等と呼ばれます。

 裁判例によれば、みなし時間外手当は、基本給のうちみなし時間外手当に当たる部分が明確に区分されており、実際の時間外労働等に対し、労基法によって計算した割増賃金額がみなし時間外手当の額を上回るときはその差額を支払うことが合意されていれば、みなし時間外手当の支払は、割増賃金の支払として認められるとされています(小里機材事件・最高裁一小昭和62年7月14日判決・労判523号6頁、高知県観光事件・最高裁二小平成6年6月13日判決・労判653号12頁等)。

 ここで、注意が必要なのは、「基本給には、月15時間分の時間外労働の割増賃金を含める。」等の記載では、基本給のうち、いくらが基本給で、いくらがみなし時間外手当か不明であるので、裁判では認められないことが多いということです。いくらをみなし時間外手当として支給するのか明確にすることが必要となってきます。

 また、給与規程で、役職手当、職務手当など、一定の役職や職位に対する手当として支給している手当に、みなし時間外手当としての支給を含めている例が見られますが、これについても、割増賃金部分とそれ以外の部分が明確に区分されていないことから、みなし時間外手当として認められないとする裁判例が見られます(ボス事件・東京地裁平成21年10月21日判決・労判1000号65頁、神代学園ミューズ音楽院事件・東京高裁平成17年3月30日判決・労判905号72頁等)。

 よって、みなし時間外手当は、給与規程等により、明確に割増賃金の支払のみの性格を有する手当として設計することが必要です。

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