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能力・成果主義人事制度下での人事考課や能力不足のスカウト人材の処遇はどのようになるか - 1

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
平成12年2月7日

最近、能力・成果主義的人事制度などの導入が流行のようだが、どんなものか?

「能力・成果主義」とは、通常、いわゆる年功的人事制度への対抗概念として用いられる概念である。従前の保有能力・潜在的能力重視から能力顕在化による成果重視への急激な動きを示し、これが、「能力・成果主義」と呼ばれることが多くなった。但し、実際の制度・運用には多用な現れがあり、現下の主流は、年功的要素と併存する場合が多い。


解説:第1 個別的人事管理における能力・成果主義
I 伝統的人事制度-日本型雇用制度・年功型賃金制度の動揺
 従前のいわゆる日本的経営の三本柱とされて来た、終身雇用制は、中高年ホワイトカラーへの雇用調整・リストラにより、年功賃金制も年俸制等を典型例とする能力・成果主義賃金制度の拡大により、又、企業内労働組合に至っては毎年組合組織率の最低記録を更新し、いずれも崩壊の危機に、少なくとも大きく揺らいでいる状況だ(以下は、拙著「社内トラブル『もしものとき』の救急事典」(明日香出版)、「労働事件実務マニュアル」(ぎょうせい)の他、主に、菅野和夫「労働法」第5版405頁以下、土田道夫「能力主義と労働契約」季労185-6以下、野田進「能力・成果主義賃金と労働者の救済」季労185-65以下等による)。
II 能力・成果主義
 いわゆる能力・成果主義とは、通常、上記の年功的人事制度への対抗概念として用いられる概念だ。もっとも、従前の「職能資格制度」も能力主義賃金制度として提唱されていたのであるが、多くの場合、相対的に「保有能力の重視」に傾き、制度・運用両面で、実際上、「資格在籍年数の進級要件化」や「年齢給との併用」により、年功的賃金制度と評されるものになっていた。これに対して、多くの企業が、平成複合不況下での国際競争力の維持、グローバルスタンダード(米国基準)への対応を迫られる中で、従前の保有能力・潜在的能力重視から能力顕在化による成果重視への急激な動きを示し、これが、「能力・成果主義」と呼ばれることが多くなった。但し、同じ能力・成果主義賃金体系といいながら、実際の制度・運用には多用な現れがあり、現下の主流は、過渡期の現象としてか、あるいは従前の年功制度の捨て難い長所(ロイヤリティーの維持)への執着からか、「年齢給との併用」による、年功的要素と併存する場合が多いようだ。しかし、新聞紙上に散見されるように、完全な「成果主義」を標榜する企業も増加しており、成果主義に基づく賃金割合を拡大する制度改正を含めると、能力・成果主義人事体系・運用への雪崩現象ともいい得る人事制度上の大変革が起こっていることは否めない。

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